投稿日:2025年9月9日

OEMによる消耗品の納期トラブルを防ぐ契約条項と運用策

OEMによる消耗品の納期トラブルを防ぐ契約条項と運用策

はじめに〜なぜOEMの消耗品は納期トラブルが多いのか

製造業の現場で、OEM(他社ブランドによる製造)向けの消耗品供給は、ごく当たり前のビジネスモデルとなっています。

しかし、その裏側でつきまといがちなのが「納期トラブル」です。

突然の需要変動や情報伝達の遅れ、サプライチェーン上の小さな齟齬が、最終的に「ラインが止まる」などの大きな損害につながるケースも珍しくありません。

特に昭和型のアナログな業務運用がまだ根強く残る工場では、トラブルを未然に防ぐ仕組みづくりが追いついていないのが現状です。

この記事では、OEMによる消耗品の納期トラブルの典型例や背景、現場目線の実効力ある契約条項のポイント、さらに実際の運用策まで、製造業現場での経験を踏まえて解説します。

OEM消耗品の納期トラブル、典型的な原因

曖昧な納期定義

契約書上の納期表記が「月内納入」のように曖昧な場合、解釈違いがしばしば発生します。

現場としては「月末までに届くならOK」と思っていたのに、サプライヤーは「月初納入」を前提に計画していた、など伝達のズレが生じます。

発注・納入ロットの不明確さ

量産開始直前に「想定以上に必要になった」「事前確認が足りなかった」など、最小ロットや梱包単位が事前調整されていなかったことで追加納期が発生します。

製造地・調達先情報のブラックボックス化

OEMはサプライチェーンの川下・川上が見えにくく、素材やパーツごとに納品までのリードタイムが大幅に異なる場合があります。

サプライヤーの調達経路や在庫状況をOEM元が正確に把握できていないことで、リスク管理が甘くなりがちです。

情報伝達のタイムラグとアナログ業務の弊害

注文書や納期連絡をFAX・電話中心で行っていると、人手ミスや伝達遅れが頻発します。

「言った・言わない」のトラブルにも発展しやすく、実際に物が届くまで現場が不安定になります。

納期トラブルを未然に防ぐための実践的な契約条項

契約書で明記すべき基本項目

1. 納期の定義

「納期は発注書に記載した日」と明確に定義します。

さらに、「納入遅延が発生した場合は○営業日前までに書面で通告」など、事前通報ルールを契約条項に入れておくと効果的です。

2. 発注リードタイムおよび最小発注量

サプライヤーとOEMの間で、標準リードタイム(例:発注後30日以内納入)の合意と、最小発注ロット(例:500個単位)を必ず明文化します。

臨時・追加発注の場合の対応可否や費用についても、事前に取り決めることが大切です。

3. フォーキャスト(需要予測)とそれに基づく在庫責任

OEM元が需要予測(例:3ヶ月先までの月次フォーキャスト)をサプライヤーに提示し、それを元にどちらがどの範囲まで在庫負担・在庫保証するか、責任分担を明確にしておきます。

4. 納期遅延時のペナルティおよび免責事項

「不可抗力を除き、納入遅延が発生した場合は損害賠償請求ができる」「損害金額の上限は月商の○%まで」といった具体的な条文が必要です。

同時に、天災や社会情勢(新型コロナ流行など)による調達遅延については「不可抗力」として免責範囲を整理しましょう。

5. 代替調達権(バックアップサプライヤー)

万が一、サプライヤー側で納入不能となった場合、OEM元が第三者から同一品質の消耗品を調達できる「バックアップ調達権」を明記し、追加費用の負担方法も契約に盛り込みます。

昭和型・アナログ現場でも守れる運用策

1. 発注・納期に関するダブルチェック体制の構築

口頭指示だけでなく、必ず発注書・納入予定書の「両社押印」方式を徹底します。

FAXや紙ベースでも、必ず紙にサインし、両社が管理できる台帳を設けることで、後から検証できる証跡となります。

2. 毎日の“アナログ進捗会議”のススメ

週1回でも良いので「納期進捗会議」をサプライヤー側含めて必ず実施します。

特に、紙資料に進捗を書き込ませて回覧する方式はアナログ現場にも有効です。

実際に顔を合わせて「今週入荷予定品」「遅延リスク」などを口頭で聞き取り、メモを残しましょう。

3. 需要変動を伝える“サプライヤーアナウンス”運用

短いメールやFAXで構いませんので、月次で必ず「今後の生産状況・予定発注量」をサプライヤーに通知します。

「今月は○○個の予想、来月は△△個の見込み。増産がある場合は2週間前に別途案内します」など、具体的な数字で伝えることで双方に安心感が生まれます。

4. 現場巡回×サプライヤー現地確認

可能であれば、OEM元の担当者が定期的にサプライヤーの現場を訪問し、梱包/在庫の実地確認を行いましょう。

現地で現物を目で見ることで、「実は半分しか製造できていなかった」「原材料ストックが不足していた」という事態を事前に把握できます。

納期トラブル“現実”のリアルな事例とその教訓

事例A:急な需要増にサプライヤーが対応しきれずラインストップ

年末特需でOEM元の販売見込が急増。事前の発注連絡がなく、サプライヤーは通常ロットしか生産・在庫していなかった。

結果、1週間の納期遅れが発生し、最終的に生産ラインが止まる損害に。

教訓:定期的なフォーキャスト連絡の徹底と、サプライヤー現場への“現物現場主義”確認が不可欠です。

事例B:曖昧な納期合意による“思い違い”

「納期=月末納入」としていたが、双方で月末日付の定義が食い違い、「31日納入前提」と「25日納入前提」でズレが発生。

教訓:契約や注文書に「○年○月○日までに納入(不可の場合は○日前までに連絡)」を明記し、両社で合意してサインすることが、最も確実な方法です。

最新動向:IT化・自動発注の進展と今後の課題

EDI・自動発注システムの活用

昨今はEDI(電子データ交換)やWebの専用ポータルを導入するOEMも増えています。

発注・納期管理・出荷通知までIT管理し、人的ミスや伝達遅延のリスクを大幅に減らしています。

ただし、アナログ現場ではITシステムを使いこなす教育や、紙書類併用のルール整備も必要です。

サステナビリティとBCP(事業継続計画)対応

大手OEMほど「災害時にもサプライチェーンが継続できるか」が契約条件に入る時代です。

サプライヤー現場でも複数調達・在庫分散・BCP策定が不可欠で、OEM元・サプライヤー両者の責任範囲を明確化しましょう。

まとめ〜“現場を守る”ための契約&運用ハイブリッド戦略を

OEMによる消耗品の納期トラブルは、契約書の文章だけで完全に防げるものではありません。

現場で実際に運用できるアナログ手段も、まだまだ重要な時代です。

納期やリードタイム、在庫責任といった条文を明文化しつつ、ダブルチェック・現場巡回・定期進捗会議などの地道な運用策を組み合わせましょう。

「やった・やらない」ではなく、「証拠を残す、互いに確認する」を徹底することが、納期トラブルの最大の予防策です。

製造業の最前線で悩みを共有する皆さんが、より強いサプライチェーンと信頼に基づく取引を実現できるよう、今回の記事がご参考になれば幸いです。

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