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投稿日:2025年6月9日

感覚情報を活用したインタフェース設計の基礎と応用

はじめに:製造業におけるインタフェース設計の重要性

インタフェース設計は、IT業界だけの話ではありません。
製造業においても、生産現場の機械操作盤や装置の管理パネル、検査装置、そして購買管理システムなど、あらゆる場面で「人」と「機械」の接点がインタフェースです。
近年、労働人口減少や熟練工不足により、現場では『誰でも使える』『わかりやすい』『間違いにくい』インタフェースの需要がますます高まっています。
このような背景のなか、感覚情報をうまく活用したインタフェース設計が現場改善・省力化・ミス低減・生産効率アップに直結しています。

本稿では、現場目線で培ってきた経験を基に、感覚情報(五感)を最大限に活用したインタフェース設計の基礎から応用まで、具体的な事例や業界動向を交えて解説します。
これからバイヤーや設計職を目指す方、あるいはサプライヤーの立場で調達先の考えや最新の業界事情を知りたい方にも役立つ内容となっています。

そもそも「感覚情報」とはなにか

感覚情報とは、人間が五感(視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚)によって得る情報のことです。
製造現場でインタフェースを設計する際、主に用いられてきたのは視覚と触覚です。
具体的には、操作盤の色分けや、ボタンの形状・大きさ・感触、警告灯やサウンドアラーム、画面表示などです。

しかし、「なぜこの色は赤なのか」「この音はなぜ警報として伝わるのか」「このボタンの押し心地は標準なのか」など、実は現場ごとや会社ごと、さらには地域によっても“感覚情報”の解釈・標準が異なっていました。

昭和から続くアナログ的運用の現在地

特に昭和時代に設計された設備や装置は、熟練者の“経験と勘”に強く依拠しています。
例えば赤ランプの使い方ひとつとっても、警報・停止・注意のいずれにも使われている現場がありました。
また、押しボタンの形や配置、ラベルの書き方も現場独自の「慣習知」に左右され、事故やミスの温床となっていた例も少なくありません。

デジタル化・自動化が進む今でも、現場には“感覚情報の設計”がブラックボックス化しやすい事情があります。
ここを見直し、標準化・可視化・改善していくことが、今後の工場運営や設備投資、調達購買活動でも大きなテーマになります。

現場目線で考える感覚情報のインタフェース設計の基礎

視覚情報の設計:色・形・配置の原則

製造現場で最も多用されるのが「視覚情報」です。
例えば、アンドン(表示灯)や非常停止ボタン、各種スイッチ、タッチパネルの画面設計では、次のような原則が重要です。

– 赤は“即座に停止”や“危険”
– 黄は“注意”や“準備”
– 緑は“正常”や“問題なし”

これはIEC(国際電気標準会議)やJIS規格でも標準化されています。
しかし、昭和時代の独自設計が残っている現場では「赤と緑が逆に使われている」「黄とオレンジの使い分けが曖昧」などもあります。
標準化できる部分は積極的に切り替え、現場教育も並行して進めることが不可欠です。

形や配置については、人間工学(エルゴノミクス)を加味しましょう。
例えば、緊急停止ボタンは「右手で押しやすい高い位置」へ、「操作頻度の高いボタンは大きく・もっとも自然に手が届く場所へ」という原則があります。
また、高齢者や外国人など、多種多様な人が使うことを想定し、ピクトグラムや多言語表記、レイアウトの工夫も現場では求められています。

聴覚情報:現場ノイズ環境への適応

機械音や会話、リフト車の走行音など、現場には多種多様な騒音があります。
そのなかで警報やアラームを「確実に伝える」ためには、周波数や音量、パターンの設計が重要になります。
高音域の「ピーピーピー」は金属加工現場ではかき消されやすく、逆に低音の「ブザー音」は大規模な組立工場では有効です。

また、人間は“特徴的な音”には反応しやすいですが“単調な音”には順応してしまい、聞き逃すこともあります。
「同じアラームを何度も使いまわさない」「異なる警告のときは音を変える」などの工夫も、現場での実践例です。
最近では、無線式の個人アラート端末や腕時計型バイブレータとの連動なども進んでいます。

触覚情報:直感で伝わる“違和感”の仕掛け

押しボタンやレバーの“重さ”“クリック感”も、重要な感覚インタフェースです。
例えば非常停止ボタンであれば「明確な押し込み」「ロック感」が必要です。
ミス防止のため、形状を他のボタンと大きく変えたり、通常操作のボタンには程よいクリック感を持たせたりすることで、直感的な誤操作防止につながります。

また最近では、タッチパネルの“バイブレーション”も新たな感覚情報の担い手です。
操作時にわずかに「ブルッ」と震えるだけで、視覚的・聴覚的情報より“手応え”として記憶されやすく、誰でも迷わず使えるインタフェース設計が進んでいます。

発展的応用:デジタル時代の感覚インタフェース最前線

現場の“暗黙知”を可視化・標準化する

昭和的現場では、“熟練者だから使いこなせる”暗黙知に頼ることが多く、ミスや事故の温床となっていました。
現在多くの現場で実践されているのが、“誰もがすぐ理解できる・再現できるインタフェース”への転換です。

例えば、作業指示画面で「右手で青のハンドルを掴み、90度回す」とアニメや写真で明確に示す。
特定手順を外れる操作には「押しボタン自体が点滅・操作不能」になるように設計するなども有効です。
こうした改善は“見える化”“標準化”を推進し、工程間のコミュニケーション改善と教育の省力化につながります。

サプライヤーとバイヤー間での感覚インタフェースの折衝ポイント

調達購買業務においては、これまで「カタログスペック」や「コスト」のみが重視されがちでした。
しかし昨今は、“現場で誰でも安全・確実に操作できるか”“事故防止・作業ミス低減につながるか”といった『感覚情報品質』がプロキュアメント(調達)の新基準となっています。

バイヤー(発注側)は、サプライヤー(提供側)に対して「現場での実際の使われ方」や「使用環境独自の要件」「作業員多国籍化時代のわかりやすさ」まで具体的に伝えるべきです。
サプライヤー側も、納入前の現場テストやユーザー評価型サンプル提供、小回りの利くインタフェース変更対応が今後ますます強く求められるでしょう。

この“五感品質”の担保によって、従来の「安いが使いにくい」「ハイテクだが現場になじまない」といったトラブル削減につながります。

AI・IoT・センシング技術と感覚情報の統合

AIやIoTの進化により、これまでは“人の勘”に頼っていた感覚情報の一部が、センサーや画像解析で数値化できる時代に入りました。
例えば、締め付けトルクのセンシングによる“クリック感”の自動モニタリング、カメラ画像+AI判定での“正常・異常”表示、装置振動・騒音の自動監視などが進んでいます。

これらの技術を「人間の五感」と並列に配置し、“AIと人協働”の新たなインタフェース開発を進めることが、これからの製造現場の大きな進化軸となります。

まとめ:今こそ感覚情報をベースにしたインタフェース設計を標準装備に

感覚情報を活用したインタフェース設計は、個々の現場やプロダクトの「安全・安心・効率・快適」を実現する、基礎にして最重要な現場技術です。
バイヤー、サプライヤー、設計者すべてが「五感を通じ何が伝わるのか」「誰のためのインタフェースなのか」「現場での定着まで設計できているのか」と問い直す姿勢が求められます。

昭和的な“慣習知”を引きずりつつも、現場の現実とテクノロジーの発展を柔軟に取り入れながら、“感覚品質”を担保したインタフェースを標準化・明文化していくこと。
これが製造業の発展や、あらゆる現場の安全・省力化・人材多様化への解となるのです。

ぜひ、明日からの現場改善・調達活動・新製品開発に、感覚情報を活かしたインタフェース設計を活用してください。

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