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小型薄型マルチバンドを実現するスマートデバイスアンテナ設計

目次
はじめに
小型薄型マルチバンド対応のスマートデバイスが求められる現代。
スマートフォン、ウェアラブル端末、IoT機器など、多様な無線通信を快適に利用するためには、製品本体に組み込むアンテナ設計の高度化が不可欠です。
しかし、製造業界では長年の設計思想や過去の成功体験が障壁となり、新たな技術トレンドが導入されにくい側面も見受けられます。
この記事では、現場目線での実践的なアンテナ設計のコツと、業界の現状、最新トレンド、成功事例、さらにはサプライヤーやバイヤーの思考まで多角的に解説します。
小型薄型マルチバンドアンテナへの時代の要求と現場の壁
多バンド・小型化のニーズ高まる現実
スマートデバイスの普及と共に、製品はますます小型・薄型化しつつ、多様な通信規格にひとつのデバイスで対応することが求められています。
近年は、5G・LTE・Wi-Fi・Bluetooth・GPSなど、数多くの無線規格が共存しています。
それぞれの無線規格では周波数や帯域幅が異なるため、従来のような単一バンド専用アンテナでは対応不能です。
エンドユーザーの期待値や通信品質への要求も高まり、製品競争力の源泉として高度なアンテナ設計が不可欠な状況です。
昭和的アナログ業界の遺産とその弊害
長年、国内製造業では“勘と経験”が重視される現場文化が根強く残っています。
実際、多くのベテラン技術者が過去の成功パターンを踏襲するため、革新が遅れるケースも少なくありません。
設計初期段階での「とりあえず形にする」アプローチや、手作業でプロトタイプを製作する文化がいまだ健在です。
昨今の小型化や多バンド化要求への対応では、アナログ的設計思想が足かせになりやすいため、いち早くデジタル技術やシミュレーションを積極活用できる人材の重要性も増しています。
成功するアンテナ設計の要点
基本設計と物理ロスの克服
小型薄型アンテナの場合、構造的な制約が大きくなり、指向性や利得(ゲイン)、周辺部品の干渉といった物理的な課題が重くのしかかります。
アンテナ設計の基本は、
・必要とする周波数帯域に合わせる
・筐体内の電磁干渉を最小化する
・基板材質・レイアウトの最適化
・異なる通信規格の共存設計
に尽きます。
技術的には共振周波数・インピーダンス整合・放射効率の最適化が求められ、従来のモノバンド設計とは根本的に違うアプローチが必要となります。
現場では、筐体壁への配置変更、基板上アンテナパターンの工夫、メタマテリアルの活用、小型チップアンテナ採用など、多彩な技術手法を組み合わせるケースが増えています。
シミュレーションと物理試作の両輪活用
アナログ文化の名残で「まず作ってみる」傾向が依然として強いですが、近年では3D-CADやEMシミュレーション(電磁界解析)ツールの導入が必須となっています。
試作前のシミュレーションによる干渉・共振分析で、設計工数とコストを同時に削減するのが鉄則です。
とはいえ、シミュレーション万能ではなく、実装状態でのアンテナ特性は実機検証を経て微調整することが不可欠です。
製造現場では、設計者と実装担当者、および測定担当者が密接にコミュニケーションを取りながら、最適解を追い続けるチームプレーが成果につながります。
バイヤー視点:サプライヤー選定と交渉のポイント
バイヤーがアンテナ開発で重視する視点
製造業のバイヤーは、要求仕様・コストだけでなく、量産安定性・納期・品質管理体制といった多面的な観点でサプライヤーを評価します。
とくに小型マルチバンド製品の場合、設計力(カスタマイズ対応力)と同時に、量産移管ノウハウ、トラブル対応のスピード感が重視されます。
バイヤーとしては、以下の点を見極めることが重要です。
・開発段階からの柔軟な技術サポート体制
・アンテナ性能の検証手法/データ開示レベル
・部材供給網の強靭さ(原材料・IC等の調達網)
・試作品から量産までの一貫体制の有無
サプライヤーが絶対押さえるべき視点
サプライヤーの立場からは、バイヤーニーズを的確に把握すると同時に、技術提案力・コスト力のみならず、信頼性データや製造現場の見える化情報(例:トレサビリティ・不良率の公開)など、現場に根ざしたリアルな情報を積極開示することが差別化の鍵となります。
また、設計・製造段階で歩留まり向上や検査工程短縮のための独自ノウハウも提案できると、サプライヤーの存在価値は劇的に高まります。
最新トレンドと業界動向
5G/IoT時代の複合設計
現在多くのメーカーで、5G通信対応とIoT向けのセンサー連携が一体化する中、超広帯域(UWB)アンテナや複数のアンテナを一枚の基板に多層実装する高度化が進んでいます。
AIやクラウド連携を見据え、高精度測位(RTK)やセキュリティ向上にも対応した設計要件が標準化しています。
さらに、高周波帯の利用拡大による基板材の再選定や、新素材・新加工法の導入競争も激化しています。
主流技術の進化とヒント
現場レベルでの注目技術は、メタマテリアルアンテナ(人工電磁材料)、内蔵型FPCアンテナ、チップアンテナ、MIMO対応多素子配置など多岐にわたります。
また、人の体や金属フレームがアンテナ性能へ与える影響が大きいため、“仮想人体モデル”や“筐体組込み最適化”などの先進的シミュレーション技術も活用範囲が拡大中です。
アンテナ単体の性能向上だけでなく、製造現場の検査自動化や、品質トレーサビリティ向上(AI画像検査導入など)も生産管理の要件となっています。
成功事例に学ぶ、現場で生きるアンテナ設計の実際
ケース1:ウェアラブル端末のフレキシブルアンテナ
ある大手家電メーカーでは、健康管理用スマートウォッチの開発で、FPC(フレキシブル基板)内蔵型アンテナと筐体一体成型技術を組み合わせ、薄型化・曲面対応・マルチバンド同時通信を実現しました。
現場の工夫として、基板パターンの最適化だけでなく、成型工程と表面処理の並行開発でエンプラ樹脂選定を最適化。
従来比30%以上の通信安定性、20%の筐体薄型化を両立しました。
ケース2:スマートフォン用高度MIMO構造
スマートフォンメーカーの現場では、筐体上部・下部に4本のMIMOアンテナを分割配置し、ユーザーが握った際の電波減衰を最小化。
AIによる利用時シーン別アンテナ切替え制御を組み合わせることで、日本市場特有の「電波が弱いと評判が下がる」リスクを低減しました。
まとめ:製造現場の知見がイノベーションを生み出す
小型薄型マルチバンドアンテナの高性能化は、従来の思い込みや“現場の常識”にとらわれないラテラルシンキングと、現場技術者の膨大なノウハウ融合による実践力が欠かせません。
また、バイヤーやサプライヤーの立ち位置から「どのような現場課題がネックになるのか」「どんな技術PRが刺さるのか」まで理解し、協業を進めることが市場競争力の源です。
デジタルとアナログ、経験と最新技術、現場目線と経営視点。
さまざまな力を横断的に掛け合わせることが、これからの製造業で生き残る最大の武器となるはずです。
変化のスピードが加速するいまこそ、現場起点のイノベーションこそ未来のスタンダードとなるでしょう。
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