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技術者・研究者のための「伝わる技術英語」の実践テクニックとライティング能力の磨き方

目次
はじめに:現場で求められる「伝わる技術英語」とは
製造業のグローバル化が進む現代において、「技術英語」は単なる語学力ではありません。
現場での図面の受け渡しや、調達部門と海外サプライヤー間の仕様確認。
さらにはトラブル発生時の品質異常報告書作成や、研究成果の国際発表。
こうしたシーンで求められるのは、「専門的な内容を、相手の知識レベルや目的に合わせて、正確かつ簡潔に伝える」能力です。
昭和の価値観やアナログな慣習が色濃く残る日本の製造業界でも、「伝わる技術英語」の重要性が、今まさに浮き彫りになっています。
この記事では、現場で本当に役立つ「伝わる技術英語」の具体的な習得方法と、技術者・研究者が自らのライティング力を磨くための実践的テクニックを、20年以上の現場経験ならではの視点で徹底解説します。
よくある失敗:なぜ技術英語が「伝わらない」のか
直訳によるミスコミュニケーション
日本人技術者の多くが犯しやすい典型例が、「日本語を英語にただ置き換える」行為です。
たとえば「検査表」を Inspection Sheet と訳しても、海外の現地技術者には何を指しているのか伝わりません。
むしろ検査基準書(Inspection Standard)や合格判定表(Acceptance Criteria List)といった本来の機能にフォーカスする必要があります。
業界用語とカタカナ英語の罠
サプライチェーン、アロケーション、バッファーなど、社内で浸透しているカタカナ英語は、実際の現場英語と一致していないことが珍しくありません。
このギャップがコミュニケーションエラーの原因となります。
背景や目的を説明しない文章
日本の現場では「察してほしい」「行間を読んでほしい」文化が根強く残っています。
しかし海外のバイヤーやサプライヤーは、「前提条件」「目的」「求めるアクション」がないメールや報告書には対応しきれません。
伝わる技術英語のライティング基本ルール
1. 5W1Hで構成する
Who(誰が)、What(何を)、When(いつ)、Where(どこで)、Why(なぜ)、How(どうやって)。
現場では特にWhy(なぜ)とWhat(何を)が抜けやすいので注意が必要です。
英語でもまず「伝えたい事実」と「あなたがしてほしい行動(Action)」を明確にしましょう。
2. 動詞を活かす
日本語由来の文章は、主語や動詞が曖昧になりがちです。
・A test was carried out.(テストは実施されました)
・We carried out the A test.(私たちがAテストを実施しました)
後者が「責任」や「アクション」を明確にし、誤解を防ぎます。
3. 短く区切る
一文が長くなる傾向の日本語文書ですが、英語では一文一意を基本にします。
複雑な条件や理由説明も、箇条書きやIn order to…, Because…で分解しましょう。
4. 現場の数字と事実で根拠を示す
「多いと思われます」「たぶん正しい」などの曖昧語を避け、「不良率:0.2%(10,000個中20個)」のように具体的な数値で示すことで、信頼される技術英語となります。
実践テクニック1:技術報告書・仕様書作成のポイント
標準フォーマットを活用する
ISOやIECで定着している技術標準フォーマットを習得しましょう。
「Scope(適用範囲)」→「Definition(用語定義)」→「Requirements(要求事項)」→「Procedure(手順)」→「Result(結果)」の流れが国際的に理解されやすい構成です。
表と図を多用する
言葉で説明しきれない構造や手順は説明図やフローチャートを使うと、国を超えて伝わりやすくなります。
「See Figure 1.」「Refer to Table 2.」など、簡潔な指示文を添えます。
やってはいけない「日本的あいまい表現」
・It seems that…(~のようだ)
・Maybe…(おそらく)
特に品質保証書や不具合報告書では、こちらの事実・意見・推定を明確に切り分けて記述しましょう。
実践テクニック2:バイヤー・サプライヤー間メッセージの極意
交渉や依頼は「理由」と「目的」を明言する
「Could you provide the material specification for product XX, in order to complete our process validation by May 15th?」
目的(プロセス検証のため)・期限(5月15日まで)をはっきり書くことで、要求が正しく伝わります。
背景情報の共有でトラブルを未然防止
不良や納期遅延の報告には「なぜ起きたか」の背景・状況を丁寧に添えることで、「他責」に見えやすい文章が「チームで解決すべき課題」に変わります。
可視化することで文化の違いを乗り越える
メールやチャットでのやりとりだけでは「前提認識のズレ」が発生しがちです。
ExcelやPowerPointで簡単な工程図・タイムチャート・イメージ写真を添付することで、解像度の高いやりとりが実現します。
実践テクニック3:上級者が実践する英語の「伝え方」
相手の知識レベルに合わせてアレンジ
海外サプライヤーに依頼する場合は、相手が高度な技術知識を持っているとは限りません。
英語のTechnical Level(技術レベル)を意識し、「専門用語は初出時に必ず定義」「必要に応じて説明を加える」配慮が重要です。
誤解防止のためのダブルチェック方法
やりとりの最後には「If my understanding is correct…」や「Could you please confirm if the following is accurate?」の一文を添え、相互認識を確認するフローを習慣にしましょう。
自社のルールや慣習を説明する勇気
日本独特の工程管理ルールや合否基準は、海外にそのまま通用しないケースが多々あります。
英語で「Our company standard requires…(当社基準では…を求めます)」と先に伝えることで、文化の壁を乗り越えた円滑な交渉が可能となります。
技術英語ライティング能力の磨き方
1. 実際の現場文書で添削・改善を繰り返す
完璧な英訳を最初から目指さず、まずは自分が過去に作成した「技術報告書」「検査成績表」「不良報告メール」などを英訳し、構成や表現のブラッシュアップを行います。
可能であれば、海外の同僚や取引先、またはAIツール(例:ChatGPT、DeepL Write)を使って客観的なフィードバックを得ると効果的です。
2. 標準テンプレートや”お決まりフレーズ”をストック
ビジネスシーンでは「定型フレーズの引き出し」が強力な武器となります。
以下のような表現は暗記しておくと即戦力となります。
・We would appreciate it if you could…
・In accordance with the attached specification…
・Please kindly confirm receipt by…
3. 英文の多読・音読でロジカル構成に慣れる
社内外の英文マニュアルや国際学会の論文、特許明細書など、多種多様な技術系文書を日々読み、音読することで、論理的な組み立てや英語らしいリズムを体得できます。
4. 現場で”使う”ことにこだわる
ライティング力向上に不可欠なのは「実際に伝えてみる」経験です。
日報、上司への報告、外注先への依頼メールなど、小さなアウトプットの機会を最大限活用しましょう。
業界動向:今こそ「伝わる技術英語」が必要な本当の理由
デジタル化推進とグローバル調達の拡大
製造業のデジタル変革(DX)、ERP・MESといったシステム導入、グローバル調達戦略の拡大。
これらの動きは、昭和的な国内完結モデルから、世界を相手にした情報共有・品質担保の時代への転換を加速させています。
人材流動化と多様なコミュニケーション手法
国内外の技術者・バイヤーがフレキシブルに出入りする現場では、「わかる人だけが分かればいい」時代は終わりました。
現場資料の英語化、日英バイリンガルプロセスの整備、「いつ誰が見ても理解できる」透明な情報伝達が求められています。
AI時代の到来と“ヒューマンファクター”の重要性
AI翻訳ツールの進化で、簡易な英訳はますます容易になっています。
しかし「現場ならではの一手先を読んだ工夫」「トラブル時の人間関係を和らげる配慮」「絶妙な合意形成の進め方」など、“ヒューマンファクター”に基づいた伝わる技術英語の価値は、むしろ高まっています。
まとめ:自分自身の「現場力」と「伝える力」を高めよう
「伝わる技術英語」は単なる英語力ではなく、状況判断力・論理構成力・相手理解と現場ならではの知見の積み重ねです。
アナログが強く残る日本のものづくり現場も、次の世代へバトンをつなげるためにグローバル標準の“伝え方”を学び直す必要があります。
バイヤーになりたい方、サプライヤーの立場で交渉力を高めたい方、現場を支える技術者の皆様。
日々の業務で今日から実践できるテクニックを一つずつ取り入れることで、製造業全体の競争力も大きく高まります。
自分の言葉で「伝わる技術英語」を磨き、もっと自由に、もっと豊かに、世界と対話していきましょう。
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