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コンプレッサーで使う防振ゴム部材の成形と劣化問題

目次
はじめに:コンプレッサーと防振ゴムの現場的価値
コンプレッサーは、現代の製造業において不可欠な設備のひとつです。
空気圧設備の動力源、冷却ラインの中核部材、またロボット技術や搬送システムなど――その利用範囲は広範囲に及びます。
そんなコンプレッサーの安定稼働を支える裏方のひとつが、防振ゴムです。
単なる「脇役」と思われがちですが、防振ゴムの品質や状態次第で装置全体のパフォーマンスや寿命が大きく左右されます。
この記事では、防振ゴム部材の成形方法と劣化問題について、昭和の現場から令和の現場へと進化を続ける製造業現場のリアリズムと知見に基づき、詳しく解説します。
バイヤーやサプライヤーはもちろん、製造業で現場力向上を目指す皆さまに役立つ内容としてお届けします。
防振ゴムが果たすコンプレッサーの“縁の下”の役割
工場現場に導入されているエアーコンプレッサーは、稼働時に大きな振動や騒音を発生します。
この振動が床や周辺機器に伝播すれば、「設備損傷」や「騒音クレーム」を招くだけでなく、繊細な精密機器の誤作動まで引き起こしかねません。
ここで防振ゴムが果たすのは、主に以下のような役割です。
- 運転時の振動を緩衝・減衰させて本体を保護する
- 機械基礎や床への振動伝播を抑制し、騒音問題のリスクを低減する
- 据え付け調整時のレベリング誤差を吸収し、設置の容易化に貢献する
これらの要素は、製造現場の“安定稼働・ヒトと環境への配慮・長寿命化”といったSDGs的視点でも極めて重要です。
防振ゴム部材の主な成形方法
防振ゴムは単なる「ゴムの塊」ではありません。
現代の製造現場で使われている防振ゴム部材は、設置場所や荷重・圧力条件、温湿度、耐薬品性など――さまざまな要求性能に応じて最適化されています。
代表的な成形方法は、以下の通りです。
コンプレッション成形
もっとも汎用性が高く古くから存在するのが、コンプレッション成形です。
加硫ゴムを金型に入れて加圧・加熱し、目標形状に固める方式です。
この手法は製品ごとの形状設計の自由度が高く、少量多品種・カスタム品にも対応できます。
一方で、肉厚ムラや離型時のバリなどの品質課題も残りやすい傾向があります。
インジェクション成形
大量生産や精密形状に向くのが、インジェクション(射出)成形です。
加硫前の樹脂状ゴムを射出機で金型内に流し、圧力と熱で短時間に成形・加硫します。
流動性の良い配合と設備が要求されますが、寸法精度や量産性が格段に高まることが特徴です。
トランスファー成形
コンプレッションとインジェクションの中間的な方式が、トランスファー成形です。
ゴム材料を加熱シリンダで軟化させ、金型のキャビティへと圧送し加硫成形します。
複雑な形状や金属とのインサート成形に対応でき、付加価値の高い部品に適しています。
ゴム材料の違い――要求性能にどう対応するか
防振ゴム部材は、用途・場所に応じてさまざまなゴム材料を使い分けます。
代表的な材料は下記の通りです。
- 天然ゴム(NR)
- クロロプレンゴム(CR)
- ニトリルゴム(NBR)
- エチレンプロピレンゴム(EPDM)
- シリコンゴム(Si)
- フッ素ゴム(FKM)など
それぞれの特性やコストを現場目線で整理すると、以下の通りです。
| 材料 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 天然ゴム | 防振性・柔軟性が高いが、耐候性・耐油性△ | 一般産業機械の防振部品 |
| クロロプレン | 耐候・耐熱・耐油性、コストバランス良 | 屋外設備、やや高付加価値品 |
| ニトリル | 耐油・耐摩耗に強い、コストパフォーマンス良 | 油圧機器や自動車系コンプレッサー |
| EPDM | 耐オゾン・耐候性に非常に優れる | 屋外、ソーラーや水回り部材 |
| シリコン・フッ素 | 高温・耐薬品性、特殊環境向け | 食品ラインや医療機器 |
こうした「設計段階での材料選定」は、そのまま劣化症状の予防レベルを左右します。
安易なコスト削減は、必ず現場でのトラブルや寿命短縮という形で跳ね返ってきます。
具体例で知る:防振ゴム部材の劣化とそのサイン
では、実際の現場で見かける劣化トラブルにはどのようなものがあるのでしょうか。
長年の現場経験から、典型的な症状とそのサインを整理します。
ひび割れ・硬化
・主因:加硫時の配合バランス不良、経年劣化(紫外線・酸化)、過酷な温湿度環境
・症状:ゴム表面のひび、触感の硬化、割れや膨れ
永久変形・座屈
・主因:設計荷重オーバー、仕様外の応力集中、材料選定ミス
・症状:座金・固定具とゴム間のつぶれ・ヘタリ、寸法ズレ、共振音増大
脱落・接着不良
・主因:金型・インサート成形時の接合不良、振動過多
・症状:部品ズレ、ゴムが浮いている、最終的には本体動揺
加水分解・薬品劣化
・主因:凝縮水や薬品への長期接触、材料選定ミス
・症状:表面ソフト化、粉吹き、ベタつきなど
これらの劣化症状はいずれも、目で見てサインがつかめることが多いです。
しかし、忙しい現場では「正常動作していれば見逃しがち」なのが現実です。
よくある“あるある”――防振ゴム部材の保守管理の落とし穴
現場の「保守点検あるある」としては、以下のようなものがあります。
- 日々の点検は機械本体優先、消耗品(ゴム)は“つい二の次”になる
- 設備メンテの請負先が変わるごとに部材のグレードや構成がバラバラになる
- 「他の工場と同じ型番」で流用するが、設置環境の違いから早期劣化する
- “止まるまで使う”という「昭和式ラン・トゥ・フェイル運用」から抜け出せず、突発停止を招く
根本要因は「本来は設計・購買・現場保守が一体化し、PDCAサイクルで見直すべきなのに、縦割りで連携不十分」という製造業独特の組織風土にあります。
こうした現場課題と向き合うことが、「設備稼働率の真の底上げ」に直結します。
昭和的業界慣習を打破したい:バイヤー×サプライヤーの意識改革
これまで多くの現場を見てきた立場から言えることは、「防振ゴムに関する信念の共有」が非常に重要だということです。
具体的には――
- 「まずコストダウンありき」ではなく、「適材適所の長寿命化」が全体最適につながる
- バイヤー側は「部材・原材料の理解」まで踏み込み、耐用年数や条件を数値で管理する
- サプライヤー側も「現場設置環境」や「運用実態」をヒアリングし、真の改善提案を惜しまない
たとえば、振動荷重や設置面の材質、設置環境(屋外/屋内、薬品等)などの“現場情報”を加味し、ただ「安い国内汎用品」で済ませるのではなく、「欧州規格の耐候グレード」「インサート構造の二重成形」など、費用対効果を重視した新たな選択肢も検討します。
現場・現物・現実:これからのPDCAとIoT活用
近年、保守点検や品質管理もIoTやセンシング技術の発達で大きく変わりつつあります。
振動・温度センサを活用して、劣化ゴムの早期発見や保守タイミングの最適化を進めている工場も増えました。
バイヤーや設計部門が“現場データ”に基づき材料や仕様、保全サイクルを見直す取り組みも進行中です。
こうした「データと現場目線の両立」こそ、昭和から令和へと価値観を転換させるカギといえるでしょう。
まとめ:防振ゴムの価値を最大化する“現場起点の調達思想”
コンプレッサーの防振ゴム部材は、シンプルながら設備全体の信頼性・稼働率を根本から支える重要なパーツです。
設計・材料選定・成形方法・保守管理――そのすべてが複合的に絡み合い、現場の成果に反映されます。
アナログな縦割り風土から、現場とバイヤー・サプライヤーが対話しながら「真の現場最適」を目指す、そんな調達戦略が今後ますます重要になるはずです。
現場力の底上げとサスティナブルな調達を実現するため、読者の皆様にはぜひ、防振ゴムという“小さな縁の下の力持ち”にも光を当て、その真価を見直していただければ幸いです。
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