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物流KPIが形だけで改善しない企業の共通点

目次
はじめに:物流KPIにまつわる現場のリアル
製造業の多くの企業では、DXや業務改善の波が遅れながらも確実に押し寄せています。
特に物流部門においては、KPI(重要業績評価指標)を活用して効率化やコスト削減を目指す動きが活発です。
しかし現場の実感では、「KPIを導入したものの、思うように改善が進まない」「KPIが単なる数値の羅列になってしまい、現場とのギャップが広がっている」といった悩みが絶えません。
なぜ形だけのKPI運用に陥る企業が多いのでしょうか。
昭和から連綿と続くアナログ体質を抱えたまま、DX・デジタル化の外圧だけで仕組みを変えようとすることの難しさ。
今回は、物流KPI運用が形骸化しやすい業界の背景と、現場目線での改善のヒントを深掘りしていきます。
物流KPIに対する誤解と現実
KPIは「魔法の杖」ではない
KPIという言葉が一般化して久しいですが、導入しただけで劇的に現場が変わるという誤解が業界全体に蔓延しています。
計画性の不足、上からの押し付け型、現場無視・未検証のまま導入されたKPIは、やがて「数値を記録すること」が目的になり、本来目指していたはずの改善活動とは乖離していきます。
その結果、「毎月KPI報告会を開いているが、実態と合わない」「各種数値がゴールになり、作業手順が形骸化する」といった現象が広がっています。
昭和的現場主義と“見える化”のジレンマ
製造業の現場には“現物・現場・現実”を重視する三現主義が今なお強く根付いています。
反面、デジタルKPIによる“見える化”では「データが全てではない」「現場の暗黙知を数字では語れない」といった反発や諦めムードも見られます。
既存のやり方に固執するあまり、新たな改善策を受け入れづらい土壌が、形だけのKPI運用を生む一因になっています。
形だけで改善しない企業の共通点
では、なぜ多くの企業で物流KPIが形骸化してしまうのでしょうか。
現場責任者や調達・購買担当が20年以上業界に身を置いた実体験から、以下のような共通点が見えてきました。
1. KPI設定の目的が曖昧
「上司に言われたから」「他社が導入しているから」といった理由だけでKPIを導入し、実際に何をもって成功とするのかが明確でないケースが目立ちます。
KPIを決める際、本来は
– 会社としての課題は何か
– 顧客満足度にどのように貢献したいのか
– サプライチェーン全体のどこを強化したいのか
という観点から“Why”を突き詰め続ける必要があります。
しかしこれが形だけになることで、「出荷数」「誤出荷率」「在庫回転率」など、使いやすい指標をとりあえず羅列しただけになりがちです。
2. 現場と管理部門の分断
物流KPIの運用失敗で最も多いパターンが、「管理部門が決めたKPIを現場が追いかける」「現場の声がKPIに反映されていない」という分断です。
管理部門は全体最適の観点からKPIを設計しがちですが、現場では日々の変動要因や作業の複雑性など、数字では測りきれないリアリティを感じています。
この乖離を放置すると「形だけ」の評価指標が生まれ、現場は本来やるべき改善活動から遠ざかってしまいます。
3. KPIのためのデータ取得・報告が目的化
“数字のための数字”を追いかけ、「KPIの値そのものを良くするための小手先の対応」が常態化してしまう現場も少なくありません。
例えば、出荷遅延ゼロを追求するあまり、無理な残業や現場の自作自演的な調整で数値だけを揃え、本質的なロスや業務改善の機会を見落とす結果となります。
4. 根本的な要因分析が疎かになる
KPIをモニタリングするだけで、“なぜその数値になったのか?”という根本原因の掘り下げが不十分になりがちです。
表層的な対策にとどまり、再発防止や継続的な改善へと繋がっていません。
5. 成果・工夫を評価しない文化
現場から生まれる日々の改善活動や、KPIを達成するための工夫について、きちんと認め・称賛する仕組みがない企業では、次世代の自律的改善が定着しません。
「どうせやっても評価されない」「数字合わせだけしておこう」と現場のモチベーションが低下し、KPIが空回りしてしまいます。
アナログ業界でも実践できる物流KPI改善のヒント
上記のような失敗を繰り返さないためには、どのような視点や取り組みが必要なのでしょうか。
“昭和的現場主義”と“デジタルKPIの力”を融合させるラテラルシンキング的なアプローチを紹介します。
現場ヒアリングの徹底:生きたKPIを設計する
本来のKPIは、データの羅列ではなく「現場の困りごと」「お客様からの要望」から逆算して生まれるべきものです。
工場運営の経験から言えば、月に一回で良いので
– “なぜこの指標が重要になるのか”
– “実際の現場作業でどこがボトルネックか”
– “今どんな対応が求められているか”
などを必ず現場チームと共有・議論していくことが、KPIが形だけにならない第一歩です。
「現場の気づき」をKPI報告書に反映させる
単なる数値報告ではなく、現場で感じた問題点や気付き(例:「この間メーカーAの部品がいきなり増加した」「納入の順序が変わった」など)を、KPI定例会のアジェンダに盛り込む。
現場の小さな違和感や“なんかおかしい”は、やがて大きな改善のヒントとなることが多いです。
KPIの更新・見直しを恐れない
一度設定したKPIに固執せず、現状と合っていなければ
– 「今の指標は目的に合っているか?」
– 「新たにモニタリングすべき動きはあるか?」
を現場と共にゼロベースで見直しましょう。
「変えてはいけないルール」だと思い込む風土を打ち破ることが、物流部門の柔軟性・強さにつながります。
ローテク現場でも情報共有を徹底する
紙中心、口頭ベースの現場でも、朝礼・終礼・週報といったタイミングをフル活用し、KPIや気付きの報告・共有を必ず実施します。
大企業のようなデータベース・BIツールがなくても、「気になるロス」「未然に防いだミス」などを目に見える形で残すことで、チームの力は確実に高まります。
サプライヤー・バイヤーの双方が持つべき視点
購買部門、調達部門、サプライヤーにとっても、物流KPIは取引関係を大きく左右します。
“バイヤー視点”と“サプライヤー視点”、両方の立場を踏まえての考え方も重要です。
バイヤー(買い手)が注意すべきポイント
– サプライヤーに「無理なKPI」を一方的に押し付けない
– 数値未達成の理由を丁寧にヒアリングし、長期的な改善策を一緒に考える
– サプライヤー現場の努力や創意工夫を積極的にフィードバックし評価する
バイヤー自らが現場寄りの視点を持つことが、より健全なパートナー関係の維持に繋がります。
サプライヤー(売り手)が持つべき視点
– バイヤーのKPI要求の裏にある「真の狙い」(コストダウン、品質ロス防止、納期遵守強化など)を深掘りする
– 納入現場の制約・努力を可視化し、バイヤー側へ定期的に報告する
– バイヤーのニーズ変化や先行き予想を、自社の物流現場の知見と照らして提案に活かす
“言われっぱなし”にならず、双方向のコミュニケーション文化が物流KPIの質を高めます。
まとめ:形骸化から脱却し、KPIを生きた武器にするために
物流KPIが形だけになり改善しない企業には、目的不在・現場不在・数値のための数値という落とし穴があります。
デジタル化が叫ばれる時代でも、現場目線・昭和的な三現主義の良い部分を残しつつ、KPIを“生きた指標”として進化させること。
現場と管理部門、バイヤーとサプライヤー、それぞれの立場を垣根なくつなげ、実践と試行錯誤を継続すること。
これらの地道なアクションが、物流KPIの運用を形骸化から脱却させ、会社全体の成長を牽引する力となります。
現場で自己満足に終わらず、次世代にも強い仕組みをつくる一助となれば幸いです。
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