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電子材料部品腐食メカニズム腐食環境形成材料環境構造面対策

目次
はじめに:電子材料部品と腐食リスクへの現場目線
電子機器製造業界の発展に伴い、電子材料や部品の微細化・高密度化が進み、それと同時に「腐食」という課題もより深刻化しています。
かつては目に見えにくく、軽視されがちだった部品の腐食ですが、製品寿命の短縮、コスト増、信頼性低下といった形で今や収益やブランド価値を左右する根本的な問題です。
自動車・家電産業など長寿命化が求められる分野、更には5GやIoT分野のような最新分野でも腐食トラブルの報告が後を絶ちません。
本記事では、現場の管理職やバイヤーとして20年以上にわたり腐食メカニズムに向き合ってきた経験も踏まえ、「なぜ腐食は発生するのか」「現場でどのように考え、環境や材料、構造面から対策すべきか」を徹底解説します。
腐食とは何か?~現象の本質を現場目線で捉える~
腐食は化学反応―単なる劣化ではない
「腐食」という言葉は一度は耳にしたことがあると思いますが、本質を深掘りすることは意外と少ないかもしれません。
腐食とは単なる表面の汚れや経年劣化ではなく、材料が周囲の環境と化学反応を起こして変質、性能低下していく現象を指します。
特に電子部品では金属部分が酸化や硫化、ハロゲンの影響を受けると、導電性の低下や断線、ノイズの発生など様々な不具合につながります。
昭和的な「経験則」からの脱却が求められるワケ
昔ながらの工場では「湿気が悪い」「手脂が付くとダメ」「とりあえずコーティングを厚くしよう」といった経験則で対策を講じ、根本的な原因追求が後回しになる傾向が見られます。
しかし、微細で多層的な電子部品やグローバルな調達サプライチェーンにおいては、「なぜこの部品がここで腐食したのか」を論理的に紐解くことが重要です。
エビデンスに基づき、個別状況にあった対策=「ラテラルシンキング(水平思考)」がこれからの時代には欠かせません。
電子材料部品の腐食メカニズム
1. 金属腐食の基本メカニズム(鉄・銅・アルミなど)
代表的な金属部品(リード端子・コネクタ・配線など)は、以下のプロセスで腐食が進行します。
1. 水分や大気中の酸素が金属表面に付着
2. 金属表層から電子の移動(酸化反応)が起こり、酸化物や水酸化物の皮膜が形成
3. この皮膜がもろい場合やクラックがあると、腐食が繰り返し進行
湿気や塩分(塩化物イオン)、大気中の硫黄分(工場立地によって異なる)などがこれを加速させるファクターです。
銅は湿度70%超程度で「緑青(ろくしょう)」が形成され、鉄の場合はサビとして進行します。
2. 樹脂や複合材料の腐食・劣化
従来は「樹脂は腐食しない」という先入観が支配的でした。
しかし実際には環境中での分子鎖切断や加水分解・紫外線によるクラック・付着した金属イオンとの反応で絶縁特性の低下が発生します。
3. 電子部品特有の「ガルバニック腐食」
異種金属(例えば金メッキと銅や鉄ターゲット)が近接・接触している場合、電極間に電位差が発生し、電解環境下では犠牲電極側の材料が急速に溶解してしまいます。
特にコネクタや半田付け部でよく現れる現象です。
腐食環境の特徴を正しく把握する~現場調査のポイント~
腐食はマクロだけでなく「微環境」で進行
多くの現場で「工場全体は標準環境のはずなのに、特定の部品だけ異常な腐食が進行していた」という経験があるのではないでしょうか。
要因の一つが「部品直近のマイクロ環境」です。
・密閉内部の湿気滞留箇所
・配線が集中する発熱ポイント
・組立時の手指汚れが残存している箇所
・隣接部品から発生するガス・揮発性成分の局所的濃縮
大がかりな環境測定だけでなく、現場の目・ルーペや表面分析(EDS、XPS)を活用した「ピンポイント調査」が非常に重要です。
取り巻く環境の変化と“新しい腐食リスク”
電子部品調達のグローバル化に伴い、以下のような環境変化にも注意が必要です。
・高温多湿地域からの荷受け
・海上輸送での塩分付着
・脱炭素対応での新規材料(リサイクル材・バイオ樹脂)の特性変化
・IoT家電/EV車など厳しい外部環境下での部品使用
“昭和からの常識”が通用しないケースが増えています。
材料面からの腐食対策
1. 防錆メッキ・表面処理技術の最適化
一般的に、電子部品への表面処理(ニッケル・錫・金・パラジウム等)は防錆目的でも活用されています。
現場では、以下の点を要チェックです。
・メッキ厚みのバラツキ(コスト優先の薄膜化がリスクとなることも)
・下地金属との密着性やクラックの有無(特に鉛フリーはんだ時代は注意)
・複数の異種メッキの接触箇所の有無(ガルバニック腐食へつながる)
“厚くすれば良い”という時代は終わり、最適な組合せと、信頼性評価が鍵です。
2. 新規材料開発と導入の留意事項
・リサイクル材、バイオ素材は水分・イオンの侵入度合いが異なる
・無機系耐食コーティングや自己修復材料など、現場目線での検証が重要
導入前のラボ評価・実装後のフィードバックを供給業者と密に連携し、双方の“現場目線”でリスク低減を図ることが大切です。
構造設計・組立工程での腐食リスク低減
1. 防水・防湿のシール設計
筐体設計や密閉部分ではゴムパッキン、ゲル封止、Oリングなどで外部湿気・塩分の流入を防ぐことが一般的です。
ただし、「ほんのわずかな隙間」「シール材の経年劣化」「多点接続部の不均一圧縮」といった微妙な部分に見逃しが出やすいので、現場でのフィールド評価や漏水試験を繰り返しましょう。
2. 排水・通気・熱拡散の工夫
腐食促進因子(水・化学ガス)が滞留しない構造にするためには、
・傾斜をつけて水抜き設計
・小型ブリーザーや通気シートの活用
・放熱性向上による湿気滞留の防止
も有効です。
これは“ミスゼロ”を目指すよりも「腐食が生じても拡がりにくい」冗長性設計がポイントです。
3. 汚染を持ち込まないクリーン組立
現場での手袋着用徹底、工具・冶具清掃、IPA拭き取りのルール化など、人為的な汚染持込防止策も基本ですが重要です。
腐食対策の現場導入における課題と解決の処方箋
コスト意識と製品信頼性のバランス
経営層・バイヤーの立場から見ると「腐食対策のコスト増」を警戒しがちですが、
・不具合再発対応の人的コスト
・失われるブランド信頼
・サプライチェーン全体の生産性低下
これらトータルコストを踏まえた「攻めの腐食対策投資」が、最終的な差別化に直結します。
サプライヤーとの協働による「見える化」と改善サイクル
腐食不良は「現物不一致」や「見た目だけの合格」になりやすいため、
・認定工場の現場監査
・サンプル部品での加速耐環境試験
・ロットごとの履歴管理とフィードバック
が重要です。
また、海外サプライヤーとの情報共有のために『腐食マップ(Corrosion Map)』の導入、
「不具合データのオープン化と対策事例の横展開」など現場参加型の改善活動が業界全体の底上げにつながります。
昭和型からの脱却~業界トレンドと新たな地平線~
DX活用による腐食リスク管理
現場IoT化やAI分析の進展で、
・環境センサーによるリアルタイム監視
・異常兆候の早期検知とアラート
・品質データの蓄積・横断分析
といったデジタル腐食管理が現実のものとなりつつあります。
これからはファクトリーオートメーションやリモート診断とも連携した「腐食ゼロ工場」を目指す潮流です。
サステナブルな製造と腐食対策
今後、環境規制やカーボンニュートラル対応など、材料選定・工程設計にも「持続可能性」の視点が不可欠になってきます。
・有害化学物質を出さない防錆処理
・リサイクル樹脂や生分解性材の合理的利用
・長寿命設計による廃棄物削減
このような洞察力が新しいバイヤー・サプライヤー、現場エンジニアに強く求められます。
まとめ:腐食を制する者が“DX時代の製造業”を制す
腐食リスクは、目に見えない形で製造業の信頼性・収益性に直結する最大の課題です。
「原因を科学し、現場を分析し、材料面・構造面・現場運用まで重層的に対策を講じる」これが現代のバイヤー・サプライヤー・現場管理職全てにとってのスタートラインです。
古い常識や慣習に縛られず、最新の技術や情報を現場に生かすラテラルシンキング、業界横断での知見共有が、
次世代の“腐食ゼロ”・“高信頼性”製造業を実現する鍵となるはずです。
悩んだ時は必ず現場の現物・現実に立ち戻り、日々目の前の課題と向き合うことが、皆さんの現場そして業界全体の発展につながると私は信じています。
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