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投稿日:2025年6月9日

ゴム材料特性の基礎と環境劣化対策および部品・製品開発への適切な活用法・事例

ゴム材料特性の基礎を理解する

なぜ今、「ゴム材料」なのか?

製造業、とくに自動車、電機、精密機器、食品、医薬、建設業界では、ゴム材料へのニーズが年々高まっています。
それは設計自由度の高さ、コスト競争力、軽量性、耐薬品性など、様々なメリットが求められるようになったからです。
しかし一方で、ゴム特有の制約や環境劣化リスク、アナログ業界ゆえの「昭和の常識」が残り、適切な材料選定や最新トレンドの共有が進みづらい、という課題も根強く存在しています。

本記事は、長年現場で培った知見をもとに、「ゴム材料の基礎特性」と「環境劣化対策」、そして「部品・製品開発への実践的な活用事例」に分けて、現場目線で分かりやすく解説します。

ゴムとは何か?基本の定義

ゴムは「エラストマー」とも呼ばれ、高分子(ポリマー)がランダムに絡み合い、外力で変形しても元に戻る「弾性」を持つ材料です。
大きく天然ゴムと合成ゴム(NBR、EPDM、シリコン、フッ素ゴムなど)に分けられ、用途に応じて無数の種類と配合処方があります。

ゴムの代表的な特性は、以下の通りです。

・伸縮性・弾力性
・耐振動・耐衝撃性
・絶縁性
・気密性・水密性
・耐薬品性
・加工性(押し出し、射出、加硫成型 ほか)

これらは金属や樹脂にはない独自の強みですが、同時に「熱に弱い」「紫外線やオゾンで劣化しやすい」などのデメリットがあります。

主要合成ゴムと特徴・使い分け

主要ゴム材料の種類と適用事例

業界の現場では、設計者やバイヤーが「どのゴムがどの用途に適しているか」を正しく知っていることが重要です。
ですが、意外にも「前任からの踏襲」や「取引先の言いなり型調達」が多く、配合内容や物性の深掘り検討が足りない企業も多く見受けられます。

以下、代表的なゴム素材の特徴について簡単に整理します。

・NBR(ニトリルゴム):耐油性・耐摩耗性に優れる。自動車のOリング、パッキン、燃料チューブに最適。
・EPDM(エチレンプロピレンゴム):耐候性、耐オゾン性、耐熱性が高い。自動車のウェザーストリップや配線保護など。
・シリコンゴム:耐熱性、耐寒性、電気絶縁性が高い。食品・医療分野や電子部品のシーリング用。
・フッ素ゴム(FKM):耐熱性、耐薬品性に優れ、溶剤・酸にも強い。自動車エンジン周辺、化学プラント配管部品。
・CR(クロロプレンゴム):耐油性、耐熱老化性。接着剤やゴムホース、コンベヤベルトなど。
・天然ゴム(NR):引張強度、伸びが高いが、耐オゾン・耐油性は弱い。タイヤや振動機構の防振ゴムなど。

設計段階で「最優先すべき特性」と「コストバランス」「加工・納期面まで」念入りに評価し、最適選定を現場主導で行うことが肝要です。

設計開発段階での“盲点”

アナログな製造現場では「既存図面の流用」や「カタログスペックだけで素材選定」をよく見かけます。
これは緊急対応や原価低減で早期判断を迫られるときの“業界病”ですが、ゴム材料は配合一つで性能が劇的に変わるため、安易な流用は致命的な不具合につながりやすいです。

自社事例として、NBRを使っていた油圧ワッシャー部品で、冬季の低温環境下に割れ・漏洩事故が多発したことがあります。
このとき、初めてJISスペックだけでなく「使用温度域」「紫外線曝露有無」「周囲流体」といった実用環境まで全数値化し、EPDMやHNBRへの置き換え検討を全社で徹底しました。
現場からの“使ってみて分かった”フィードバックが設計刷新に直結した典型例でした。

環境劣化対策と長寿命化への技工

ゴム材料の典型的な劣化要因

ゴム材料最大の弱点は、「経年劣化」すなわち、時間の経過や環境変化による物性の低下です。
主な劣化要因と、現場での見極めポイントは以下の通りです。

・熱(高温):構造が崩れて柔軟性・強度を喪失する「熱老化」
・紫外線/オゾン:表面から微細なヒビ割れが進む「オゾンクラック」
・薬品/オイル:吸収して膨潤、物性が激変
・酸素/湿度:酸化劣化
・機械的ストレス:繰返し変形・摩擦での磨耗や表面硬化

現場では「何年持てばいいか(設計寿命)」、「日常的にどんな環境で使われるか」「どんな失敗が許されないか」を数値目標化し、事前に許容範囲や兆候を客観評価できる体制を作る必要があります。

環境対策技術・トレンド

近年では、劣化対策として配合技術や後処理の進化が進んでいます。
例えば、

・「紫外線安定剤・耐オゾンワックス・防腐剤」の添加
・「二次加硫」により耐熱・耐油・耐水・強度UP
・多層コーティングや含侵法(シリコンコートなど)
・樹脂・金属との異種材料一体化(複合成形)
・RoHS/環境規制対応の無害化処理

これらは単なる技術論だけでなく、バイヤーやサプライヤーがコストおよび供給リスクとどう“現場すり合わせ”できるかが、真の競争力となっています。

現場失敗事例と回避ポイント

工場の冷却装置で使われるゴムパッキン部では、冷水の塩素成分やオゾンで1年足らずで硬化・ヒビ割れが起こり、設備ダウンの要因になった経験がありました。
この時、現場保全スタッフと品質管理部門が連携し、“直接交換”から“材質変更+保護コーティング”への再設計を決断。

また日々の「現場点検・触診チェック」や「定期的な縮み/膨潤記録」が、未然防止に圧倒的な威力をもたらしました。

データに頼りすぎず、自分たちで“手で触る・現場で観る”ことで見えてくるリスクを決して軽視しない、これが昭和〜令和のものづくり現場で必要不可欠です。

部品・製品開発での実践的な活用法と事例

バイヤーの視点:調達先との新たな連携ポイント

グローバルサプライチェーンが複雑化する中、ゴム材料では「安定調達」「品質平準化」「持続可能性」が問われます。
バイヤーがサプライヤーに求めたいのは、単なる納期厳守・コストだけでなく、

・自社製品の最終用途に即した提案力
・トレーサビリティ(ロット管理、素材由来の説明責任)
・小ロット多品種へのフレキシブル対応
・“自社内の実験データ”をもとにした共同開発力

などです。

例えば、某自動車メーカーで“電動車向け新規パッキン”を開発したときは、設計部・調達部門・サプライヤーの三者ワーキンググループを立上げ、「温度サイクルテスト」「燃料・潤滑油・洗浄剤の組合せ実験」などを半年かけて実施。
結果、単一材料の“調達コスト至上主義”を脱却し、本質的な“長寿命・省メンテ材料”の共同開発を達成できました。

サプライヤーの視点:現場が求める+αとは

ゴムサプライヤーが現場で高く評価されるには、「材料データの透明性」と「“一歩先”の処方提案力」が肝心です。

現場では、たとえば
「HD(硬度)65指定だが、長期的に柔軟性を維持できる添加物」
「溶剤に2種連続で曝されるが、短期膨潤と長期劣化のバランスは?」
といった細かな悩みが常に発生します。

このとき、「問題事例に即した試験片を用意して、3〜6カ月実環境で一緒に観察しよう」と、必ず現場視点でアプローチできるサプライヤーが、今後もっとも生き残れるパートナーとなります。

他業界・複合化ニーズへの横展開

近年の事例では、
・電子部品メーカーが「低誘電性ゴム」と「高耐熱シリコン」をハイブリッドし、5Gアンテナ部品に応用
・食品機械メーカーが抗菌性・耐熱性UPの新規ゴム配合を活用し、洗浄工程の生産性向上を達成
など、「従来では考えもしなかった用途」への水平展開が進んでいます。

材料の多層化・複合化、サーキュラーエコノミー(再生ゴム・リサイクル材利用)といった最新潮流も、現場ベースで“まずやってみる・早く失敗して、より良いものを創る”というアナログ的泥臭さが、結局イノベーションの母体であることを強調したいと思います。

まとめ:ゴム材料の適正活用こそ、ものづくり進化への鍵

ゴム材料の基礎特性と環境劣化対策、製品・部品開発での実用ノウハウは、今まさに現場力と知恵の結晶として問われています。
設計・調達・サプライヤー、全ての立場で「なぜこの材料を選ぶのか」「どうすれば持続的に高品質供給が可能か」を深く考え抜き、業界の慣習や昭和的固定観念から一歩飛び出す“真の連携・対話・チャレンジ”が時代を切り拓くと確信しています。

日々の現場での気付き、失敗・修正の積み重ねこそが、次世代のものづくりを強くするとともに、サステナブルで競争力ある日本の製造業を実現する要となります。

製造業・調達・サプライヤーのいずれの立場でも、ぜひ本記事を自社・自分の現場に重ね、明日からの改善や新たな挑戦のヒントとしてご活用ください。

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