投稿日:2025年7月8日

バイオPA10.10耐塩水グレードと海水淡水化プラント配管実績

バイオPA10.10耐塩水グレードとは

バイオPA10.10耐塩水グレードは、近年、製造業界やエンジニアリング業界で注目を集めている高機能樹脂のひとつです。
特に塩水や海水といった過酷環境下での耐性が求められるシーンで、その実力が高く評価されています。
従来のナイロン樹脂(ポリアミド)は吸水性による寸法変化や劣化を課題として抱えていましたが、バイオベースのPA10.10は分子構造の工夫により、吸水率を大きく低減しています。
また、石油由来原料を減らすことで環境負荷の低減にも寄与する点が特長です。

構造と性能の特徴

PA10.10は、セバシン酸(C10:バイオ原料由来)とデカメチレンジアミン(C10:主にバイオ原料由来)を重合したポリアミドです。
バイオPA10.10耐塩水グレードではさらに、配管やタンクなど水と長期的に接触する環境において、塩化物イオンへの耐性や、水透過・吸水の抑制に特化した調整がされています。
このグレードは、塩水・海水中でも機械的特性(引張強度、曲げ強度、衝撃強度)や寸法安定性を長期的に維持する点が従来材料との大きな差異です。

環境対応とコストパフォーマンス

SDGsや脱炭素社会の潮流の中、工場設備資材においてもバイオマス原料の比率が年々求められるようになっています。
バイオPA10.10は、原料の6~8割を非化石・非食用植物由来成分で賄えるため、工場プラントの認証(ISO14001等)取得やESG投資を見据えたサプライヤーでも高評価を獲得しやすくなります。
一方、100%石油由来のナイロンに比べて材料コストはやや高めですが、中長期視点でのメンテナンスコスト低減や、SDGs対応によるB to Bマーケットでの差別化効果が期待できます。

海水淡水化プラントにおける配管材料の選定

海水淡水化プラントは、極めて腐食性の高い環境に曝されるため、配管材料には鉄や鋼系材料のみならず、耐塩水・耐腐食性の樹脂材料が強く求められます。
従来、塩ビ(PVC)やステンレス(SUS316L)、FRP樹脂等も多用されてきましたが、近年では材料の多様化が加速しています。

従来材料の限界

鉄や炭素鋼は短期間で塩害腐食が起きやすく、定期的な塗装・交換が必須です。
ステンレスはより長持ちしますが、海水中のクロライドイオンには意外と脆く、孔食や応力腐食割れのリスクを孕んでいます。
塩ビ(PVC)はコストが安く加工性も高いですが、使用温度や圧力、機械的強度の関係で大型プラントでは適用範囲が限定的です。

なぜPA10.10なのか?

バイオPA10.10耐塩水グレードは、塩水下でも寸法安定性と耐薬品性・機械的強度のバランスが非常に高く、寿命・性能安定性の両面で優れています。
工場プラント全体を支える「長寿命インフラパーツ」として、ライフサイクルコスト低減や環境対応も同時に実現できるため、グローバル大手企業を中心に導入が進んでいます。
また、射出成形や押出成形による異形断面パイプなどの成形自由度も高いことから、配管設計のカスタマイズ性も向上します。

配管設計・実装でのポイント

PA10.10グレードの配管を設計する際は、配管口径ごとに圧力損失や応力評価を慎重に行いましょう。
樹脂配管特有の「徐々にたわむ」性質は、鋼管設計とは異なる点です。
また、耐熱温度もグレードによって異なるため、温水回路や洗浄プロセスを併設したラインでは事前評価が必須となります。
その他、パイプの継手部(フランジ、ユニオン)の樹脂/金属バイメタル設計も、耐腐食・電蝕リスクの観点から各現場のノウハウが蓄積されてきています。

バイオPA10.10配管の海水淡水化プラント実績と事例

国内・海外の採用事例

日本国内では大手プラントエンジニアリング会社や海水淡水化事業者、セメント工場排水系統、電力会社の冷却水管などで採用事例があります。
海外では中国・中東諸国の大型淡水化プラント、欧州の沿岸型リゾート開発などで実装が進み、数千メートル単位の長大配管でも問題なく稼働しています。
これらの現場では、従来材料からのリプレース(寿命更新・IoT化応用)も進行しており、プラントのダウンタイム削減や、塩害由来のメンテナンス工数削減に大きく貢献しています。

導入時の生産管理・調達現場でのトラブルシューティング

昭和時代から続く「鉄管マインド」や、「何でもステンレスでOK」という固定観念が根強い現場では、PA10.10のような新素材の導入に抵抗を感じる方も多いです。
しかし、製品選定プロセスで、材料メーカーや成形パートナーの技術者による現地開催の説明会や、実機テスト(試験片による塩水浸漬2,000時間など)の結果を“見える化”することが現場説得の決め手となります。
また、配管施工時は、溶着・接着や金属継手とのマッチング調整など、樹脂特有の技能伝承にも留意が必要です。

品質管理のポイント

バイオPA10.10配管の品質管理では、下記の点が重要です。

・吸水率、機械的強度のロットごとの測定を工場出荷前に徹底
・納入後、初期稼働60日以内の現場モニタリング(寸法安定性、漏えいチェック)
・大口径パイプの連結部は、応力集中部のクラックや樹脂流動痕の有無を重点確認
・現場独自の塩害リスク(付着生物、流速変動)も織り込んだ運用ルール

これらの管理手法は、デジタルツールやIoT化が進む現場ほどマニュアル化・自動化されやすくなっていますが、中小企業や昭和スタイルが色濃い現場ではアナログな「パトロール」や人海戦術も根強く残っています。
新旧の文化を“つなぐ”ためにも、現場の声を吸い上げてカスタマイズ化した運用ルール作りが成功のカギです。

バイヤー・サプライヤー視点での調達戦略

バイヤーが求めていること

バイヤー(購買担当者)は配管材料選定で以下の点に注目します。

・LCC(ライフサイクルコスト)の最小化
・供給安定性/調達リードタイムの見通し
・グリーン調達(環境配慮型原材料)の証明
・緊急時の修理・交換に必要な部品の標準化
・サプライヤーからの最新技術情報や現場実践ノウハウの入手

バイオPA10.10グレードは、「脱炭素社会への対応」「SDGsレベルでのレピュテーション向上」「石油依存からの段階的脱却」など、今後問われる項目へ幅広くアピールできます。
と同時に、材料特性・現場課題・相見積もり(同種他社品や従来材料との比較)によるベンチマーク採用の説得材料をしっかり準備しておくことが肝要です。

サプライヤーが意識すべきこと

サプライヤーはバイヤーの視点に立ち、「なぜこの材料なのか?」「従来品で対応できない理由は何か?」「パーツ互換性や施工性向上策は?」といった現場発の課題解決ストーリーを伝えることが差別化要因になります。
特に日本の製造現場ではトップダウン型の意思決定だけでなく、作業者やメンテ保全担当の「使いやすい」「不安が少ない」「施工ミスの再発がない」といった現場定着が極めて重要です。
サプライヤー主導でトレーニング・OJTプログラムを組むことや、「安心して使える標準マニュアル」を刷新することも、商談獲得の強力な方法となります。

アナログ文化からデジタルシフトへの立ち位置

現在も根強く残るアナログ文化では、新素材だからこそ躓きやすい落とし穴や、現場の暗黙知(ケレンや手締めのコツ、組立・点検時の伝統作法)があります。
しかし、IoT化やプラントの遠隔監視、自動診断の浸透により、PA10.10のような高性能樹脂の柔軟な管理がより一層求められてきています。
「アナログなままの現場」でも、「デジタルシフト先進現場」でも通用する“二刀流”の現場設計や運用ルールをサプライヤー側も提案できると、長期的なパートナーシップにつながります。

まとめ:現場目線での新素材導入が未来を拓く

バイオPA10.10耐塩水グレードは、単なる材料選びの最新トレンドにとどまらず、工場インフラのSDGs対応やメンテナンスDX、現場志向の課題解決―さまざまな視点でその価値を発揮します。

特に、海水淡水化プラントのような“過酷な現場”でこそ、その耐久性・環境適応性が本領を発揮し、従来材料では到底解決できなかった課題を一気に解消できるチャンスなのです。

バイヤー、サプライヤー、そしてモノづくりに携わる現場の皆さまには、これを機に「本当に必要とされる新素材導入」「現場定着のスキーム化」を再考していただきたいと考えています。

昭和から抜け出せないアナログ現場にも、最先端のバイオ素材が自然と根付く未来は、確実に近づいています。

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