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投稿日:2025年6月21日

絶縁劣化・破壊のメカニズムと効果的な劣化対策とそのポイント

はじめに:絶縁劣化・破壊がもたらす現場課題

製造業の現場では、絶縁劣化や絶縁破壊が引き起こすトラブルは後を絶ちません。
機械設備や電気回路の安定稼働を左右する絶縁の状態は、いわば職場の「健康診断」のようなものです。
一見すると異変がわかりにくいですが、絶縁不良は突発的なライン停止や火災、重大な人身事故に直結しかねません。
特に昭和時代から連綿と受け継がれてきた設備や生産現場では、アナログ的な管理習慣が残りがちであり、根本的な対策が後回しになる傾向もあります。

サプライヤーとしては「なぜバイヤーが絶縁状態を厳しくチェックするのか」を知ることが、競争優位に直結します。
また、バイヤーを目指す方も自社設備の管理や調達基準に「絶縁劣化・破壊防止」がなぜ必須要件なのかを理解しておくことが不可欠です。

本記事では、現場起点の目線で絶縁劣化・破壊のメカニズムから、効果的な劣化対策のポイント、さらに最新動向や今後求められるマインドセットまで深堀りしていきます。

絶縁とは何か?現場視点で理解する絶縁の意味

絶縁の基本と役割

「絶縁」とは、電気を通さない素材や処理を使って、電流が本来流れてはいけない部分に流れるのを防ぐ機能や技術のことです。
製造現場では、モーターの銅線を包むエナメルや、制御盤のケーブルシース、基板上の絶縁レジスト、さらには耐熱用の絶縁パッドなど、身の回りのあらゆる場所に「絶縁」の工夫が凝らされています。

絶縁は
– 装置内部や周辺の発火・感電防止
– 回路の絶縁耐力向上による製品寿命の延伸
– ノイズ混入や誤動作の防止
– 法規制(電気用品安全法/PSE等)への適合

など多岐にわたる役割を担っています。

絶縁劣化・破壊とは何が起こっているのか?

絶縁材料は、長年の使用や過酷な現場環境で性能が徐々に低下します。
これが「絶縁劣化」です。
劣化が進行し、ついには許容電圧(絶縁耐力)を超える電圧で絶縁破壊が発生。
意図しない箇所に電流が流れ、「ショート」「アーク放電」「発熱」「発火」など甚大な事故リスクとなります。

そのため現場では「絶縁の健康診断」として絶縁抵抗計(メガー)などで定期測定し、数値の変化や劣化傾向をいち早く察知することが肝要です。

絶縁劣化のメカニズムを徹底解説

工場現場で実際に目撃する事例や、管理職・技術者として蓄積した失敗経験も踏まえつつ、絶縁劣化のメカニズムを紐解きます。

熱劣化

特にモーターやコイル間で多くみられる熱劣化は、絶縁材周辺の温度が上昇することで分子結合が破壊・変質し、徐々に絶縁性能が失われていく現象です。
温度が10℃上がるたびに絶縁寿命が半減するといわれるほど、熱は絶縁劣化の最大要因です。
排気・冷却対策や断熱材の選定が不十分な場合、短期間で絶縁不良が多発します。

電気的ストレス

現場では定格以上のサージ電圧(落雷・急激な開閉)が加わることがあります。
繰り返される電圧ストレスは“部分放電”を引き起こし、やがて絶縁内部に微細なクラックや炭化層を形成します。
これが蓄積されると、閾値を超えた瞬間に絶縁破壊へと至ります。

湿気・水分吸収

工場の立地や作業環境によっては、湿度の高さや水分付着によって絶縁抵抗が著しく低下します。
制御盤内の結露や、配線ダクト周辺の水切れ不良、エアコンのドレン漏れも見逃してはいけません。

化学的腐食・有害ガス

硫黄酸化物、塩素ガス、溶剤ミストなどが絶縁材料に侵入すると、化学反応で絶縁分子が壊されます。
工場内の配線引き回しや保管場所選定に、こうした「見えない腐食ストレス」を考慮する必要があります。

機械的ストレス

ケーブルの曲げ・引張り、摩耗、外部からの衝撃など、物理的なダメージも劣化原因です。
特にセル生産や多品種少量の現場では、通線・結束のたび絶縁被覆に負担がかかります。
振動に強い素材選びや柔軟性確保も重要です。

絶縁劣化対策の現実解:現場でできる効果的アプローチ

絶縁劣化問題の多くは“気づきの遅さ”と“現場環境への理解不足”から起こります。
昭和から続く「感と経験」だけでは不十分な時代、ぜひ実践して欲しいポイントを解説します。

絶縁管理の基本プロセス

1. 基準値・測定ポイントを決める
図面や仕様書で絶縁ポイントを棚卸し。
ケーブル、コイル、盤内コンタクト部など、定期点検対象をリスト化します。
2. 適切な測定機器で定期診断
絶縁抵抗計(500V/1000Vメガー)やリーク電流計を用い、定期的に計測。
測定記録を一元管理することで、数値変化のトレンド管理が可能となります。
3. 異常値の早期発見と原因特定
異常値が出たら、「熱」「水分」「化学ガス」「物理的損傷」などあらゆる角度から原因を特定します。
4. 補修・材料交換・環境改善
必要に応じて絶縁材料の補修・交換、換気や防湿等の環境対策を実施します。

劣化予防のための5大現場アクション

1. 温度・湿度管理
冷却ファン増設や断熱材強化、盤内小型除湿器の活用で過酷環境を回避します。
2. サージ・静電気対策
サージ吸収素子やアース強化を設置し、突発的な高電圧ストレスから絶縁を守ります。
3. 良質な絶縁材料の導入
耐熱性、耐湿性、耐薬品性に優れた最新絶縁材料へ随時刷新していくことが推奨されます。
4. 配線施工の細部管理
曲げRの確保や摩擦対策、ダクト・サポートの設置で施工時のダメージを抑制します。
5. 訓練と教育の徹底
現場作業員への定期的な教育と「絶縁劣化の初期兆候」の見分け方を周知徹底することも、トラブル未然防止には重要です。

予知保全(PdM)のトレンドも活用

最近はAIやIoTセンサーを活用し、絶縁抵抗値の常時モニタリングが現実化しています。
“劣化の兆し”を捉えたら、点検作業の自動通知や交換時期を科学的に推定することが可能となりつつあります。
こうしたデータドリブン型の予知保全(PdM: Predictive Maintenance)は、バイヤーにもサプライヤーにも新たな価値をもたらします。

業界動向:なぜ絶縁劣化・破壊対策が今ほど重要視されるのか?

社会的背景・規制強化

カーボンニュートラルや働き方改革の文脈のなかで、労災や火災リスクは「ゼロトレランス」(ゼロ容認)の時代に突入しています。
また、化学物質管理(RoHS指令、REACH規制)やPSEマーク、UL基準など、国際規格の順守はバイヤーの重大関心事です。
絶縁劣化不良が納入製品のリコールやブランド毀損につながる事例も増えており、「絶縁品質」は経営課題としても無視できません。

アナログ管理からの脱却が成長のカギ

依然として手書き記録や「慣習的な部材選定」が残る現場も多く、絶縁劣化の本質的な解決が遅れる要因となっています。
逆に言えば、「現場情報×デジタル管理」を両立できる企業体質を築くことで、製造業の価値創造に直結します。

製造業の“生き残り戦略”としての絶縁品質

バイヤー視点から見れば、「絶縁品質=納入先のリスク低減+コスト競争力」の核心要素です。
またサプライヤーとしても、「絶縁劣化に強い素材や仕組みをいち早く採用し、保証体制も整備している」ことが、選ばれるメーカーブランド構築に直結します。
これからの調達・供給関係では、単なる「価格」の勝負ではなく、絶縁品質も含めた“バリューベース”な評価軸が重要となるでしょう。

まとめ:現場力で絶縁品質を強化し、未来のものづくり基盤を築こう

絶縁劣化・破壊は、単なる「設備の一部品トラブル」ではありません。
それは職場全体の安全と安心を左右するカギとなるファクターです。
また現場での気づき力や科学的視点、バイヤー・サプライヤーの連携によって、その対策レベルも大きく変わってきます。

最先端のデジタル技術と、地道な現場の積み重ねを融合させ、業界の昭和的慣習から一歩抜け出した“攻めの絶縁品質”を実現していきましょう。

これから製造業に関わる全ての方が、現場力と知恵を生かし、絶縁にまつわるさまざまな課題に先回りして対応できることを願っています。

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