図解とプレゼンで差がつくわかりやすい説明技法完全マニュアル

はじめに：製造業の「説明」はなぜ難しいのか

製造業の現場では、図解やプレゼンテーションによる「説明力」が、飛躍的なビジネス成果に直結します。

しかし、私の20年超の経験からも、原材料調達や生産現場、品質管理や自動化の会議で「説明不足」や「伝達漏れ」が原因のトラブルが後を絶ちません。

昭和世代のアナログ文化や現場主義が根付いている中、複雑なシステムや工程を“わかりやすく”伝える技術は、多くの方にとって喉から手が出るほど必要なスキルです。

この記事では、現場ならではの課題感やリアルな事例をふまえ、図解とプレゼンテーション技法によって「伝わる説明」ができるようになるための完全マニュアルをお伝えします。

なぜ「図解」と「プレゼン」が必要なのか

現場目線で語る、説明力の価値

製造業の業務は、専門用語や複雑なプロセスが多く、曖昧な説明や抽象的な話し方では、必ず誤解やロスが発生します。

たとえばサプライチェーン全体の流れ、新材料の仕様、改善施策のインパクトなど、利害関係者が多いプロジェクトほど、説明のズレが重大なロスや品質事故につながります。

このような環境下で頼りになるのが、「図解」と「プレゼン」なのです。

トヨタ・日産に学ぶ、図解とプレゼン活用の現場

大手製造業では「なぜなぜ分析」や「QCストーリー」など、図表を使って課題を説明する文化が深く根付いています。

また、現場スタッフ・技術者・バイヤー・経営層など、それぞれ立場が異なるメンバーの間で「共通言語」として図解が機能しています。

資料やプレゼンテーションを充実させ、「見える化」することで、社内外の理解・納得・同意形成がグンとスムーズになります。

バイヤーやサプライヤーにとって不可欠な理由

バイヤーの仕事は、複雑化する調達条件や品質要件、納期管理、コスト管理など、関係者が多様になりつつあります。

サプライヤーにとっても、自社強みや取引条件を「納得感ある説明」に昇華する力が重要です。

図解やプレゼン技法を会得することは、バイヤー/サプライヤー関係を円滑にし、無用なトラブルや疑心暗鬼を避ける第一歩になるのです。

現場で使える！図解の鉄則と6つの実践パターン

図解の基本ルール

製造業の説明現場では「1枚で全体像が俯瞰できる」図解が重宝されています。

下記の3つの原則をおさえましょう。

1. 必ず“全体と個別”の関係性を示す
2. 図を見た瞬間に「何が問題か」「何を説明したいのか」が分かる
3. 現場で使われている言葉や記号を忠実に使う

これらを意識するだけで、的確で理解しやすい資料がグッと増えます。

実務で即使える6つの図解パターン

1. プロセスフロー図：工程や流れを時系列で整理。
2. 関係図/相関図：人物や部門、課題同士の関係性を「線」で見せる。
3. マトリクス図：複数の観点でモノや課題を比較。たとえばコスト×リードタイムなど。
4. ピラミッド型/階層図：情報や方針、要点の優先順位や階層を一発で示す。
5. Before/After図：改善前と後の状態をシンプルに対比。
6. 構造分解図（ツリー図）：複雑なシステムを部品単位、要素単位にまで分解表示。

それぞれの図は、使い分けがとても大切です。

あるべき姿・現状・障害・改善策を「具体例」で示すことで、誰もが課題の本質に目を向けやすくなります。

失敗しがちなNG例と解決策

・抽象的すぎて現場に響かない図
・文字や要素の詰め込みすぎ
・プロセスや関係性が一目でわからないレイアウト

こうした図は、逆に「時間のロス」や「誤解」を生むリスク大です。

要素の取捨選択、色使い、矢印の向きなど基本の徹底こそが、伝わる図解の鍵となります。

誰でもできる！プレゼンテーション技法の現場流アプローチ

現場で本当に使える「話し方」三原則

1. 短く、明確に
冗長な説明や前置きを避け、（1分で全体像説明→詳しい話に入る、など）材料の要点を先に伝える。

2. 数字と言葉をセットで
「○○％のコスト減」「24時間以内納入」など、具体的な数値を示すことで説得力が増します。

3. 比較、実例、理由の3点盛り
なぜ変更が必要か、過去と現在を比較しながら、実例や“理由”を明らかにして話すことで、納得感が深まります。

昭和的な現場でも受け入れられる説明とは

古い体質の現場や、暗黙知が根付く環境では「共感と調和」に重点を置くと効果的です。

– 「みなさんご存知の工程ですが、少し見直します」
– 「長年、○○が課題とされてきましたが、実際に現場の声としても…」
– 「ベテランの○○さんにも後ほどご意見いただきたいのですが…」

など、“相手をたてながら”客観データと自分の考えを合わせて話す工夫が重要です。

資料プレゼンは“構図”と“順番”が9割

– 1枚目：「現状と問題」
– 2枚目：「理想（ゴール）と課題整理」
– 3枚目：「改善策や要点」
– 4枚目：「費用対効果（コスト・品質等）」
– 5枚目：「まとめ」

このような「ストーリー設計」によって、資料は読む人の頭にスーッと入りやすくなります。

また、「話しながらポインタで図の場所をさす」「工程写真を取り入れる」などの演出も効果的です。

よくある悩み・事例とその突破法

Case1：購買部門の若手から「話が伝わらない」と言われる

→若手や他部門に、いきなり現場用語や専門知識で説明してしまうと壁を作ってしまいます。

「調達全体の流れ（マクロ）」と「目の前の課題（ミクロ）」を図解で分けて説明し、最初に“全体”次に“詳細”と段階を踏むことがポイントです。

Case2：上司（工場長や役員層）への提案で、理解が進まない

→熟練層や管理者は“数字”“コスト”“成果”重視です。

工程やKPI、納期、原価低減など“どれだけ事業にインパクトがあるか”を、グラフやピラミッド図で一目でわかるように資料化すると響きます。

Case3：サプライヤー側が何を説明したらいいのかわからない

→バイヤーが求めているのは「安定供給」「品質レベル」「コスト」「リスク管理」の明確な裏付けです。

「工場全体の作業フロー」「品質管理手順」「不良発生から出荷までのリードタイム」など、図解と短いストーリーで説明し、客観データや過去事例も添えましょう。

Case4：ベテラン現場作業者との認識齟齬を埋めたい

→昭和型現場のベテランは“経験や勘”に頼りがちです。

工程ごとに「目視できるチェックポイント」「合否判断基準」などをサンプル画像やイラストで示し、「これまで通り」「ここだけ変わる」など明確に区分して伝えると安心してもらいやすくなります。

すぐに現場で実践できる、3つのトレーニング法

1. 日々の報告書や朝礼資料で「図を1枚」つけてみる（どんな図でもOK、まず習慣化から）
2. 月1回、自部署や関係部門に「10分だけプレゼン」する場を作る（小さく始めてPDCAを回す）
3. 優れた他社・他部署の資料やプレゼンを「図表の構造」「流れ」「説明方法」ごとに観察・真似する

これらによって、説明技術はぐんぐん上達し、「あの人の話は分かりやすい」と評価されやすくなります。

まとめ：「説明力」は、未来の製造業の武器になる

製造業で生き抜くためには、現場感覚とロジカルな説明力を両立させることが何より重要です。

図解やプレゼンテーションという武器を持つことで——
・どんな現場でも合意や協力を得やすくなる
・納得感ある提案でトラブルを減らせる
・現場の若手や海外企業とも対等に渡り合える

など、多くの“理想の未来”が切り拓けます。

今この瞬間から、図解・プレゼン技法の「実践」を始めてみませんか。

業界がどう変わろうとも、わかりやすい説明ができる人材こそ、必ず選ばれる時代です。