投稿日:2025年7月7日

電解無電解複合めっきと電鋳技術でコストを下げる応用例

はじめに:製造業で求められるコストダウンと技術革新

日本の製造業は、今なお高品質を維持する一方で、コスト削減が永遠のテーマとなっています。

グローバルな競争が激化するなか、製品の高機能化や小型化、多様な材質ニーズにどう応えるか。

古くから使われ続けているめっき技術も例外ではありません。

特に、電解無電解複合めっきや電鋳(エレクトロフォーミング)は、従来は高コスト・高付加価値製品向けに使われてきましたが、今ではその応用範囲が大きく広がり、コストダウンの切り札にもなりつつあります。

本記事では、現場目線の知見も織り交ぜつつ、電解無電解複合めっきと電鋳技術の実践的な応用例や、効率化・コスト低減に直結する考え方を解説します。

電解無電解複合めっきとは何か?

電解無電解複合めっきとは、電気(外部電源)を利用する「電解めっき」と、化学反応によって金属皮膜を形成する「無電解めっき」を組み合わせた表面処理技術です。

それぞれの特性を活かすことで、従来技術にはない「複合効果」「省工程化」「コスト削減」「多用途対応」というメリットが生まれます。

電解めっきの特徴

電解めっきは、効率が高く、厚膜化しやすいという特徴があります。

一方で、非導電性の基材への直接めっきや、複雑形状の均一な膜厚制御は苦手です。

無電解めっきの特徴

無電解めっきは、電源不要で化学反応だけで金属皮膜を形成できます。

均一な膜厚や樹脂・セラミックスなど導電性のない材料にも対応できる点が強みです。

ただし、膜形成速度が遅く、厚膜化には不向きです。

複合めっきの応用発想

この両者を工程内で組み合わせることで、複雑形状かつ非導電性基材にも金属をしっかりコーティングし、さらに厚みや機能性(金属色、耐摩耗性、耐食性など)を自在にコントロールできます。

電鋳(エレクトロフォーミング)技術とコストダウンの可能性

電鋳とは、母型となるパターン上に電解めっきを施し、剥離しためっき金属を製品として活用する特殊な成形技術です。

従来は精密金型部品や光学部品など、ごく一部の高級用途が中心でした。

現在は設計・工程の工夫により、コスト競争力も高めやすくなってきました。

電鋳の特徴

– 精密な微細形状の再現性が非常に高い
– 厚膜でも高い寸法精度
– 製品群の一体化・小型化
– 薄肉中空形状、複雑管路の一体形状化が可能
– アンダーカットや複雑曲面にも対応

これらにより、切削加工やプレスなど異なる加工方法と比較して、工程削減・部品点数削減によるコストダウンが可能です。

アナログ業界でも根強いニーズ

「なぜ今さら電鋳なのか?」と疑問に思う方もいるかもしれません。

実は、微細フィルター、医療部品、電子部品用シート、そしてプロセス冶具など、昭和から現代まで安定した需要が存在します。

多品種小ロット化、超精密化、機械加工の限界打破という視点で、今後も社内現場からの「駆け込み需要」は後を絶ちません。

電解無電解複合めっきと電鋳の組み合わせによる応用事例

1.複雑樹脂部品のメタライジング

製品ケースや微細筐体など、ABS樹脂やポリカーボネートなどを利用した部品への金属調めっきは、ほぼ無電解めっきからスタートします。

まず樹脂表面に無電解めっきで薄膜をつくり、続けて電解めっきで膜厚や意匠性向上、耐摩耗強化を施します。

これによって、従来では必要だったアンダーコートや特殊接着処理が省略でき、工程集約による人件費や薬品コストの削減が可能です。

コストダウン+短納期対応=サプライヤー競争力の拡大、という現場目線からの意義が生まれます。

2.精密金型部品の電鋳製造と無電解複合めっきによる高耐摩耗金型

極めて高精度な微細凹凸をもつマスター型から、電鋳により複数コピー品を低コストで生産。

ここに無電解ニッケル(Phos付き、PTFE分散など)の機能めっきを施し、離型性や耐摩耗性を大幅に高めたり、後工程の補修容易性も向上させたりできます。

従来はニッケル合金素材削り出しや焼入れ、PVDコーティングが主流でしたが、工程短縮・部材転用・金型の延命によるトータルコストダウンが実現します。

3.積層モールドや配線形成への応用

5G通信機器、半導体パッケージなどでは、高密度多層基板や極細配線が重要です。

まず樹脂基板に無電解Cuめっき、続けて電解Cuめっきによる積層形成、電鋳による微細パターン成形(外形パターンやグリッド状シールド形成)を組み合わせることで、従来不可能だった高密度回路・EMC対策部品が低コスト&高歩留まりで製造できます。

今や半導体パッケージングにおいても、めっき・電鋳技術が不可欠な時代です。

4.マイクロ流路や三次元形状部材の製造

医療分野や化学分析分野では、μmオーダーのマイクロチャンネルやサンプル流路をもつ複雑形状部材が求められています。

従来、超精密切削や微細放電加工、ガラス・樹脂の成型技術が使われてきましたが、金属製の高強度・熱化学耐性を持つ部品の需要も増加。

ここに、無電解めっきでベースを形成→電鋳で複雑三次元流路鋳造→機能めっき追加で、機械加工レスの一体生産が可能です。

これにより、部品点数・手作業・検査工数が大幅減り、今まで諦めていた「コスト壁」を越えられます。

コスト低減と現場競争力向上のための導入ポイント

1. 材料・工程設計段階から“工程転換”を考える

「これは金属削り出ししかできない」
「組み立てでしか形にならない」
という昭和脳から脱却し、「電解無電解複合めっき+電鋳なら一体形状や薄肉化ができるのでは?」と発想を転換することが、最初の一歩です。

現場でのコストダウン事例でも、設計段階から仕込み直したことで数分の一までコスト圧縮できた例もあります。

2. 外注の活用で一気通貫プロセスを目指す

全工程を自社でやる、という発想から、QCDバランスを考えた最適な外注活用も重要です。

めっき・電鋳工場の多くが「一気通貫型サービス」を提供しており、試作・量産・検査・アフターケアまで手厚くサポート。

サプライヤー活用による開発期間短縮・コスト分散も現場では必須です。

3. 化学品・薬品管理、廃液処理を忘れずに

めっき関係は薬品管理・廃液規制が年々厳しくなっています。

逆に言えば、規制対応済み外注との協業や最適な工程分担は、省人化・コストダウン・リスク管理の観点からも合理的です。

バイヤー・サプライヤーの視点:現場実装までのヒント

導入にあたって最も重要なのは、“机上”の知識ではなく、現場レベルでの「納期・品質・コスト」の微調整です。

バイヤー目線では、
– 標準化された工法との比較(どれくらい工程短縮になるかの見積もり)
– 歩留まり・リワーク発生率、品質安定性のチェック
– リードタイム、最適ロットサイズの把握
– 既存製品・現場設備との適合性評価

これらは、“一式 部品図渡し→完成品納入”といった、旧来の丸投げ姿勢では見えてきません。

サプライヤーとしては、めっき・電鋳の特性(寸法安定性、金属組成、局部特性変化など)をきちんとフィードバックし、バイヤーと双方向で技術情報を交換することが現場導入をスムーズにします。

まとめ:電解無電解複合めっき・電鋳で新時代の現場改善へ

昭和から連綿と続く、アナログ的な製造業現場にも、電解無電解複合めっき+電鋳技術の組み合わせは確実に浸透しつつあります。

表面処理で終わらせない。

コスト低減・性能向上・工程変革を同時に叶えることで、製造現場の競争力を根本から変革できます。

設計、調達・生産管理、品質、現場すべての目線で「複合めっき・電鋳」を考え、ラテラルシンキングで新たな生産地平線を開拓していきましょう。

今後も製造業のブレークスルー技術として、現場の“困った”に応えられる多層展開が求められていきます。

ぜひ社内勉強会や現場改善会議で、本技術の導入・転用を検討してみてください。

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