- お役立ち記事
- 導電ABSカーボンナノチューブ複合と5G基地局EMIシールド筐体
月間93,089名の
製造業ご担当者様が閲覧しています*
*2025年6月30日現在のGoogle Analyticsのデータより

導電ABSカーボンナノチューブ複合と5G基地局EMIシールド筐体

目次
導電ABSカーボンナノチューブ複合材料とは
導電ABSカーボンナノチューブ複合材料とは、絶縁性が高いABS樹脂にカーボンナノチューブ(Carbon Nanotube:CNT)を分散させて導電性能を与えた先進的なプラスチック材料です。
ABS樹脂は耐衝撃性や成形性に優れ、家電・自動車部品・事務機器筐体など幅広く利用されています。
ここに一層の新規性を加えるのが、ナノレベルの直径をもつカーボンナノチューブです。
CNTは非常に高い電気伝導性と機械強度をもち、
ごく微量を混ぜ込むだけでプラスチックに導電性を持たせることができます。
これにより、従来のABS樹脂では難しかった静電気対策や電磁波シールド(EMI Shield)機能を実現しやすくなります。
カーボンナノチューブの特徴
カーボンナノチューブは、グラファイトを筒状に丸めたような特殊構造の炭素材料です。
チューブ径はナノメートルオーダー、長さは数ミクロン〜数ミリメートル。
電子移動度や高強度さから“夢の新材料”とも呼ばれています。
CNTを樹脂に配合すると、繋がりあったCNTが電子の通り道「導電経路」を作ります。
高分子材料にわずか数パーセント加えるだけで、絶縁体から導電体・半導体までの制御が容易にできるのが大きなメリットです。
5G基地局などのEMIシールド筐体に求められる性能
現代の情報通信インフラ、特に5G(第5世代移動通信システム)の基盤機器では、性能をさらに向上させるための高品質なEMI(電磁波干渉)対策が求められます。
基地局やネットワーク機器の筐体におけるEMIシールドは
機器同士の誤作動防止や外部漏洩電波への対策として、
高度化・多機能化する通信インフラの“生命線”になっています。
5G時代のEMI対策の課題
従来のEMIシールドはアルミダイキャストや金属筐体が主流でした。
しかし、5G基地局の高密度・軽量・低コスト化要求の高まりや、アンテナ配置・小型化への対応などを受けて、
金属一辺倒から高性能樹脂素材への切り替えが急速に進んでいます。
また、5G通信はサブ6GHz帯域からミリ波(28GHzなど)と高周波化しており、
EMIシールド材への要求仕様も厳しくなりました。
特に、以下の観点が重要です。
– 高いシールド効果(高周波での減衰特性)
– 軽量化による施工性と設計自由度の向上
– 量産対応に優れた成形性・加工性
– 薄肉化、省スペース対応
– コストダウン、リサイクル性
導電ABSカーボンナノチューブ複合と従来素材の比較
導電ABSカーボンナノチューブ複合材料は
伝統的なABS樹脂や難燃グレード、さらにはカーボンブラック・金属フィラー配合樹脂、金属筐体と比べて、
様々な点で優位性があります。
素材ごとの比較ポイント
ABS樹脂単体では、電気をほとんど通しません。
従来はカーボンブラックや金属粉体を練り込むことで導電性ABSが作られてきましたが、導電性能や分散性、機械強度に限界がありました。
カーボンナノチューブ複合では、わずか数パーセントのCNTで10^2~10^4Ω/□の表面抵抗値(ESD、EMI対策に十分な導電性)が得られます。
しかも分散技術の進化により、強度や衝撃性・耐久性もABS本来のスペックが劣化しにくくなっています。
金属筐体と比較すれば、重量でおよそ半分以下、かつ低コスト・加工性も格段に向上します。
また導電格子の設計や一体成形も容易です。
実際の事例(5G基地局向けEMIシールド筐体応用)
NTTや世界的通信機器メーカーでは、5Gの小型基地局筐体に
CNT配合導電ABS部材の採用が進んでいます。
成形部品全体に均一な導電経路ができるため、全周囲に渡るシールド効果が得やすく、
後工程の金属メッキやアルミ箔貼付けが不要になりコストダウンにも直結しています。
製造・調達購買部門が押さえるべき導入ポイント
ここからは、現場で実際に導電ABSカーボンナノチューブ複合材料を検討・導入する立場の方のために
バイヤー視点・製造部門目線で留意点を掘り下げてみます。
1. 材料選定と物性のバランス
CNTの分散性による導電性のバラつき、諸物性(機械強度、難燃性、耐熱性など)とのバランス設計が鍵です。
安定した性能を発揮するには、優れた分散技術と大量生産ノウハウを持つ材料メーカー選定が重要です。
2. 加工性・製造現場への適合性
金属筐体や他の樹脂材料との金型・成形条件の違いは必ずチェックしましょう。
CNT配合量が増えるほど流動性に影響が出るため、インサート成形や薄肉成形に関する成形メーカーとのすり合わせも重要です。
3. コストとサプライヤー管理
CNTは高付加価値材料ゆえ価格が高い一方、
EMIメッキや複雑な二次加工・組立を減らすことで“トータルコストダウン”を実現できます。
また輸入CNTや材料配合ノウハウの国際競争も進んでいるため、将来の供給リスク・安定調達も事前に検討が必要です。
4. 5G・通信業界ならではの規格・認証
EMC・EMIの国際標準(IEC、FCCなど)や、自社でのシールド効果評価に合格する材料ロットの安定確保が必須です。
実験設備やサプライヤーの評価体制も見極めましょう。
サプライヤーマネジメントと今後の展望
製造業バイヤーにとっては、単なる“価格交渉”にとどまらない
サプライヤーマネジメント力がこれまで以上に問われます。
サプライヤーとバイヤー間の新しいパートナーシップ
CNT配合導電ABSなど先進材料は、分散・配合・混練・成形加工といった“工程ノウハウの複合体”です。
仕様変更やEMIシールド効果の見直しは、設計変更・材料選定・量産支援をサプライヤーと二人三脚で進める必要があります。
サプライヤーの技術提案力や、材料トラブル時・設変・立ち上げ時のフレキシブルな対応力
(現場に立ち入れるか、リードタイム短縮提案ができるかなど)が本当の競争力となります。
材料業界動向とアナログ現場の変革
昭和的な「型にはまった材料選定」「価格のみの一括比較」「現場加工職人頼りの成形条件」では、
これからの高機能素材調達・サプライチェーン競争に乗り遅れます。
AI材料設計やシミュレーション、グリーン材料や循環型経済(サーキュラーエコノミー)、カーボンフットプリント対応など、
5G時代以降の新しい価値軸が急速に台頭しています。
調達・購買が“現場感覚”と“最先端技術理解”を持ち、営業・設計との連携で全体最適を追求すること。
この複合力こそが21世紀日本の製造業復活のカギになります。
まとめ:現場感覚+新材料=日本の製造業競争力向上へ
導電ABSカーボンナノチューブ複合は、5G時代のEMIシールド課題を解決する革新的素材です。
従来の金属筐体から脱却し、“設計の自由度・軽さ・コスト・生産性”の複数条件を同時達成できる新時代のソリューションとして、
今後さらなる普及が期待されています。
製造業の購買・生産管理・サプライヤー各位は、
単なる新材料の導入に留まらず、
「素材メーカーと本当に手を組み現場改革を進める新しい発想」へとシフトしましょう。
昭和流アナログ現場の“守り”から、知恵と技術の“攻め”へ。
現場力×技術×調達の次世代型ものづくりが、これからの日本製造業を再び世界のトップランナーに押し上げるはずです。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
ユーザー登録
受発注業務の効率化だけでなく、システムを導入することで、コスト削減や製品・資材のステータス可視化のほか、属人化していた受発注情報の共有化による内部不正防止や統制にも役立ちます。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)