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投稿日:2026年2月5日

CMS刷新が社内承認フローを複雑化させる

はじめに:CMS刷新が引き起こす“想定外”の社内承認フローの複雑化

現代の製造業を取り巻く環境は驚くほどの速度で変化しています。

DX(デジタルトランスフォーメーション)や業務効率化が叫ばれる一方で、現場ではいまだに紙ベースの書類や手書きの記録が根強く残っていることが珍しくありません。

そんな中、「CMS(コンテンツマネジメントシステム)」の刷新は、一見すると業務を効率化し、新たな成長に繋がる施策のように受け止められがちです。

しかし、実際には多くの製造業現場で「承認フローの複雑化」という見過ごせない副作用が生まれています。

本記事では、20年以上製造業の現場に携わった筆者のリアルな経験と、バイヤー・サプライヤーなど様々な立場から見た生々しい視点を交え、CMS刷新による社内承認フローの複雑化と、その“根深い原因”、そして“打ち手”について掘り下げていきます。

CMS刷新とは何か?製造業現場ならではの意図と落とし穴

CMS刷新の背景と期待される効果

CMSとは、従来の“紙・エクセル文化”から脱却し、調達情報、購買依頼書、製品仕様、各種申請書などの「情報資産」を一元的にデジタル管理するシステムです。

業務効率化、トレーサビリティ強化、情報の即時共有化、不正防止、属人化リスクの軽減——こうしたメリットに期待して多くの企業がCMSの刷新(新規/再構築/クラウド移行)に乗り出しています。

“昭和のやり方”との摩擦

特に日本の製造業界では、「前例踏襲」「長年使い慣れた方式の継続」といった昭和的な業務文化が色濃く残っています。

CMS刷新の過程で、現場の声(例:「今使っている申請書のレイアウトを変えたくない」「旧システムの承認順序をそのまま残したい」)が強く反映され、結果として“従来の承認フロー”を温存したまま新しいCMSへ機能を積み増ししてしまうケースが非常に多いのです。

これが、CMS導入本来のシンプル化・省力化とは真逆の、「承認フローの複雑化」という現象につながります。

なぜCMS刷新で社内承認フローは複雑化するのか?

1. 各部門・各現場の“こだわり”の継ぎ接ぎ

製造業の組織は調達・購買、生産管理、品質保証、設計・開発、現場オペレーション、経営層など多岐にわたります。

CMS刷新時、各部門ごとに「絶対に譲れない承認パターン」や「独自書式」が存在しています。

これらをすべて“取りこぼさず”盛り込もうとした結果、
・「●●部承認→品質管理課(二次承認)→購買部(最終承認)」
・「特定仕入先の場合さらにリスク管理部チェック追加」
・「一定金額超過案件の場合は役員決裁」
など、モジュール的に“承認工程”が積み上げられ、フローが枝分かれしていきます。

部分最適の集合体が全体としては「真に使いにくいCMS」を生み出してしまうのです。

2. 属人化からの脱却が招く承認者の「過積載」

旧来のアナログ手順だと「Aさんが判子さえ押せば一気に進む」など、グレーな慣習もありました。

しかしCMS刷新で「全承認記録の電子化」となると、人材流動性や監査要件の高まりを受け、関係する複数の管理職・責任者が全員“ワークフロー上で”明示的に承認者に指定されます。

結果、1つの案件に対して5人も6人も「承認タスク」が発生し、ボトルネック発生や承認待ちの長期化を招きます。

この「デジタル化=承認負担の増大」が多くの現場でCMS刷新の反発要因となっています。

3. 法令・規格遵守と内部統制強化の要請

品質マネジメントシステム(ISO9001)、環境マネジメントISO14001、さらにコンプライアンス強化の流れを受けて、多段階の“内部統制”がCMS承認フローに組み込まれていきます。

「全部門・全案件で統一したルール」と「現場ごとの現実的な運用」の間でギャップが生まれ、そこを埋めるための“特例承認”や“イレギュラーフロー”がシステム上に追加され、複雑さに拍車をかけます。

筆者のリアルな体験:CMS刷新が現場に与えた混乱と気づき

筆者は現場責任者としてCMS刷新プロジェクトを4回以上経験しました。

いずれも、プロジェクト立案フェーズでは「現場のヒアリングを徹底」「現行運用の棚卸し」を実施しています。

当初は“単純な承認ルート”で設計しても、複数部門の合議を経ていくうち、徐々に下記のような現象が起こりました。

・現場担当「今の紙申請みたいに“横持ち”で回覧したい」
・品質保証「不良リスクが絡むときは必ずQA部門の承認を追加したい」
・経理部「金額別に承認ルートを自動で変えたい」

多様な意見を反映すればするほど、条件分岐が増え、最終成果物は前例よりも「条件判定式の塊」となり、承認ステップ数も2倍3倍に。

「ワンクリックで業務完了!」という理想からは遠くなります。

現場からは
「CMSで紙より遅くなった」
「誰が最後の承認者か分かりづらい」
「承認待ちで工程が止まっている」
といった、不満と“紙申請回帰”の動きすら出てくることも珍しくありません。

バイヤー・サプライヤー視点から見たCMS刷新の現実

バイヤーの本音:「いい加減にして…」承認遅延の苛立ち

調達・購買バイヤーとしてCMS刷新に携わると、多層化した承認フローのせいで“スピード感”が損なわれます。

特急の見積もり依頼や急な発注が、承認プロセスのどこかで“詰まってしまい”、サプライヤーへの回答が遅れます。

商談現場で「社内承認待ちのためもう少々お待ちください」としか言えず、機会損失になる恐れもあります。

サプライヤーのジレンマ:「また納期回答が遅れるの?」

サプライヤ側に立つと、バイヤーから「CMS化でフロー最適化します」と言われても、実際は以前よりも問合せや納期回答が遅くなるケースが散見されます。

担当者の「承認待ち」と「どこで止まっているか不透明」な状況が増えると、信頼関係にも影響します。

サプライヤーはバイヤー担当者の「社内フロー本当はぐちゃぐちゃなんだろうな」と“お見通し”です。

どうすればいいのか?CMS刷新で複雑化を防ぐための知恵

1. 「なるべく減らす」ではなく「思い切って捨てる」

「現状踏襲」を“美徳”とせず、承認フローそのものをゼロベースで再設計することが重要です。

半分以上のプロセスは「昭和時代の旧態依然」「トラブル未然防止のための念押し」であり、現在の実態に合わないものも多いです。

ときには「3承認→1承認」に大胆簡素化する覚悟が求められます。

2. “現場を知る人間”が意思決定に関わる

CMS設計会議にこそ、現場の「本当の痛み」を知る現場長・リーダー・熟練担当を巻き込むべきです。

「余計な承認は現場混乱を増やす」ことを率直に伝える役割が不可欠です。

3. アジャイル導入×現場テストで“使い勝手優先”

一度で完璧なシステムを目指すのではなく、現場テストでの改善サイクルを重ねましょう。

“誰がどこで止まっているか直感的に分かるUI”、“ワンクリック決裁”と“緊急時の例外化”を柔軟に組み合わせられるCMSが理想です。

まとめ:CMS刷新の成否は、社内承認フローの“再設計力”にかかっている

CMS刷新は新たな時代への大きな一歩です。

しかし、昭和型アナログ業務の影響が根強く残る製造業においては、「従来型の承認フロー」をそのまま持ち込むことが、“複雑化”と“現場混乱”を生み出しています。

今こそ、現場目線のラテラルシンキング(固定観念からの脱却)で“余分な承認・工程”を見直し、本当の意味での業務効率化・迅速化を実現するチャンスです。

CMS刷新を契機に、無駄な工程を「勇気を持って切り捨てる」ことこそが、製造業の未来を切り拓くための新たな地平線ではないでしょうか。

これからCMS刷新に取り組むあなたが、現場・バイヤー・サプライヤーそれぞれの“リアルな痛み”に寄り添い、最適な承認フロー再設計をリードすることを心から期待しています。

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