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投稿日:2025年6月7日

効果的なヒューマンエラーの撲滅とその実践対策講座

はじめに:ヒューマンエラーはなぜ起こるのか

ヒューマンエラーは、製造業の現場において避けて通れない課題です。
QCサークルや5S活動を徹底していても、思いも寄らぬヒューマンエラーはしばしば発生し、品質・コスト・納期(QCD)に深刻な影響を及ぼします。
工場長や現場リーダーとして、そして調達や生産管理の実務担当者として、私は何度もその苦い経験を味わってきました。

ヒューマンエラーは避けられないものでしょうか。
私は断じて「違う」と考えます。
エラーの芽を現場に根付かせない工夫、そもそもエラーを許さないシステムを育てること、それが業界の未来を切り拓くカギなのです。

現場目線で考えるヒューマンエラーの種類

ヒューマンエラーとは、人間のミスによる作業の失敗全般を指します。
その多くは「うっかり」「つい」「思い込み」など一見些細に感じるものですが、製造現場では命取りになることもしばしばです。
エラーの種類を体系的に押さえることで、具体的な対策を講じやすくなります。

1. 手順違反型エラー

手順書に書いてある通り進めてない、もしくは勝手な省略や思い込みで行うケースです。
これは昭和的な「俺流」「見て覚えろ」文化がいまだ残る現場で多く発生します。

2. 知識・技術不足型エラー

新人や異動者など、経験・知識の浅い者が、指示された内容を正しく理解できず誤操作につながるパターンです。
教育・訓練体制の不備が背景にあります。

3. 環境・心理的要因エラー

騒音、照度不足、暑さ寒さ、納期プレッシャー、過労やストレス――。
外的・内的要因が集中力や注意力を削ぎ、エラーが発生します。

4. 機械・システム誘発型エラー

設備のインターフェースが分かりにくい、操作ミスを誘発する設計や、誤操作しても気づきにくい仕組みなど、現場に根強く残る「アナログの罠」です。

ヒューマンエラーがもたらす経営インパクト

ヒューマンエラーは単なる個人の「ミス」で片付けられるものではありません。
小さなエラーが、重大な不良や納期遅延、サプライヤーとのトラブル、最悪はリコールやブランド毀損といった“致命傷”へ発展することもあります。

バイヤーとして取引先のヒューマンエラー管理体制を重視することは、自社の安定した購買活動を守る意味でも重要です。
また、逆にサプライヤーは、エラー防止体制をしっかり示すことで、取引先からの信頼度向上や新たな商談機会にも直結します。

ヒューマンエラー削減はなぜ重要視されているのか

昨今のグローバル調達や短納期・多品種化の流れにより、製造業の現場には「ミスをしても再発注できない」「少量でもNGが許されない」状況が生まれています。
トレーサビリティの観点からも、エラーの責任の所在明確化が厳しく求められてきました。
また、IT化・自動化が進む一方で、人の手作業や判断が残る以上、ヒューマンエラー対策は現場力を測る重要指標となっています。

現場で本当に機能するヒューマンエラー撲滅のための対策

私が20年以上、製造現場と調達現場で学び取った経験から、実効性あるヒューマンエラー対策を順に紹介します。
誰でも形だけの標語やポスターを貼るのは簡単ですが、「やったつもり」では何も変わりません。
“根っこ”から変える実践ノウハウをお伝えします。

1. 手順書を「理解させる」「使わせる」教育の徹底

手順書を配布して終わり、ではありません。
作業開始前に現場での「OJT」(On the Job Training)研修を必須化し、指差呼称・復唱など体で覚える教育を繰り返します。
さらに、現場ごとの「暗黙知」(ローカルルール)を見える化し、その内容を定期的にレビューして更新します。
類似手順間違いが多い場合は、動画や画像付き手順書、ポカヨケ(失敗防止装置)との併用も検討します。

2. 分かりやすい現場づくり:5S活動+α

昭和から続く“見ればわかる・やれば分かる”文化から脱却し、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)活動を徹底させます。
その上で、部品や置場の色分け、視覚管理(ラベルやライン、写真表示)を強化し、正しい作業手順を“習慣”に落とし込みます。
現場のカイゼン提案制度を設け、現場作業者自らが問題意識を持って動ける風土醸成も重要です。

3. 機械・設備のポカヨケ活用

現場で生じる“つい忘れ”や“思い込み”を根絶するには、人の注意力に委ねずとも自動で誤操作を未然に防げる設備投資が不可欠です。
例えば、治具が正しい製品しかセットできない構造や、2段階チェック制、エラー発生時にラインが自動停止する仕組み、作業ログのデジタル管理などを積極導入します。

4. 心理的安全性とコミュニケーションの促進

ベテランと新人の壁、担当職種ごとの“縦割り文化”は一番の障害です。
「ミスを報告しづらい」「相談しにくい」組織風土では、エラーは繰り返されます。
ミスを責めるより「なぜ起きたのか、どうすれば皆で繰り返さないか」をワークショップ形式で話し合い、全体でPDCAを回していく仕組みづくりが必須です。

5. IT化・自動化の活用【昭和アナログからの脱却】

近年は安価かつ現場導入のしやすいクラウド型の生産管理システムや、簡易IoTセンサー、作業ナビ端末が普及しています。
アナログな紙ベース管理から、リアルタイムなエラー検知・アラート通知への切り替えを進めましょう。
自動化しきれない工程には、RPA(ロボティックプロセスオートメーション)やチェックリスト電子化等も登場し、現場への波及が進んでいます。

バイヤー・サプライヤーの立場で重要なエラー対策のすり合わせ

バイヤー(購買担当者)は、取引先選定時に「ヒューマンエラー対策のレベル」を必ずチェックすべきです。
工場監査やSRM(サプライヤーリレーションシップマネジメント)で「どこまで現場で実践されているか」を確かめ、その結果を商談の材料にしましょう。

サプライヤー側も、エラー防止体制や現場改善活動の取り組みを見える化し、バイヤーへ自信を持ってアピールできることが、差別化・生き残り戦略になります。
ただし、対策は口だけ・紙だけになりがちなので、必ず担当者と現場担当者が相互訪問を行い、現場での実践状況と課題感をともに共有することが、ムダのないエラー対策には不可欠です。

人・組織・設備「三位一体」のヒューマンエラー撲滅サイクル

効果的なヒューマンエラー対策は、人(教育・意識)、組織(仕組み・ルール・コミュニケーション)、設備(自動化・デジタル化)三位一体の仕組みづくりです。

この考えのもと、現場では以下のPDCAサイクルを回すことが重要です。

  1. エラー情報の収集と分析(何が・なぜ起きたのか現場で深掘り)
  2. 対策の立案と現場教育(誰が・どう実践するか“具体的に”記録)
  3. 対策の現場展開と再発防止措置(設備カスタマイズ、仕組み強化)
  4. 定期的な見直しと改善活動(全員参加型で「学び」を組織に還元)

健全な現場改善は“問題発生”を「責任追及」ではなく「進化・成長のチャンス」と捉える意識変革から始まります。

まとめ:これからのヒューマンエラー対策の方向性

アナログ文化が根強く残る製造業界ですが、技術進化やグローバル競争にさらされる今、ヒューマンエラー対策は「他社との差別化」「現場のブランド力強化」に直結する経営戦略の一部です。

従来の失敗・ミスを「属人化」した責任追及型から、「失敗に強い現場づくり」「人と設備が補い合い、真に働きやすい現場」への転換が、真の競争力を生みます。

現場で働く方、バイヤーを目指す方、サプライヤーとしてお客様の信頼を勝ち取る方――
それぞれの立場でヒューマンエラー撲滅の本質を理解し、次世代の製造業へ新たな地平を共につくりあげていきましょう。

ヒューマンエラー対策は、すべての現場力向上の土台です。
一人ひとりの気づき・行動を、組織的なムーブメントへと広げていきましょう。

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