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コネクティッド・カーにおけるIoT通信品質が議論を呼ぶ場面

目次
はじめに:コネクティッド・カー時代の幕開けとIoT通信品質の重要性
自動車産業において近年もっとも注目されているトピックが、コネクティッド・カーです。
これまでの車は単なる「移動手段」に過ぎませんでしたが、IoT(モノのインターネット)技術の進化によって、車自体が巨大なセンサーと通信装置を搭載した「情報インフラ」としての役割を担うようになりました。
コネクティッド・カーは、センサーや車載カメラからのデータ、GPSによる位置情報、それに交通インフラやクラウドからの情報取得など、さまざまな通信を常時行っています。
自動運転の進化、テレマティクス保険、事故時の自動通報など、「安全」「快適」「効率化」の基盤となるのが通信品質です。
しかし、現場レベルでは通信品質をめぐったさまざまな議論や課題も山積しています。
この記事では、製造現場目線で「IoT通信品質」とは何か、なぜ議論が巻き起こるのか、そして今後業界に求められる視点について深堀りします。
コネクティッド・カーにおけるIoT通信の基本構成
1. ネットワーク構造の全体像
コネクティッド・カーの通信は大きく分けて2種類に分類されます。
車両内ネットワーク(CAN、Ethernetなど)と、車外ネットワーク(LTE、5Gなどモバイル通信、Wi-Fi、DSRCなどV2X通信)がそれにあたります。
車両内では数百点にも及ぶECU(電子制御ユニット)が連携。
外部とはテレマティクスやOTA(Over The Air)によるソフトウエアアップデート、クラウドサービスへのデータ送信などの用途で接続されています。
2. 通信品質が要求されるシーン
たとえば障害物検知や自動ブレーキなど、数秒・数ミリ秒単位で通信遅延やロスが許されない場面があります。
また、渋滞や落下物、天候による道路状況をリアルタイム共有するには、安定した通信帯域やセキュリティも不可欠です。
この「超低遅延」「高信頼」「高セキュリティ性」こそが、コネクティッド・カー通信品質の中核となります。
現場が抱えるIoT通信品質に対する課題とその背景
1. なぜ「通信品質」がこれほどまでに議論を呼ぶのか
昭和から平成にかけて、日本の製造業は「ものづくり力=現場力」として、目の前に見える不良・異常への対応や、部品点数管理、手配の正確さで業績を伸ばしてきました。
しかしコネクティッド・カーでは「通信」という見えない品質が全体の安全性や顧客満足に直結します。
従来型の現場管理では通用しない「しくみ」が、設計・調達・組立・検査などあらゆる現場で新たな摩擦や課題をもたらしています。
2. サプライヤーとの仕様調整:議論が白熱する理由
IoT通信モジュールやアンテナ、配線部材などはサプライヤーが開発・供給します。
しかし、単純なスペック表(速度、帯域、伝送距離)だけで品質を担保できる時代ではありません。
通信不可や断続的な遅延が現場テストで頻発。
「現場の温度差」や「評価基準の違い」から、バイヤーとサプライヤー間で
・想定される利用シーンの違い
・採用基準(赤外線/電波/車内ノイズ耐性etc.)のギャップ
・コストとのバランスをどう取るか
といった議論が、設計初期から量産移行まで終わりなく続きます。
3. アナログ志向が生む落とし穴
今も現場では「とにかくつながれば良い」という過去の成功体験が根強く残っています。
しかし、コネクティッド・カーは都市部と山間部、高速道路と駐車場など通信環境が激変します。
現場検証を怠れば「都市部は良いが実際の顧客ユースケースでは不安定」という致命的な問題が発生。
これがリコールや顧客クレームにつながる例も、すでに業界内で多数報告されています。
通信品質向上とコスト削減のはざまで揺れる現場
1. 高品質とコスト圧縮のトレードオフ
通信品質を高めれば、モジュールのグレードアップやアンテナ配置の最適化など、一台あたり数千円以上コスト増になるケースがあります。
グローバル化で利益率が下がる中、購買部門はどこで「品質優先」と「コスト最適化」のバランスを取るか、常に板挟みです。
バイヤーとしては「なにが本当に必要な品質か」を精緻に見極め、根拠を持った値引きやQCD交渉を進める力が問われます。
一方でサプライヤー側も、「この仕様水準でなければ御社のユースケースを満たせません」と、単なるコスト競争だけでなく提案力が重要です。
2. 業界全体で問われる通信規格・ガイドライン整備の遅れ
実は、自動車業界ではいまだ“絶対的な”通信品質評価項目や規格が確立していません。
民間主導の「V2X」標準化や、個社独自の走行テストが主流であり、現場ごとに要件や達成基準がぶれがちです。
この状況が
・「うちは十分検証した」という現場と
・「本当にそれで十分?」と感じる品質保証部門
の相互不信につながりやすく、議論は一段とヒートアップします。
デジタル時代の製造現場に求められる「ラテラルシンキング」
1. 視野を広げた問題解決力が必須
これからの工場や調達現場は、「現物」だけで品質を見る昭和的アプローチでなく、システム全体・サプライチェーン全体のリスクを鳥瞰する発想が求められます。
また「なぜこの品質がいるのか」「通信が命にどう関わるのか」といった原点回帰の問い直しが不可欠です。
自社の実用現場だけでなく、ユーザーがどんなシーンでどう困るか、常にお客様目線を持つこと。
これがラテラル(水平的)な思考であり、単なる部品コストや検査合否の線引きを超えた視点が必要です。
2. アナログからの脱却と「つなげる力」
デジタル化が進むほど、組織内部や外部パートナーとの情報共有・横断的な連携がカギになります。
最先端のツールや技術を導入しても、運用・意思決定が旧態依然なら効果は限定的です。
現場レベルでもっとも重要なのは、情報の「見える化」と「対話」。
調達担当、開発、製造、品質保証、サプライヤー、エンドユーザーまで、一つのテーブルで率直な会話を重ねることこそ通信品質確保の近道となります。
バイヤー・サプライヤー双方に伝えたい「現場のリアル」
1. バイヤーを目指す方へ:現場起点の価値創造を
コネクティッド・カー時代のバイヤーは、最安の部品や最速納期だけ見ていては不十分です。
現場の課題を深く理解し、「どんな通信品質がどんな価値につながるか」をサプライヤーとともに語り合う力が問われます。
たとえば「1%の通信遅延が事故時の救命率を何%下げるか」という数値ロジックを示せれば、サプライヤーとの交渉もまったく違うものになります。
2. サプライヤーにも知ってほしいバイヤーの本音
サプライヤーの多くは、自社部品やモジュールのスペック説明に終始しがちです。
しかし、実際には「なぜその品質が必要なのか」「現場でどんな課題・背景が議論されているのか」を深掘りしないと、バイヤーからの信頼は得られません。
製造現場のバイヤーはしばしば「現場の声が開発に伝わらない」「コストばかり優先するな」と批判されます。
こうした声の裏には「本当に安全で本当に使えるものを届けたい」というプロ意識が隠れています。
サプライヤーも現場試験や顧客ヒアリングにつきあい、課題の本質をバイヤーと共有することが長期的な競争力強化につながります。
今後の展望:持続的な品質向上へのアプローチ
通信技術は5G、6Gと進化し、OTA(Over The Air)やAIによる故障予兆診断も加速しています。
この潮流に対応するには、現場の経験知とICT技術・データ解析を組み合わせたハイブリッドな品質管理が必要となります。
具体的には
・全走行エリア、全気象条件で「再現性ある」通信テスト体制の確立
・通信障害発生時に即時リカバリーできる多重化設計
・新規格・新製品を現場が早期体験できるパイロット導入
・海外法規制やセキュリティ標準にもいち早く対応
といった地道な積み重ねが、真の品質向上に結実します。
まとめ:コネクティッド・カー時代の新しい「現場力」へ
コネクティッド・カーの通信品質は、「目に見えないが生命線となる」新しい品質評価軸です。
アナログな慣習にとらわれず、本質的な安全・便利・快適を追求すべく、製造業の現場も変化が求められています。
バイヤーもサプライヤーも、単なるスペック確認や価格交渉を超えて「なぜその品質が必要か」「どうやって業界全体の信頼をつなぐか」を考えるラテラルシンキングがカギを握ります。
一人ひとりの現場力がIoT時代の製造業を切り拓き、日本のものづくりを次の次元へと導く原動力になるのです。