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腐食メカニズム耐食材料さび発生防食技術応用

目次
腐食とは何か?―製造現場での現実的リスク
腐食は、金属材料を使用する製造業にとって極めて身近でありながら、対策の難しい問題です。
製品や設備が使用されるうちに、外部環境との化学的あるいは電気化学的な反応によって金属が劣化し、最終的には破損や機能不全を起こす現象を指します。
この腐食問題は、単なる見た目の悪化だけでなく、生産ラインの停止、コスト上昇、安全事故といった重大なリスクへと発展しかねません。
とくに、現場では一度腐食が発生すると短期間で急速に進行するケースも多く、設備保全担当者、バイヤー、設計者、品質管理者など関係者全員が日常的に頭を悩ませています。
腐食対策の失敗は、市場クレームや社会的信用の失墜として跳ね返ります。
腐食発生のメカニズム―現場で押さえておくべき基本知識
実際の現場対応に必要なのは、腐食の理論を机上で理解することだけでなく、「何が腐食を引き起こすのか」、「どのように進行するのか」を現実の工程や実情に落とし込んで把握することです。
腐食の二大パターン
1. 化学的腐食
金属が空気中の酸素や水分、化学薬品などと反応して発生するものです。
代表例としては、高温環境下で起きやすい酸化腐食などがあります。
2. 電気化学的腐食(電蝕)
二種類以上の金属または金属部分が電解質(例えば水分など)を介して電気的に接触した場合に生じます。
異種金属が並んだ配管や、各種部材の接合部、溶接部分でよくみられます。
腐食に影響する環境要因
・水分
・酸素濃度
・温度変化
・pH(酸・アルカリ性)
・塩分
・各種化学薬品の飛散
現場では「結露」「工場内環境汚染」「搬送中の汗」「指紋」など、人為的に見逃されがちな要素も大きなリスクです。
私の現場体験に基づく注意点
経年劣化と見なされがちなトラブルも、実は「新ライン移設時の設計ミス(例えば排水設計の見落とし)」が根本原因だった事例が多々あります。
また、腐食が進行しやすい“応力集中”や“ガルバニック腐食”など、工場の設備設計やオペレーション段階でつい軽視しがちな細部が、致命傷につながることも稀ではありません。
耐食材料の選定―先端と現実のギャップ
腐食対策で最初に検討されるのが、耐食性材料の選定です。
ステンレス、アルミニウム、チタン、表面処理鋼材など、“データシートでは優秀”な材料が多々ありますが、「コスト」「加工性」「納期」「性能の過剰」とのバランスを現場目線で見極めることがカギです。
主要耐食材料の特徴と選び方
・ステンレス鋼(SUS304, SUS316など)
万能選手ですが、塩素イオンや苛性環境下では想定外の腐食被害に遭うこともあります。
・アルミニウム合金
軽量で加工しやすい一方、pHの変動や銅など異種金属との接触に弱い傾向があります。
・チタン
耐食性能は最強クラス。ただし高価で溶接や加工技術に制約があり、導入判断は慎重に。
・特殊コーティング/メッキ材
材料コスト低減の切り札ですが、加工傷で下地が露出しないよう生産工程での管理が求められます。
現場では「どんな環境下で何年使うのか」「全体コストはどうか」「生産変動・設計変更への追随は容易か」といった点で、理屈と現実のせめぎ合いが生じます。
アナログ現場で根強い“定番材料信仰”
特に昭和時代からの製造業では、「昔からこれしか使わない」や「過去不具合ゼロだから安心」といった現場慣習が依然として強く残っています。
高耐食新素材の開発が進む一方で、工場の実導入はどうしても保守的になりがちです。
バイヤーとしては、現場の納得感を得つつ最新材料を提案する“根回し力”も必須です。
さび発生のメカニズム―工程改善のヒント
さび(鉄の腐食生成物)は、下記の現象の組み合わせで発生します。
1. 鉄表面の水分・酸素吸着
2. イオン化しやすい微細部位からの酸化還元反応の開始
3. 反応が拡大し、スポット的に“穴あき”や“フレーク”となる
この現象は、ときに製造工程のほんの些細な“引っかき傷”や、“保管中のわずかな湿気露出”、梱包資材内の“結露”などがトリガーとなります。
特に大量生産現場では、「前工程の清掃不良」や「油分除去不足」、「検査時の指触」など、人的要因が複雑に絡むのが現実です。
さび発生予防の現場での工夫
・作業手順書に応じた定期的ワイピング・油塗布
・敏感工程での手袋・防湿管理の徹底
・通風・除湿機の継続的運転
・部材・半製品の長期保管時には密閉パックや防錆フィルムの使用
「ニアミス事故を未然に防ぐ」ため、現場スタッフの教育やヒヤリ・ハット共有も欠かせません。
防食技術の最新動向と応用例―現場導入で差がつく知恵
近年はデジタル技術の急進展とともに、腐食・防食の現場でも先進的な技術応用が進んでいます。
防食技術のトレンド
・アノード法(犠牲陽極法)
配管や大型構造物で、多用されています。亜鉛やマグネシウムなど腐食しやすい材料を“身代わり”として設置し、ベース部材の腐食発生を抑制します。
船舶・タンク・パイプラインではほぼ定番化しています。
・電気防食・イオン制御技術(カソード防食)
通電によって腐食を抑えるシステムです。近年はAIによる状態監視が加わり、最適制御が可能となってきました。
・高機能防錆コーティング・自己修復材料
従来材料より耐久性が向上し、かつ現場でのタッチアップや再生も可能な最新技術です。
・IoTモニタリング・画像解析
センサーによる腐食進行の可視化や、AI画像認識による劣化兆候検知が登場。
予知保全とセットで全体コスト低減を実現しつつあります。
防食技術導入の現場目線ポイント
・既存工程との親和性(追加設備の有無、作業負荷)
・材料や外部環境とのマッチング(狙いより過剰なスペックにならないか)
・現場スタッフへの教育/技能伝承(操作ミスや保守の“穴”)
・バイヤー・サプライヤー間のコミュニケーション(導入費用だけでなく、運用面の継続対策も議論が必要)
とくにサプライヤー側としては、自社の技術や製品を単なる“性能”だけで語らず、「現場でどう根付かせられるか」「どういう運用課題を想定すべきか」といった提案型営業が歓迎されます。
バイヤー側も、机上評価や価格だけにとどまらず、「本当に現場で役立つか」を疑いながら選定してください。
昭和時代のアナログ業界が直面する課題と未来
多くの日本の製造業現場では、依然として「実績重視」「人の勘」「手間を惜しまぬ管理」が標準とされています。
最新の腐食防止技術やデジタルモニタリング・AI解析導入も、投資対効果の検証が難しい、社内の合意形成が遅い、一部現場スタッフの“拒絶感”といった壁が残っています。
しかし、グローバル競争と人手不足が本格化するなか、「腐食対策の遅れ=ブランド価値毀損」へと直結します。
“人海戦術”だけに頼ったアナログ運用では、5年後、10年後のサバイバルは難しい現実も迫っています。
買う側(バイヤー)は、単純な価格競争力だけでなく、「トータルコストで安全・信頼性を高められるか」を評価軸に加えるべきです。
提供する側(サプライヤー)も、「売って終わり」ではなく、現場の中長期運用まで責任をもった支援体制を提案しなければ生き残れません。
まとめ―腐食対策は知恵の総合格闘技
腐食メカニズムの理解、耐食材料の見極め、最新防食技術の応用。
さらにアナログ現場の根強い常識と、最新技術とのせめぎ合い。
日本の製造業がこの難題を突破するためには、バイヤーもサプライヤーも、現場起点で知恵を出し合い、時には伝統にもメスを入れていく“ラテラルシンキング”が不可欠です。
「もう一歩、踏み込んだ腐食対策を考えたい」「現場に根付く防食ノウハウをブラッシュアップしたい」
そう考える現場担当、バイヤー、サプライヤーの皆様と、今後も知恵と経験を共有していきたいと思います。
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