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投稿日:2025年5月23日

経営層へ新規研究開発テーマを通すための企画提案方法とその事例

はじめに:製造業における研究開発テーマの重要性

昭和から続くアナログな体質が色濃く残る日本の製造業は、世界的な競争や市場の変化に直面しています。
その中で会社が生き残り、さらに成長するには、従来のやり方を見直し、新しい価値を創出する研究開発(R&D)が不可欠です。
しかし、新たな研究開発テーマの提案を経営層に理解・承認してもらうハードルは依然として高いままです。

この記事では、20年以上にわたり製造現場からマネジメント、調達購買、生産管理、品質管理また自動化まで幅広く現場に関わった経験を基に、実際に新規研究開発テーマを経営層へ通したときの具体的な企画提案の方法や成功事例を、最新の業界トレンドや現場目線も交えながら詳細に解説します。

なぜ研究開発テーマは通りづらいのか

昭和的な意思決定とリスク回避志向

研究開発テーマがなかなか承認されない背景には、アナログ的な意思決定フローと、リスクを過度に避けようとする企業風土があります。
特に製造業の現場では、「現状維持が最善」という固定観念が根強く、新しい提案は「効果が見えない」「リスクが大きい」という理由で敬遠されやすいです。
コスト削減や生産性向上など、直接“数字”で結果を示しやすいテーマは受け入れられやすいものの、将来につながるテーマほど慎重になりがちです。

従来のプレゼン方法の限界

従来型の研究開発提案は、技術的な面白さや担当者の熱意だけを前面に打ち出しがちです。
このような“作り手発想”では、現場の課題感や会社の経営戦略、マーケットの動向との接続が弱く、経営層の心には響きません。

新規テーマが経営層に刺さる“企画提案”の条件

1. 経営課題と市場ニーズを先読みする

まず重要なのは「その研究開発テーマが、経営層の現在の関心事や、会社の長期戦略、さらには市場の潮流や顧客変化とどう結びつくのか」を明確にすることです。
たとえば「サステナビリティ」や「コスト競争力」「新規マーケットの創出」といった経営キーワードと、研究テーマが直結しているかが問われます。

市場動向や顧客ヒアリング、競合他社のアクションも徹底的にリサーチし、“今後の会社の売上をどこで稼ぐか”に直結する仮説とストーリーを先回りして準備します。

2. “現場ならでは”の課題解決視点

研究開発テーマを経営層に通す際、「現場の痛点を的確に把握し、技術で解決できる」視点は非常に強力です。
現場起点での課題(例:歩留まり低下、納期遅延、属人化など)を、具体的な数値や事例で示し、その解決策として新たなテーマを位置付けることが、説得力を大きく増します。
特にコストダウン、品質向上などの「数字で語れる成果予測」は判断の決め手になりやすいです。

3. 会社組織全体の目線・サプライチェーン発想を持つ

優れたテーマ提案では、社内外のサプライチェーン全体を俯瞰できます。
「バイヤー(調達担当)の視点」「生産管理・工場の全体最適」「サプライヤーとの協業」など、多角的な視点を織り込むことで、属人性に依存しない再現性と持続性を訴求できます。

4. ROI(投資対効果)の“見える化”

最終的な判断ポイントはやはり“利益に直結するか”です。
「研究開発費に対し、どれくらいのリターンが期待できるか?」「どの程度の時間軸で黒字転換するか?」といったROI指標や、損益シミュレーションを“数字で”見せましょう。
ここでも、成功確率を高めるため複数シナリオを用意し、リスクマネジメントも同時に提示するのが現実的です。

企画提案のフレームワークと具体的な作り方

STEP1:テーマ選び ~現場課題と事業戦略の接点を定義~

まず、自社の中長期戦略や経営計画から「今後注力すべき市場・分野」を抽出します。
続いて、現場のファクト(数値・事象)をリスト化し、「この領域の生産性がボトルネック」「この領域はデジタル技術で革新できそう」などの仮説を立てます。

サプライヤーやバイヤー目線も持ち、自社内外の連携余地や外部リソース活用も視野に入れましょう。

STEP2:ストーリー設計 ~Why・What・Howフレーム~

提案プレゼン資料を作る際は、「なぜ今このテーマが必要なのか(Why)」「何を実現するのか(What)」「具体的にどこまで、どうやって進めるか(How)」――というフレームで整理します。

Why:市場/経営層の課題・要求定義。現場の課題・競争他社とのベンチマーク比較。
What:提案テーマと目指す成果の定義。新技術、新商品のポテンシャル分析。
How:実施体制、スケジュール、投資計画、ROIシミュレーション、リスクとその対策案。

STEP3:見える化と意思決定のサポート

ROI試算や事業インパクト(何%コスト改善、売上拡大○億円など)、シナリオ別のリスク評価。
競合他社の取り組み、現場の生々しい声(匿名アンケートや定量データ)などを組み合わせ“数字と肌感覚”の両方で政策判断を支えます。

成功する提案に共通するポイント

経営層と定期的な対話を持つ

定例報告や社内オープンディスカッションなど、経営層と日常的に対話する“場”を持つこと。
これにより、経営層の目指す方向や個別の関心事をつかみ、タイムリーなテーマ提案が実現します。
提案に関しても、「正式な会議になる前に、ショートプレゼンや個別ヒアリングで反応を探る」ことで本番での成功確率が大きく上がります。

現場・顧客・サプライヤーの声を漏らさない

提案資料やプレゼンに、現場スタッフや顧客、仕入先サプライヤーからのフィードバックを盛り込むことは効果絶大です。
「既存の生産ライン担当から、〇〇に困っているという声が複数上がっています」や「主要サプライヤーから、小ロット多品種化のニーズが高まっている」といった具体的エビデンスがあると、経営層の心にも刺さります。

規模拡大や横展開のストーリーを用意

単なる一発提案ではなく、「この技術や研究開発テーマが一部門に留まらず、他の事業部や製品ラインにも応用できる」将来展望を併せて示すことで、“会社全体の成長ドライバー”としての説得力を持たせます。

失敗リスクを正直に語り、再チャレンジの余地を残す

提案段階で「○○の場合は失敗するリスク有」と正直に伝え、その場合のリカバリー策も提示する姿勢が、逆に経営層の信頼を得ます。
また、一度却下されたテーマでも、何度も角度を変えて提案し直す粘り強さが大切です。
現場や市場の変化とともに再提案し続けることで時流に合致し、最終的に通るケースも少なくありません。

製造業現場発、新規R&Dテーマ提案の実例

事例1:AI活用による検査自動化テーマの通し方

工場の品質検査ラインで属人化・人手不足が深刻化。
現場の“日々のムリ・ムダ”を定量的に整理し、生産ロスの金額換算と「今後5年で検査員の技能伝承が困難になる」などの将来リスクを経営層に説明しました。「AIによる画像検査で省人化+品質安定が狙える」という具体的な解決策を明示し、さらに予想効果額・投資額・ROIを詳細にストーリー化しました。
最終的には「省人化」「人材難回避」「品質トレーサビリティ強化」「事業の競争力向上」まで並列訴求することで、経営会議で承認された実績があります。

事例2:カーボンニュートラル対応の製造工程改善

顧客やバイヤーからの要望で年々高まる「脱炭素・エコニーズ」。
工場ごとのCO2排出量見える化を図り、「現時点でどこまで削減できるか」「仮にこの工程改善テーマを実施すると、将来的な顧客開拓やESG指標獲得にどうつながるか」を因果関係で示しました。
特に大手自動車メーカーなどサプライヤーとして競争にさらされる現場では、“先取り投資でバイヤー評価獲得”というメリットをアピール。
複数工場での調査・数値比較資料は、経営層も納得せざるを得ない説得材料となりました。

まとめ:現場力と経営視点の両立が未来をつくる

経営層への新規研究開発提案は、「技術の新しさ」「現場でのリアルな課題」「会社全体に与えるインパクト」「数字で語るROI」「失敗時リスクと再提案の仕組み」――これら全てを盛り込む高度な論理構築力が求められます。
現場目線・サプライチェーン全体の発想と、経営層の“今”をつかむ情報感度を兼ね備えることで、提案は必ず前に進み始めます。

製造業こそが日本を支える“縁の下の力持ち”であり、現場から変革を起こせる知恵と勇気こそが、未来の競争力に他なりません。
現場で培った経験とネットワークを、しなやかに“ラテラルシンキング”で結び直し、ぜひ貴方の会社でも新たな研究開発テーマを実現してください。

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