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*2025年6月30日現在のGoogle Analyticsのデータより

化学リサイクルPETグリコール解重合フレークと食品ボトルループ成形

目次
化学リサイクルPETグリコール解重合フレークと食品ボトルループ成形の最新動向
製造業の現場から見ると、リサイクル技術にはさまざまな課題と、巨大なビジネスチャンスが同時に存在しています。
特にPET(ポリエチレンテレフタレート)のリサイクルは、環境問題・原材料高騰・消費者意識といった複数の要素が複雑に絡み合う現代において、きわめて重要なテーマとなっています。
そこで今回は、「化学リサイクルPETのグリコール解重合フレーク」と「食品ボトルへのループ成形」について、現場目線で深く掘り下げていきます。
バイヤー、サプライヤー、さらに現場担当者に有用な実践的な観点も交えつつ、アナログな課題が残るなかでどのような新しい動きや生産現場の変化が起きているかを解説します。
PETリサイクルの基礎知識と日本の現実
PETリサイクルの2大潮流:マテリアルリサイクルとケミカルリサイクル
製造現場でペットボトルリサイクルと聞くと、まず思い浮かぶのは「マテリアルリサイクル」でしょう。
これは回収された使用済みボトルを洗浄・粉砕し、加熱溶融によってフレークやペレットを再成形する手法です。
現場の工程としては手軽でライン適合性も高いですが、物性の劣化や異物混入、着色が課題となってきました。
一方、「ケミカルリサイクル」は科学的な分解(解重合)によって、PETの原材料(モノマーもしくはオリゴマー)にまで戻し再重合します。
ここでは、原料特性をほぼ新品同様に維持できることが最大の強みです。
その中でも近年注目されているのが「グリコール解重合法」です。
グリコール解重合フレークとは?
PETを構成するエステル結合をグリコールと反応させて切断することで、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)などに分解します。
この工程を経て生成される「グリコール解重合フレーク」は、不純物を取り除いた高純度の中間体として再利用が可能です。
従来の物理的粉砕再生品よりも、透明度・耐久性・食品接触性といった性能で大きく優れています。
なぜ食品ボトル用途が難しかったのか
日本では「ボトル to ボトル」リサイクルの目標が掲げられています。
しかし、マテリアルリサイクル由来の再生PETでは、食品容器用途への展開が壁となっていました。
なぜなら、わずかな異物や着色、あるいは微量の不純物残留が安全基準をクリアできなかったからです。
その意味で、ケミカルリサイクル品に注目が集まっているのは現場から見ても非常に納得のいく現象です。
アナログな壁を超える:現場改革のリアル
昭和からの「現場主義」とリサイクル現場の課題
製造業の現場では、「手作業確認」や「長年の勘」など、属人的判断に大きく依存する昭和的体質が根強く残っています。
リサイクル原料についても、多くの現場で「ミスやトラブルは絶対避けたい」「原料不良でライン停止は避けたい」という心理が強く働き、「絶対に新品しか使わない」という姿勢が続いたところも少なくありません。
しかし、ここ数年で下記のような現場改革が進んでいます。
– 安全性や物性のデータによるエビデンス重視
– 品質管理のDX化:AI画像解析・IoTライン監視の導入
– 原材料サプライヤーと最初から共同でプロジェクト型設計
この流れは、リサイクル原料の導入競争に大きなインパクトを与えています。
サプライヤーが知るべき現場の「不安」と「本音」
リサイクルPETのバイヤーは、サプライヤーに何を求めているのでしょうか。
筆者が経験した現場の生の声を以下にあげます。
– 安定供給:ロット毎に物性がぶれないこと
– 問題発生時の初動対応の速さ
– 異物混入リスクの低減
– コストだけでなくトータルでのプロセス安定性
特に大手食品メーカーでは、クリーンルームや無菌充填ラインに直接再生原料を流すことへの抵抗感が根強いですが、ケミカルリサイクル品で「新品同等」という客観データとトラブルフリーな実績が続けば、現場も一気に姿勢を変えるようになりました。
グリコール解重合PETフレークで実現するボトルループ成形
国内大手メーカーでの実装事例
現在、大手飲料・食品メーカーでは、サプライチェーン全体で「ボトルtoボトル成形」の実装プロジェクトが急ピッチで進んでいます。
現場では以下のようなプロセスが組み込まれています。
– 回収済みPETボトルを一括で洗浄・粉砕
– グリコールを用いてケミカル解重合、フレーク化
– 不純物除去とグレード判定(AIカメラ等による選別含む)
– 新品と化学リサイクルPETを混合して射出成形・ブロー成形
– サンプリングした試作品の耐久試験・安全性検査
– 製品化・マーケティングにもリサイクル素材の比率を明記
このフローの本質は、「仕組みそのものが食品用途のリサイクルを前提として安心安全を担保できている」という点にあります。
現場負担を減らすDX化とIoTの活用
伝統的な製造現場では、新素材導入イコール「追加検査・人手増加・現場負担増」となり、生産性ダウンや管理コスト増が危惧されがちでした。
しかし、現在ではIoTセンサーやAI画像解析を駆使したライン監視によって、リサイクル原料由来の異変をリアルタイムで検知し、現場担当者も「標準作業の一環」として取り組める環境が整いつつあります。
この仕組みづくりそのものが、食品ボトルループを根付かせるベースとなっているのです。
ビジネスとしての魅力と今後のチャレンジ
グローバル基準での優位性
欧州ではすでに「リサイクル原料混率義務化」が進み、中国・北米でもリサイクルPET需要は急伸しています。
日本市場もこのトレンドから後れを取るわけにはいきません。
特に、国際的なサプライチェーンに参画する際、「サステナブル認証」や「フルリサイクル証明」が取れているか否かは巨大な商機の分かれ目です。
ケミカルリサイクル品は新規事業・海外展開でも大きなアドバンテージとなるのです。
マスバランスアプローチと実際の価値
ひとつ課題となるのは「マスバランス方式」です。
これは、リサイクルPETとバージンPETを混合して使った場合でも、投入量と出荷量で帳尻を合わせて「リサイクル材使用量◯%」とする仕組みです。
現場担当者から見ると、どこまでが現実のサーキュラーエコノミーに直結するのか一歩引いて考える必要があります。
バイヤー・サプライヤー双方が「ラベル表示の信頼性」「エンドユーザーへの説明責任」について共に議論していく局面に今まさに直面しています。
今後の課題と打開策
技術的にはさらなるコストダウン、高純度化、高速成形適正の向上などが今後のポイントとなります。
また、「回収工程の効率化」や「解重合・再重合反応の環境負荷低減」、「着色材・添加剤の適正管理」など、既存製造ラインとは違ったノウハウが必須となるでしょう。
現場としては、新人や技能継承が難しいアナログ現場であっても、DX化やサプライヤーとの密な情報共有を通じて、この化学リサイクルPETの食品ボトルループを確実に定着させたいところです。
まとめ:現場が実現するサーキュラーエコノミーの未来
化学リサイクルPETグリコール解重合フレークと食品ボトルループ成形は、製造業現場にとって難易度が高く、新たな挑戦の連続です。
ですが、その一歩一歩が“昭和的アナログ思考”から抜け出し、世界中の消費者・社会と繋がるサーキュラーエコノミー実現の近道であることは間違いありません。
バイヤーは新たなビジネス基準を、サプライヤーは現場の不安や課題を汲み取り、共創の精神で歩み寄ること。
そして、現場技術者は最新の知識をアップデートし、「変化を恐れず、新しい価値をつくる」ことが、激動する製造業において圧倒的な競争力を持つことにつながります。
今後もこの分野の進展から目が離せません。
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