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キャビテーションの発生原因気泡の発生及び崩壊メカニズキャビテーション壊食発生損傷各種工業材料損傷破壊実機対策例ポイント

目次
キャビテーションとは何か?現場目線から実務的に理解する
キャビテーションとは、液体の中で気泡が発生し、その気泡が崩壊する際に周囲の材料や装置に損傷を与える現象です。
多くの製造現場、とくにポンプやバルブ、配管系統、タービン、熱交換器などで発生しやすく、現場の設備保全や生産効率に大きく影響を及ぼします。
このキャビテーション現象を正しく理解し、そのメカニズムと対策を現場目線で知ることは、調達購買担当者やバイヤーのみならず、サプライヤーにとっても不可欠です。
本記事では、キャビテーション発生の物理的メカニズムから材料損傷、各種工業材料の壊食特性、そして現場から学びうる具体的な対策例までを、幅広く、実践的に解説していきます。
キャビテーション発生のメカニズム:気泡形成から崩壊まで
気泡ができる原理とは
液体中でキャビテーションが発生する最も基本的な仕組みは、「圧力の急激な低下」と「復圧による気泡の崩壊」です。
ポンプやタービンの羽根車まわりなどで局所的に圧力が大気圧以下、液体の蒸気圧近くもしくはそれ未満になると、水の場合はその場で沸騰状態となり微細な気泡が発生します。
この気泡自体は非常に不安定なため、液体の流れに伴い周囲の圧力が元に戻ると、気泡は一気に潰れます。
その際、ごく小さな領域で極めて高い衝撃圧が発生し、これが繰り返されることで設備や部材に損傷をもたらしていきます。
どんな状況でキャビテーションは発生しやすいか
現場でよくあるキャビテーション発生要因を具体的に挙げます。
- ポンプの吸込み側圧力が大きく下がりすぎる場合(NPSH不足)
- バルブの極端な流量調整や急な開閉
- タービンブレード付近の高速回転・急激な断面変化部
- 液体内に微細な固形異物が存在する場合
- 配管長や径、経年劣化による局所圧力の変動
特に現場の多くの事例(昭和から変わらぬ工場の老朽化設備や、日本独自の仕様継承現場)では、このような短絡的な設置や配管設計の見直し不足で思わぬ場所にキャビテーションが発生しがちです。
キャビテーション壊食の発生と材料損傷メカニズム
気泡崩壊時に何が起きているか
崩壊する際、気泡内部で相当な速度をもつ液体の微小ジェット(マイクロジェット)が発生し、これが数百度、数百気圧相当になると試算されています。
そのため、金属や樹脂などの表面を微細にたたき続けることで、表層が塑性変形し、ピッティング(微小クレータ)が生じます。
現場ではこれが進行すると、表面がザラ付き、面粗度が上がり配管やポンプ効率が落ちはじめ、やがて穴あき・漏洩・破断まで発展します。
影響を受けやすい工業材料の違い
キャビテーション壊食に対する耐性は、材料ごとに異なります。
- 炭素鋼・普通鋼: 比較的安価で広範囲に使われるが、キャビテーション弱くピッティングや面粗度増加が早期に発生
- ステンレス鋼: クロム含有量が多い高級材なら比較的耐性高い。ただし、砂・異物混入が多い流路では局所腐食に要注意
- 銅合金・青銅系: 軟らかいが表面に酸化皮膜形成しやすいため局所的には健闘。だが、長期連続運転環境では皮膜崩壊後に一気に損傷進行
- 樹脂系材料: ポンプのケーシングやインペラ部などで使われることもあるが、耐薬品性の一方で、微小ジェットにはほぼ無抵抗。深刻な穴あきにつながる
- セラミックコーティング: 摩耗や壊食対策で用いるが、割れ・欠けが発生すると一気にガリ傷やさらなる浸食につながる
キャビテーションによる設備損傷・破壊の典型事例
現場で起こった「壊食」のリアル
製造工場やプラントの設備点検で多発するのは、次のような損傷です。
- ポンプ羽根車(インペラ)がザラザラ、穴あき、時に羽根そのものが折損
- サクション側配管や出口ノズル内壁の全面的摩耗・ピッティング斑点
- バルブ弁体(グローブ・ゲート)やシート面の摩耗・溝堀れ
- 熱交換器の伝熱管(特に入口部)の穴あき・伝熱効率低下
こうしたキャビテーション損傷は、気泡の発生⇒崩壊から数日~数カ月の短期間で急激に進行するため、定期点検や予兆管理が甘いと“気付いたときにはもう遅い”ケースが多発します。
現場目線で気を付けたい損傷兆候
現場作業者・設備管理者の立場から、早期発見のポイントを挙げます。
- 運転時に「サーッ」「カタカタ」「ガリガリ」など異音が生じる(特に運転初期・流量や圧力変動時)
- 設置初期よりも流量や吐出圧力が目立って低下
- ポンプやバルブの振動が増大
- 点検開放時のザラつきやピッティング痕、局所腐食の急激な進行
机上設計やカタログ値優先の設備選定だけでなく、現場ならではの五感でキャビテーションの予兆を感じ取る姿勢が極めて大切です。
キャビテーション対策の現場実践例とバイヤーのためのポイント
現場で“今すぐ”できるキャビテーション対策例
1. ポンプ・配管設計の見直し
吸込み配管径・長さ・曲がり数を極力減らし、NPSH(有効吸上げ高さ)余裕を確保することが重要です。
新設だけでなく、既存の設備レイアウトでも吸込み側に空気溜まりやサイフォン状の落とし穴がないか確認しましょう。
2. インペラ・羽根材料の変更・コーティング
キャビテーションの被害が多い部位には、ステンレスやハードフェーシング合金、セラミックコーティング等の採用を検討します。
3. バルブ操作・開度制御の徹底
急な開閉や過剰な流量制限は、内部圧力降下を招きやすいので、オペレータ教育やインターロック制御を強化します。
4. 定期点検・予兆管理の深化
特にポンプ・バルブなどの損傷しやすい部位は、定期的な音響検査やサーモグラフィー観測、面粗度計測などを導入すると予兆管理の精度が上がります。
バイヤー・サプライヤーの立場で心得ておくべきこと
バイヤーは、設備や部品を選ぶ際、設計仕様や材質記載に加え、現場ヒアリングや現場対応履歴を蓄積しておきましょう。
“なぜ今この材質・仕様なのか”“過去にどんな損傷・対策トラブルを経験したか”など、客観的なエビデンスと属人的なノウハウを組み合わせることが、真に信頼される調達スキルへと昇華します。
サプライヤーも、単なるカタログ提案だけでなく、現場の使われ方・洗浄頻度・運転負荷のバラつきなどをコンサルティングできると、ひとつ先のパートナー関係が築けます。
左から右へモノを流すだけでは、デジタル化やグローバル競争の波に淘汰されるのは製造現場も同様です。
まとめ:キャビテーションに強い現場づくりのために
本記事では、キャビテーションの発生メカニズムから材料損傷、現場目線での損傷事例、各種対策例、バイヤー及びサプライヤーの心得まで幅広く解説しました。
製造業の現場はデジタル化・自動化が進む一方で、昭和から続くアナログ的な慣習や、人間の「気付き」「判断」が命運を分ける局面がいまだに多く残っています。
キャビテーション対策は、単なる設備保全の枠を超えて、生産性維持、材料コスト最適化、そしてトラブル未然防止という本質的な価値につながります。
現場の知恵とサプライチェーン上の知見を融合し、“一歩先を読む”調達・設計・現場づくりを進めていきましょう。
日本の製造業を、より強く、より賢く——
そのための現場目線の知識・経験を、これからもシェアしていきます。
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