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OEMパーカーの量産後検品で見落としやすい外観不良の種類

目次
はじめに:OEMパーカーの量産検品が抱える課題
OEM(Original Equipment Manufacturer)パーカーは、受託生産という形で多くのアパレルブランドに提供されています。
企画・デザインから始まり、生地選定、仕様書作成、サンプル作製、そして量産へ。
しかし、OEMパーカーの大量生産では、現場で検品をすり抜けてしまう“見えにくい外観不良”が往々にして発生します。
検品作業が形骸化してしまう昭和的なルーティン体質、生産ラインの煩雑化、検査基準の曖昧さ――。
いまだにデジタル化が進みにくい日本の製造現場において、OEMパーカーの外観不良見逃し問題は、根深い課題と言えます。
本記事では、現場でしばしば見落とされがちな外観不良の種類を明確にし、その背景や隠れたリスク、そして実践的な対策までを詳しく解説します。
現役バイヤーやサプライヤーの品質担当者だけでなく、製造業に携わる現場リーダーの皆様にも、実践的な知見を提供します。
OEMパーカーの検品現場――昭和的な慣習と現代製造業のジレンマ
なぜ“見落とし”は起こるのか
製造現場ではスピード、生産コスト、納期優先の風潮が根強く残っています。
経営層からの「不良ゼロで納期厳守」というプレッシャー。
ですが、多品種少量化や働き手の高齢化など、現代特有の問題が拍車をかけています。
たとえ検査工程を設けていても、「経験」と「目視」に依存した昭和的なやり方では、人によるバラツキや慣れによる見逃しが多発します。
また、海外工場への生産移管による言語の壁、文化の違いも、不良品の見逃しに繋がる大きな要因です。
よくある“丸投げ発注”のリスク
「メーカーが全部やってくれるから…」「実績のある工場だから…」という油断。
仕様書が曖昧なまま進行し、“なんとなく”の目視検査でOKが出てしまうケースも少なくありません。
特にOEMでは、仕様や検査基準の認識違いが命取りです。
量産後の外観不良発覚は、クレームやリコールはもちろん、長期的なブランド価値損失にも直結します。
OEMパーカーでよく見落とされる外観不良の種類
生地・糸系の不良
パーカーの外観検品では、単なる縫製ミスや汚れ以外にも、見逃しやすい生地関連の問題が多く存在します。
・織りムラ、筋、段差
意外と見逃されやすいのが生地自体の不均一。
室内の照明やアングルによっては判別しづらく、平置き検品のみでは「筋」「段差」が見えにくいことが多いです。
・ピリング、ケバ立ち
粗悪な糸や摩擦による毛玉・ケバ立ちは、輸送工程や一度の着用で判明する場合があり、量産時の抜き取り検査では気付きにくいです。
・色ブレ、色むら
同じ「黒」でもロットごとに微妙にトーンが異なり、日中屋外と工場内照明下では違って見えることがあります。
前パンツとフード、ポケット部分で生地の染まり具合が不一致、というケースも油断できません。
縫製やパーツの不良
パーカー特有のディテールや立体的な構造が、縫製工程を複雑化させ、見逃しの温床となります。
・ステッチの曲がり・糸飛び
フードの取り付け・袖付けなど、曲線が多い分ステッチ乱れや飛びが出やすいですが、目立つ場所だけを検査して終わってしまうことがあります。
・縫いしろの倒し方向
左右で縫い代の倒し方向が異なっていたり、合わせ部分が厚くなってゴロついているなど、着用テストをしなければ判明しにくい不良です。
・カンヌキ・バータック抜け
強度のための補強ステッチが忘れられている、もしくは表面糸が抜けている場合もよく見受けられます。
・部品の取り付け・配置ミス
ブランドネームやピスネームの位置ズレ、ドローコードの付け間違いなどが典型例です。
仕上げ・後加工系の不良
・プレスシワ・アセ
スチームプレスや乾燥工程でついた“アタリ”や変色、プレス台の汚れ移りなど、サンプル検品(仕上げ前)では検知困難なものも多々あります。
・プリント剥がれ・インク飛び
シルクスクリーンや転写プリントは、剥がれ・滲み・カスレがパーツごとに発生することがあります。
特に大量生産時には仕上がりレベルに差が出やすい部分です。
・芯地の浮き/裏地のズレ
パーカーの場合、裏使いや二重フードなどで芯地・裏地が必要ですが、芯地が浮いてヨレていたり、表地との縫い合わせが甘かったりといった細かな不良も、既製検品では見過ごされがちです。
異物・付着系の不良
・生地への油染み、汚れ
作業現場由来の油性・グリースによる汚れは、濃色だと解りにくく後日発見となるパターンが多いです。
・糸くず混入
検品者の衣服や現場ホコリがパーカー内部(フード内やポケット内)に混入したまま納品されると、最終使用者の手に触れるまで発覚しません。
・針・金属くず残留
縫製工場での安全管理不足による異物混入は、重大クレームの元です。
現場目線での“見逃し”を防ぐには?
1. 品質検査の多重化&人材育成
「B級品の流出は検品だけで防げない」と言われる通り、複数視点・段階での検査体制が不可欠です。
現場任せの単純目視から一段上げ、「リーダーによる交差検査」「納品先バイヤーとの現地立会い」など、二重・三重のチェック機会を組み込むのが有効です。
また、検品員・ライン作業者の再教育も大切です。
外観不良の“許容限度”や“NGレベル”を具体的に定義し、事例集や現物サンプルを使ってスキル標準化することが重要です。
2. デジタル化・画像検査システムの導入
AI画像認識やスマートカメラによる検査システムを、部分的にでも導入することで、見逃し率を大幅に低減できます。
特にパーカー生地表面のムラや色ブレ、プリント不良の検知にはベストです。
コストや実運用面で一足飛びの全自動化は難しくても、“人の目”+“機械の目”のハイブリッドが有効です。
3. 検査基準書・工程の見直し
「これくらいはOKだろう」といった“現場裁量”の幅を狭めるためには、検査基準書の具体化が鍵です。
自社・協力工場での“基準のすり合わせミーティング”を設け、ロットごと・生地・部材ごとにグレード評価を共有しましょう。
また、量産検品において「パーツごと」「工程ごと」にチェックシートを設計し、抜けを防止します。
たとえば「フード裏」「ポケット内の縫い目」など隠れた箇所ごとのチェックリスト化が有効です。
バイヤー・サプライヤー双方で意識したい“価値づくり”
“ゼロクレーム”至上主義からの脱却
バイヤー側は、単に「ゼロ不良・ローコストで納期厳守」という従来型マインドセットだけに固執してしまいがちです。
しかし、ブランド価値を高めるためには“小さな不良の芽”を見逃さず、工場と率直な現場対話を持つことが不可欠です。
一方、サプライヤー側も「コスト至上主義」だけでなく、「なぜこの仕様・部材なのか」「マーケットで何を評価されているのか」といった、“ユーザー発想”をもった品質管理と現場改善が求められます。
OEMパーカーという製品一つをとっても、検品基準の底上げと産業構造のアップデートは、双方の協働なしには前に進みません。
まとめ:現場知見を活かすことで、OEMパーカーの価値を高める
OEMパーカーの量産現場では、今なお昭和的なアナログ慣習が根強く残っており、外観不良の見逃し事例が絶えません。
生地や縫製、後加工、異物付着など、あらゆる段階で“微細な不良”が発生するからです。
現場リーダーや検品担当者は、「誰もが見逃すNG」を“発見する力”を養うと同時に、デジタル検査の導入や検査基準の見直しなど、ラテラルシンキングで“次の一手”を考える必要があります。
バイヤーもサプライヤーも、「お互いの視点や課題」を知り、課題の本質と向き合うことが、真の品質文化を育み、市場価値を高める第一歩です。
製造業各社が現場の経験を知恵に変え、昭和の常識にとらわれない新しいモノづくりの時代を切り拓いていきましょう。
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