月間93,089名の
製造業ご担当者様が閲覧しています*

*2025年6月30日現在のGoogle Analyticsのデータより

投稿日:2025年6月21日

高付加価値を生む樹脂成形品における加飾技術と最新技術および製品への応用・事例

はじめに:高付加価値の時代到来 ― 樹脂成形品への加飾ニーズ

製造業の現場で長く仕事をしていると、単なる部品から「いかに付加価値を生み出すか」という問いに必ず直面します。

とりわけ樹脂成形品においては、金型の設計や量産性の追求だけでは差別化が困難です。

ユーザー体験の向上やブランド価値を高めるため、表面加飾技術への期待が年々高まっています。

樹脂成形品は、身の回りの自動車、家電、電子機器など、多様な製品の外装や機構部品に利用されており、機能・外観の両面で付加価値を生む「加飾」こそ、競争優位のカギとなります。

この記事では、昭和的アナログ志向の現場目線からも評価される、代表的な加飾技術や最新動向、それを活かした製品事例をご紹介します。

「なぜ今、加飾なのか?」の背景とともに、バイヤー、サプライヤー双方の視点で読み解いていきます。

樹脂成形品の加飾技術:代表的な手法とその進化

長く現場にいると、「加飾といえば塗装・印刷・メッキ」といったイメージが強いものです。

しかし、現代の加飾技術は多彩に進化し、さらに“製品機能”と“意匠性”が一体となる方向に進んでいます。

古くから日本のものづくりを支えてきた加飾技術の現場目線で、主な手法を整理します。

塗装・印刷 ― 昔からあるけど深化している

塗装やパッド印刷などは最もベーシックですが、自動車外装パーツのような大面積、複雑形状にも対応できる多層塗装や、耐候・耐摩耗性を兼ねた特殊コーティングへ進化しています。

また、インクジェットプリントによるフルカラー加飾や、塗装プロセスの自動化・ロボット化が進み、品質安定性・大量生産性も向上しています。

IMD(インモールドデコレーション)・INS(インモールド成形)技術

20年前ならまだ高コスト・難易度が高かった“成形同時加飾”も、いまや家電や自動車のパネル、スマートフォン部品に定番です。

IMDは、加飾されたフィルムを金型に挿入して樹脂と一体成形する技術。

傷がつきにくく、高品位なグラフィック表現、意匠の自由度が格段に上がりました。

さらにINS(インサート成形)は、金属や異素材を組み合わせた「機能とデザインの融合」も可能です。

レーザー加工・エッチング・パターン加飾

近年急速に導入が進んだのが、微細な凹凸やデザインを樹脂表面に直接形成するレーザー加工・エッチングです。

グリップ性向上、光の反射制御、センサー窓など、単なる意匠以上の付加価値が求められています。

金型への直接加工技術の進化により、大量生産への適用も現実的になりました。

メッキ・蒸着 ― 金属調加飾の進化

いわゆる「メッキ」も進化しています。

従来の電気メッキのほか、PVD(物理蒸着)など環境負荷を抑えつつ高機能な加飾手法、指紋がつきにくい特殊コーティング、電磁波シールド性能付き加飾など、単なる装飾から機能的要求へとシフトしています。

アナログとデジタルの狭間で ― 日本製造業に根付く“加飾”の現場感

日本の現場では、「加飾=コストアップ」という意識が根強いのも事実です。

資材調達・購買の立場から見れば、何でもかんでも加飾を推奨するのはリスクであり、サプライヤーとの価格交渉・品質保証の観点も無視できません。

ここでは、昭和時代から強く残る“現場アナログ志向”の壁と、その中での活路を検証します。

加飾工程=ムダ? 現場の声と実際の効果

「シンプルでいい、余計なことは不要」という現場意識は根強いです。

しかし、市場では「見栄え」「触感」「ブランディング」など付加価値の評価軸が増えています。

顧客が製品を手に取る瞬間の感動や、スマホの艶やかさ、高級感、触れたときのしっとり感は、実はこうした加飾が生み出しています。

販売現場での競争優位やブランドプレミアムを実現するためには、今こそ現場サイドの意識の変革が必要です。

調達・購買目線で見る加飾技術選定のポイント

コストだけでなく、品質確保、歩留まり、検査性、自動化、トレーサビリティが加味されます。

IMDやレーザー加飾は一見コスト高ですが、
– 成型と加飾が一体化し工数・工程削減につながる
– 品質のバラツキが減り、再加工・手直し工数が減る
– 加飾部分にも機能付与(導電性、耐候性など)ができる
– 少量多品種生産による在庫圧縮が可能

など、総合的なコストダウンにつながる場合も多くあります。

サプライヤーとして押さえるべきバイヤー心理

購買担当者が気にするのは
– 品質トラブルの発生リスク
– 工程変更による初期コストアップ
– 量産時の安定調達性

などです。

手間やコストの見える化、過去実績のデータ提示、試作実績の共有などが信頼獲得のポイントとなります。

また、「この機種でこの加飾技術を使い、どれほどの付加価値UP実績が出たか」というマーケットデータも重視されています。

最新の加飾技術動向 ― グローバル視点とIoT時代の新ニーズ

グローバル市場においては、日本の伝統的な加飾技術が認められる一方、デジタル時代の新たな潮流も無視できません。

特に自動車、家電、スマートデバイス業界では、より複雑で高機能な加飾ニーズが年々高まっています。

バーチャルスイッチ&透明ディスプレイ時代への進化

内装パネルなどで、「使わないときはシンプルな加飾パターン、使うと各種アイコンやスイッチが浮かび上がる」といったバーチャル加飾技術も進展しています。

これは、加飾フィルム+透明導電層+LEDや有機EL技術の融合。

例えば自動車のセンターコンソール、次世代冷蔵庫のタッチパネル、スマートミラーなど実用化事例も多数あります。

環境配慮型のサステナブル加飾

リサイクルPETフィルムや水性インク、環境配慮型樹脂との組み合わせ、VOCを抑えた塗装やコーティング技術など、サステナブルへの移行も急務です。

加飾工程自体の歩留まり向上、省エネ・省資源化も国際的な取引条件になりつつあります。

データ活用・AIによる外観品質管理

歩留まり改善や画像AIによる外観検査は、もはや導入必須のテーマです。

人間の“目”に頼った検査から、AIによる自動外観判定、トレーサビリティ管理へのシフトが進み、加飾の安定品質・再現性を確保しています。

応用事例 ― 業界別にみる加飾技術の最前線

抽象論だけでなく、実際のアプリケーションの事例を現場目線でご紹介します。

自動車業界:最先端加飾の主戦場

自動車内装・外装パーツではIMDやレーザー加工が標準化。

プラスチックパネルに高級木目調・カーボン調デザインを付与、またスマートフォン連携のバーチャルスイッチが続々登場。

グリップ部分には立体的なパターン加飾や、光の反射によって色味が変わる“構造色加飾”も急速に普及しています。

また、加飾フィルムにEMC/EMIシールド層を融合し、通信機能やセンシング機能との両立も活発です。

家電・小型デバイス分野:ブランド価値を高める加飾

テレビ、冷蔵庫、エアコンのフロントパネルでは豪華な3Dパターン、特殊な質感塗装・グラデーション印刷が主流になっています。

スマートフォン・ウェアラブル端末では、ガラス・樹脂複合パネルに高精度エッチング、特殊ハードコート、蒸着による金属調加飾、さらには抗菌・防指紋コーティングも重要視されています。

医療機器・産業機器:機能と美観の高度な両立

「機能重視=無個性」と思われがちですが、近代医療機器や工業用タッチパネルでは、操作性・耐薬品性・抗菌性といった機能加飾が求められています。

さらに目に優しいマット加飾、バリアフリーに配慮したテクスチャ加飾など、安全性・操作性にまで加飾が一役買っています。

まとめ:加飾技術は“攻め”の経営資源、その本質は“体験の差別化”

加飾技術は決して「おまけ」でも「コストアップ要因」でもありません。

現代は“モノが良いだけ”では売れない時代です。

製品を手に取った瞬間に感じる価値、その印象こそが、売上・収益・ブランド力を左右します。

企画・営業・購買・生産・品質管理―どの部門も加飾を単なる技術としてではなく、ビジネス全体の最適解として捉えなおす必要があります。

また、サプライヤー側も単なる「受注型」から、積極的にバイヤーに提案する“共創型イノベーション”へと発想を転換しましょう。

現場を知り抜いたプロとして言えるのは、「加飾」こそが製造業の新たな優位性を生み出す武器であるということです。

みなさまと共に、進化する“ものづくり”の地平線を切り拓いていきましょう。

資料ダウンロード

QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。

ユーザー登録

受発注業務の効率化だけでなく、システムを導入することで、コスト削減や製品・資材のステータス可視化のほか、属人化していた受発注情報の共有化による内部不正防止や統制にも役立ちます。

NEWJI DX

製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。

製造業ニュース解説

製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。

お問い合わせ

コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)

You cannot copy content of this page