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ねじ種類の集約で購買ボリュームを作り単価階段を一段下げる

目次
はじめに:ねじの「集約」がもたらす購買コスト削減の威力
製造業の調達購買部門に携わる皆さんにとって、「ねじ」という部品は毎日目にする、ごく当たり前の存在です。
しかし、この普遍的で安価に見えるアイテムこそが、現場全体のコスト構造や生産性、サプライヤーとの関係性に大きなインパクトを与えています。
近年、コストダウンや標準化の名のもとに多くの現場で「ねじの種類の集約」が推進されています。
筆者も工場長として現場を預かる中で、ねじ集約の重要性と奥深さ、そして「購買ボリュームを作り、単価階段を一段下げる」ことの実効性に何度も驚かされました。
このコラムでは、
・ねじ集約の具体的な進め方
・現場で直面する課題と、昭和アナログ体質の壁
・集約による購買単価の成果・サプライヤーとの新たな関係
・サプライヤー視点で捉えるバイヤーの意図
について、現場目線で実践的に解説します。
製造業の現役調達者、バイヤー志望の方、ねじを納めるサプライヤーの皆さま必見です。
なぜ「ねじの集約」が購買施策として強力なのか
1. 仕様バラバラなねじがもたらす弊害
多品種少量化が進む製造業では、設計部門・開発部門・現場判断など様々な経緯で、似て非なる「ねじ」が使われがちです。
例えば、
・首下長さ違いのねじ
・材質違い(SUS・SWCHなど)
・頭部形状違い(プラス・六角・トラス)
これが積み重なり、管理品番はどんどん増加。
在庫管理が煩雑になり、ショート・過剰在庫のリスクも増大します。
そのうえ、品番ごとの発注ロットは小口化し、「ボリュームディスカウント」の恩恵からどんどん遠ざかる……。
“h3>2. 集約による購買ボリュームの集中効果
そこで、用途や設計要件を洗い直し、「この規格1種類で十分」というねじ品番まで集約する。
こうすることで、分散していた購買数量が1品番に集中。
例えば
A品番:月1,000本
B品番:月1,500本
C品番:月1,200本
とバラけていた場合、集約可能なら「A+B+C=月3,700本」に一本化できます。
この「購買数量の塊」は強い武器です。
なぜなら、ねじサプライヤーにとっても“まとまった数量”は生産効率を高め、コストダウンの原資になります。
標準ねじは基本的に「数量階段」で価格が変動するため、一段分の単価ダウン=「階段を下げる」交渉材料になるのです。
ねじ集約の実践ステップ
1. 現行品番の棚卸しから始める
最初の作業は「現状把握」です。
まず、現場で使っているねじの品番・種類・使用数量を一覧化します。
設計資料、現物現場・資材倉庫棚卸、発注履歴……。
すべて掘り起こしましょう。
すると、規格違い・同等材質だが頭部形状だけ違う、といった“類似品番”が見えてきます。
2. 要求仕様の見直し
その上で、「なぜこのねじなのか?」を改めて設計・品質担当者にヒアリングしましょう。
・長さは本当にそれでなければダメか?
・トルクや強度要件は本当に必要なのか?
・JIS規格の範囲で統一できないのか?
・現場作業性や品質リスクが集約で大きく揺らがないか?
工場の現場経験があれば、「少し長いねじでも、突き抜け防止ワッシャーで吸収できる」「既存品でほとんど問題なし」という実践的判断が身につきます。
3. 集約先品番の特定とリプレイス案の設計
集約可能な規格に集約先品番を決め、置き換え案をまとめます。
・既存の品番からどれに統一するか
・どの拠点・どの工程に対象を拡張できるか
・余剰在庫の処分計画
など、現場との調整が不可欠です。
4. サプライヤーとの交渉・協力体制づくり
購買数量の塊ができた段階で、主力サプライヤーと密にコミュニケーションを。
「この数量なら、どこまで単価階段を下げられますか?」
「年間契約で一括発注するので、特別単価が出せますか?」
生産ラインの調整、納期スケジュールの打ち合わせなど、“一緒に汗をかくスタンス”が有効です。
昭和アナログ体質の壁:現場目線の乗り越え方
ねじ集約の実務において、最大の障害は「これまでこうしてきたから」「変えたらどこかで問題が出るはずだ」という現場の“思考の壁”です。
1. 設計者・現場作業者の不安と向き合う
「使い慣れたねじがないと困る」
「長さが変わると品質問題が出るかも」
こうした声を無視して拙速に進めると、重大クレームや現場反発につながりかねません。
そこで、実機テストや抜き取り評価などで「統一ねじ」の実機適合性をきちんと確認する手順が重要です。
また、現場班長やベテランの意見を事前に丁寧にヒアリングし、改善提案型の合意形成を進めましょう。
2. ドキュメントの統一と教育
ねじ品番の変更は、手順書・作業標準書・部品表(BOM)・発注システムなど、関連ドキュメントへの波及が避けられません。
「うちは紙伝票が多い」「手書き台帳が未だ残っている」など、昭和的体質の工場では、地道な“移行対応”と教育活動がカギになります。
現場説明会やポスター掲示を駆使して、現場全体へ「ねじ集約の必要性とその効果」を浸透させることが大切です。
ねじ集約がもたらすサプライチェーン全体への波及効果
1. 単価ダウンだけではない物流・在庫の効率化
品番集約で最も目に見えて分かりやすいメリットは「単価が1段下がる」ことです。
しかし、それ以上に大きいのが物流・在庫管理コストの削減です。
同一品番に絞れば、複数ロケーションの在庫統合、小ロット発注の頻度減少、不要品番在庫の一掃も実現できます。
在庫管理担当者や棚卸作業の負荷も著しく軽減し、管理レベルも向上します。
2. サプライヤーとのパートナーシップ深化
まとまったボリュームを一社に集約することで、「サプライヤー選定の力学」も変化します。
サプライヤー側も「主力品番」として生産ラインを最適化でき、納期安定・品質安定にもつながります。
また、「集約で浮いたコストを、新たな品質改善・VA(Value Analysis)提案につなげたい」といった前向きな関係にも発展しやすいです。
サプライヤーから見たバイヤーの“集約意図”とは
ねじサプライヤーの立場に立つと、品番集約依頼は「突然の取引品目削減依頼」にも映ります。
「自社の売上が減るのでは?」
「集約によるコストダウン圧力で利益が削られるのでは?」
という危機感も根強いです。
しかし、バイヤー目線で見ると
・標準化による全社的コスト低減
・摩擦なく購買・生産プロセスを合理化
・サプライヤーとのWIN-WIN関係を拡大
という期待感があります。
ですから、サプライヤーもネガティブな反応に終始せず、「数量増による原価低減・納期安定」という自社のメリットや、「共通仕様に合わせた新提案」など攻めの姿勢が重要です。
「お客様と一緒に全体最適を追求する」姿勢を見せることが、中長期のパートナーシップを生むのです。
ねじ集約の成功事例と今後の展開
筆者が経験した大手電機メーカー工場の事例では、ねじ品番を事実上1/3まで減らし、購買ボリュームが3倍以上に集中することで「単価階段」を二段引き下げられました。
その結果
・年数百万円単位のコストダウン
・現場作業ミスの大幅減少
・在庫棚卸の工数半減
と、多面的なメリットを享受できました。
今後は、IoTやAIを活用した「品番管理デジタル化」「自動発注システム」により、さらに高度な集約管理が可能になるでしょう。
“なぜこのねじをこの数使っているのか”を問い直す文化、組織の壁を越えた合意形成、サプライヤーとの競争と協調——
これらが、昭和アナログ体質を脱却し、次代の製造業競争力につながります。
まとめ:ねじ集約の一歩が、ものづくりの未来を変える
ねじの品番集約は「小さい変化」ですが、現場・調達・サプライヤー全体の思考と行動を進化させる大きな一歩です。
購買ボリュームを作り単価階段を一段下げることは、単なるコストダウンのテクニックではありません。
「現場を見直し、業界の常識を問い直し、川上から川下まで全体最適を追求する」意味を持ちます。
バイヤー志望の方には「現場・設計・サプライヤーをつなぐ司令塔」となる本質を、
ねじサプライヤーの皆さんには「共にWIN-WINを創る仲間」となる発想を、
そして現場の皆さんには「柔軟発想・現場主義での進化」をお勧めします。
ねじ1本から、「次代のものづくりの地平線」を共に切り拓きましょう。
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