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基礎から学ぶ色彩工学と色の測定評価法

目次
はじめに:製造業における色彩工学の重要性
製造業において「色」は製品品質やブランドイメージを形作る大きなファクターです。
自動車・家電・化粧品・包装・食品等、どの業界でも色のばらつきはお客様の信頼や購買意欲に直結します。
そして、色彩工学は単なる感覚や主観の世界にはとどまりません。
厳密な科学的評価と管理が求められます。
一方、現場では長年の勘や職人技に頼りがちで、色の測定・管理について「アナログ的」な体質が根強く残っているのも事実です。
本記事では、現場目線に立ちつつ、基礎から学ぶ色彩工学のポイント、さらには実践現場で役立つ色の測定評価方法について、最新の業界動向も交え解説します。
色彩工学の基礎:知っておくべき基本用語と概念
そもそも「色」とは何か―光と目の仕組み
色は、物体に反射あるいは透過した光が私たちの目に入り、脳で知覚される現象です。
光源(太陽や照明)が発した電磁波のうち、人間の目に見える範囲(波長380~780nm)が「可視光」と呼ばれます。
物質は特定の波長を反射/吸収し、その結果、私たちの目に「赤」「緑」「青」といった色として映るのです。
三属性で理解する色の基本
色は、大きく「色相(Hue)」「明度(Value)」「彩度(Chroma)」の三要素で表現できます。
– 色相…赤、青、黄など、色みの違い
– 明度…色の明るさの度合い
– 彩度…色の鮮やかさや濃さ
特に工業製品では、これらの属性をどれだけ正確に、数値として管理するかが品質維持の鍵となります。
色の測定方法:アナログからデジタルへの進化
肉眼による目視検査の限界―昭和的アプローチの強みと課題
かつての現場では、熟練工による目視判定が主流でした。
確かに長年の経験は武器ですが、判断の個人差や体調・環境・照明の違いで結果が大きく変わります。
これが「勘と経験」のみでは乗り越えられない現代の課題です。
しかし一方で、例えば微妙な色感が求められる和菓子包装や伝統工芸品など、目視でのニュアンス評価が現役で重宝されている事例も存在します。
現場にはまだまだアナログのDNAが色濃く残っているのが実態です。
機器測定による客観的評価:分光測色計、色差計とは
現在ではデジタル化が進み、分光測色計や色差計を使った測定が主流になっています。
– 分光測色計…物体から反射(または透過)した光を波長ごとに分析し、スペクトルデータとして取得
– 色差計…あらかじめ設定した標準色との差を簡便に数値化
これらを利用することで「目で感じた色の違い」を「数値」という共通言語に変換し、客観的な評価・管理が可能になります。
例えば、色のばらつきを△E*(デルタE)の数値で「許容範囲2.0以内」などと規格化できるわけです。
現場で使える色差評価方法と管理ポイント
色差(ΔE*)の基礎と実務での活用のしかた
製造現場では標準色と測定対象の色との差を「色差(ΔE*:デルタE)」で評価するのが一般的です。
代表的な演算方式は以下の通りです。
– CIELAB(L*a*b*色空間)方式
– ΔE*ab(1976)、ΔE00(2000)などの判定公式
たとえば2.0未満なら「合格」、2.0以上は「要検討」といった具合に運用されます。
バイヤーとサプライヤーの間でも、こうした定量的な基準を共有しておくことでトラブルを未然に防げます。
測定の安定性を左右する“観察条件”の重要性
色は「光源」「観察角度」「周囲色」「試料表面」「視野サイズ」等の条件で見え方が大きく異なります。
例えば、昼白色照明下では合格なのに、家庭の電球色下では不合格になるケース(メタメリズムと言います)も珍しくありません。
JISやISO規格では、測定条件を厳密に指定しています。
実務では、測定器ごとの校正・管理やサンプル保存条件の決定、測色用照明ブースの設置が有効です。
現場から見た色彩管理の最新動向とDX化
「アナログ×デジタル」のハイブリッド管理
急速な自動化・DXの波のなか、完全デジタル評価だけが正解とは限りません。
現場ではまだ「熟練者の目」が最終検査やクレーム対応で必要な場合も多いです。
実際、多品種少量やカスタム対応品では、数値だけでは評価しきれない“ニュアンス”が重要なシーンもあります。
ですから、「測定&目視」の二段階チェックや、「色評価AI」+「職人最終承認」など、現場の実情にあった管理スタイルが増えています。
色彩情報はどうサプライチェーンで共有されるのか
グローバルサプライチェーンが進展する中、バイヤーもサプライヤーも「色品質」共有の重要性が高まっています。
標準板(色見本)を共有し、測定条件を統一したうえでデータをクラウド管理するなど、デジタル活用が広がっています。
また、「この色差(ΔE)がなぜ起きたか?」のトレーサビリティ確保や、工程間でのカラー管理PDCAも進化しています。
サプライヤー側としては、データに裏付けされた信頼性をアピールできる体制作りが差別化要素になります。
色問題トラブルを未然に防ぐための実践ポイント
設計・調達段階での「合意形成」と「期待値コントロール」
製品開発やサプライヤー選定段階で「色の基準」「測定方法」「許容範囲」を数値で合意しておくことが極めて重要です。
曖昧な「イメージ」や「前例踏襲」だけでは、後工程でのクレームや返品、サプライヤーの手戻りコストが膨らみます。
– 色見本板や色彩設計図の活用
– 測定器条件およびロットサンプルの早期共有
– 新素材や新工程の際は事前にパイロット検証
こうした対応が、市場投入後の致命的失敗を防ぎます。
現場で起こりがちなトラブル事例と対策
– 複数拠点で色測定条件が不一致→上位規格と統一作業を徹底
– 原材料変更で微妙な色差発生→事前の材料毎色彩評価の実施
– エンドユーザーと期待値齟齬→納品前にチェックサンプル提出
多くは「測定条件」「合意方法」「期待値」への認識不足やコミュニケーションロスが原因です。
「記録を残し、定期的に見直す」地道なPDCAサイクルが、現場力と信頼性を高めます。
これからの色彩工学に求められる人材像
今後の現場に求められるのは、職人芸やアナログ的判断を尊重しつつも、色彩工学の知識や測定機器を使いこなす“ハイブリッド人材”です。
バイヤーやサプライヤーの立場でも、数値として伝えられる「色品質」の意味を正しく理解し、交渉・改善・トラブル解決に活かすスキルが重宝されます。
また、情報共有やDX促進のチームプレーの中核となれる「現場+デジタル」リーダーの育成も急務です。
まとめ:色彩工学は製造現場の付加価値・競争力を高める力
「色」は現場の感覚・職人技にとどまらず、科学的・客観的な品質管理が不可欠な時代となりました。
色彩工学の基礎を知り、色の測定評価法を理解することで、製造業の現場力とサプライチェーン全体の信頼性は大きく向上します。
また、デジタル化社会の中で「アナログ×デジタル」のベストミックスを模索していくことで、時代が変わっても変わらぬ品質・顧客満足度を実現できます。
製造現場・調達・サプライヤー、すべての皆さまが「色の科学」とうまく付き合い、ものづくりの新たな地平線を切り拓くための一助となれば幸いです。
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