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調達KPIが現場実態と乖離していることへの危機感

目次
調達KPIが現場実態と乖離していることへの危機感
はじめに——KPIとは何なのか?
製造業における調達部門で多用されるKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)は、組織の目標達成のために設定された数値的な指標です。
「コストダウン目標」「納期遵守率」「不良率」などが典型例です。
KPIは経営層や本部機能が大きなビジョンを持ちつつ、現場を統制・管理する目的で広く活用されています。
しかし、現場で実際にモノを動かし、生産計画を回し、苦労しながら高品質な製品を責任持って納めている立場から、近年このKPIが“本来の役割を果たしていない”、“現場の実態を全く反映していない”と感じる場面が増えています。
本記事では、成熟産業である日本の製造業を取り巻く現実と、調達部門でKPIがいかに現場と乖離しやすいか、その背景、そして経営・調達・サプライヤーそれぞれが気付くべき真の課題について、長年の現場経験を根拠に深掘りします。
調達KPIと現場実態の間に横たわる“深い溝”
なぜ、現場実感とKPIがズレるのか?
工場の現場では、「KPIで見えるもの」以外に、目に見えない努力や背景事情が山のように存在します。
たとえば、
– サプライヤーがギリギリの労力で部品を間に合わせてくれたこと
– 調達担当が各方面に頭を下げて融通してもらった臨時便
– 雨の日にフォークリフトで何往復も積み替えて納期を守った現場スタッフ
こうした「泥臭い努力」や、想定外のトラブルを乗り越えるための臨機応変な動きは、KPI上には一切表示されません。
一方で、KPI上は「納期遵守率95%」や「コストダウン2%」など、“どこの会社でもありそうな無難な数値”しか現れない。
現場の実態を覆い隠し、優秀なスタッフの真の貢献や日々の気付きが、経営者や他部門には伝わらなくなってしまいます。
KPIが現場を縛る「足かせ」になっていないか
過剰なKPI至上主義によって、現場スタッフが「数字合わせ」や「帳尻合わせ」に終始し、本質的な改善や顧客・サプライヤーとの信頼関係が後回しになっている工場は少なくありません。
たとえば、調達部門でよく設定される「コストダウン額」や「購買単価の下落率」。
これが、定量的なKPI目標として現場に降りてきた途端、“サプライヤーにただ安くしろ”と圧力をかけるだけの担当者や、ありえない発注ロットに無理矢理まとめて一時的な数字達成を図る例——これが決して珍しくないのです。
結果として、
– 逆に品質不良や納期遅延が増える
– サプライヤーが疲弊し、重要部品の安定供給が危うくなる
– 生産現場から「調達部門が現場をわかっていない」という不満が噴出
こうした「KPIのためのKPI化現象」が拡大しています。
アナログな風土と“昭和マインド”が残る業界構造
とりわけ中堅以下の日本の製造業では、「紙の注文書」「電話・FAXでの調整」「現場の経験と勘に頼るオペレーション」が根強く残っている場合が多いです。
このアナログなオペレーションが完全に消える兆しは、2024年現在でもまったく感じられません。
むしろ、デジタルKPIを導入した結果、「数字だけが先行し、現場実態の肌感覚やヒューマンタッチな対応が置いてけぼり」になるケースが目立っています。
このギャップこそ、調達と現場をいま分断している最大の要因と言えるでしょう。
なぜ、KPIがずれるのか?その本質的な理由
ミクロとマクロの視点の乖離
KPIは本来、会社全体の業績を最適化する“マクロ”の視点で設計されています。
しかし、調達部や購買担当は日々、“ミクロ”なトラブルや個別プロジェクトへの対応に追われています。
– 急な設計変更で調達先や納期が毎日のように変動する
– 新規案件でサプライヤー調整が必要、だが現行KPIでは動けない
– 生産ラインの不具合や天候不順、外注工場のストライキ…現場単位の問題
こうした「現場のリアル課題」は、定量化できない場合が多いため、KPIには表れません。
サプライチェーン全体最適とKPIの個別最適化
調達業務はもはや単なる「発注」や「値段交渉」にとどまりません。
原材料高騰や地政学リスク、自然災害などを背景に、サプライチェーン全体の打たれ強さ(レジリエンス)が問われる時代です。
ところが、多くの場合設定されるKPIは「部門個別最適」「部分最適」になりがちです。
調達部門が“コストダウン”“納期短縮”だけで評価され、最終的な製品品質や顧客満足度に及ぼす総合的な指標(サプライチェーン全体最適KPI)は設定されていません。
これが、「調達部門だけKPI達成、現場では炎上・赤字・品質クレーム」という本末転倒な事態を招いています。
バイヤー/サプライヤーの間にある「情報と感情の壁」
調達とサプライヤーとの間のコミュニケーションも、KPI偏重だと表面的になりがちです。
本音の部分——サプライヤーが「困っていること」「ギリギリで間に合わせている背景」は数字化不可です。
サプライヤーの立場になると、「現場の実態をもっと分かってほしい」「ただ安くしろではなく、お互いに継続的にメリットがある提案がしたい」という声が非常に多く聞かれます。
実は調達部門にしても、「KPIを上から押し付けられているという窮屈さ」「現場との意思疎通不足」への悩みは根強いのです。
KPIの見直しに向けた新たな地平線
KPI“だけ”に頼らない評価指標が必要
20年を越える現場経験から断言できますが、本当に現場に即した調達評価を実現するには、従来KPIだけでは不十分です。
– KPI未達でも現場での「創意工夫」や「納期貢献」を定性的に伝達する場
– サプライヤーから「現場実態」の声を吸い上げる仕組み
– 一時的な数字よりも「5年後10年後のサプライヤーとの信頼性維持」を評価軸に入れる
こうした取り組みが不可欠です。
調達KPIに“ヒューマンファクター”と“リスク管理”指標を組み込む
これまでのKPIは、「コスト」「納期」「不良品率」などの一過性数値が中心でした。
これからは、
– サプライヤー育成・支援活動の実績
– 取引先多様化や代替調達ルートの確保率
– トラブル時の初動対応力や現場の対応速度
– 社内外コミュニケーションの質
こうした“ヒューマンファクター”や“リスク管理”の指標もバランス良く導入するべきです。
特に、「現場実態をサプライヤーと一緒に把握し、双方向で課題解決する」こと自体がKPIとなるような、組織全体の風土改革が求められています。
評価は360度へ、“現場”から経営層へ声を届ける仕組みを
現場の知恵や実体験を経営や本部、調達部門へ“逆流”させる仕組みが重要です。
– 毎月の重要KPI会議に、現場代表やサプライヤーの生の声を共有
– 単なるKPI数字の羅列でなく、「納期順守にいたる背景」「短納期策の失敗事例」など学びを共有
– 優秀現場スタッフや、ベストサプライヤーへの正式な表彰
こうした“人間の顔が見える”仕組みが、KPIの意味をよりリアルなものとし、会社全体の競争力向上につながります。
まとめ——KPIがあなたの現場を救うのか、殺すのか?
製造業のバイヤーや調達担当として、またはサプライヤーや生産現場として、「KPIと現場実態の乖離」は日常の課題です。
たしかに、KPIは業務評価・改善管理に欠かせない道具です。
しかし、現場実態とズレて運用した結果、現場のやる気を削ぎ、供給網のレジリエンスや日本のものづくり全体力をむしろ低下させているとしたら、もはや“危機的状況”といえます。
経営層・現場・調達担当・サプライヤーそれぞれが“本質的な現場把握” “KPIだけに頼らない評価軸”への眼差しを強め、これからの製造業の新たな地平線を、現場目線で切り拓いていくべきです。
調達業務に携わる皆さん、ぜひ一度、ご自分の現場がKPIとどれほど乖離していないかを点検してみてください。
時代は変わりますが、現場の力は数字だけでは計れないことを、忘れてはいけません。
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