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中小製造業の提案力を活かした設計段階での原価低減事例

目次
はじめに
中小製造業の強みは、現場に根ざした柔軟な発想力と、きめ細かな対応力にあります。
変化の激しい市場や、厳しさを増すコスト競争の中で、設計段階から原価低減(コストダウン)に取り組むことは、経営の生命線ともいえる最重要テーマです。
本記事では、大手メーカーで20年以上歩み、調達購買、生産管理、品質管理、工場自動化まで携わってきた私の知見をベースに、「設計段階での提案型原価低減」の実践事例や業界動向、バイヤー・サプライヤー双方の視点から考察します。
設計段階での原価低減が重要な理由
なぜ設計段階が勝負なのか
一般に、製品の原価の80%は設計段階で決まると言われています。
設計図が完成してからのコストダウンは、部品の調達交渉や短期的なプロセス改善など、手法が限定され効果も小さくなりがちです。
一方、設計プロセスの初期から調達や現場、生産技術の知恵を集約することで、材料選定・工程設計・外注活用の観点から大きな原価低減を実現できます。
ものづくりの現場知が活きるフェーズ
中小企業は、分業化が進んだ大手ほど機能が縦割りになっておらず、設計・生産・調達・品質部門の距離が近いというアドバンテージがあります。
昭和時代から根強く残っている「現場と設計の壁」を、現実的なコミュニケーションで打破できる可能性が高いのです。
昭和的アナログ思考からの脱却が鍵
属人化と「出来合い図面」依存からの脱却
多くの中小製造業では、「図面通りに作ればいい」「上から降りてきた設計は変えられない」といった思考が未だ根強く残っています。
この思考は、「私は職人。余計な口出しはしない」という昭和的価値観からきている場合が多いです。
設計へのフィードバックを現場から積極的に提案する文化がないと、設計側もコストダウンの種を見落としたまま量産に移行してしまいます。
バイヤーの設計部門・購買部門連携の実態
バイヤー視点では、設計が決めた内容に対し制約条件を伝えるだけの受け身体制になりがちです。
しかし、調達や現場サイドからの「この形状なら工程数が減る」「共通部品化できる」「市販材に置き換え可能」といった知見を、設計段階で盛り込むことで、明確な原価低減効果を生み出せます。
提案型原価低減を実現した中小製造業の具体事例
樹脂成形品の材料変更によるコストダウン
ある樹脂成形部品メーカーは、自動車部品の新規立ち上げ時に、設計指定グレードより安価ながら機能を満たせる市販グレード樹脂の存在を提案しました。
設計と共同で仕様検証を行い、技術要求を満たすことを確認。
材料コストを20%削減でき、かつ納期の短縮にも成功しました。
この成功の背景には、工場部門の材料知識、地場樹脂メーカーとのネットワーク知見が生かされていました。
板金加工品の工数削減提案
板金部品を供給するサプライヤーが、新規住宅設備の設計開発段階で、設計者から依頼された複雑な曲げ形状の製作難易度を指摘しました。
そこで、シンプルな形状変更案とともに、溶接レスで生産可能な一体加工を提案。
設計側も現場との早期協議にメリットを感じ、コストダウンと品質安定化を両立しました。
これは「自社のやりやすいように提案する」のではなく、「お客様の設計意図に沿いつつ現場効率を両立する」という姿勢がポイントでした。
調達購買主導型の部品標準化事例
自動車用ワイヤーハーネスの調達現場では、型式ごとに個別仕様だった端子部品について、購買・生産技術・設計の三者会議を定期的に運営。
サプライヤーの標準品活用・ばらつき吸収設計の提案を受け、全社標準化を実現しました。
結果、在庫負担の大幅減、サプライヤーの生産コスト2割減に加え、トラブル時の互換対応速度も圧倒的に向上しました。
提案力を引き出すための職場風土づくり
設計・営業・現場が対等に議論できる場を作る
提案型原価低減を実行するカギは、「現場からの意見が設計に伝わる土壌作り」です。
営業・設計・品質・生産・購買が一同に集まる定期的なレビュー会議や、「ものづくり提案シート」といった文書化ツール導入が有効です。
現場を褒める文化、失敗提案でもリトライを許容する風土は、長期的な組織力強化へつながります。
デジタル活用とアナログの良さの融合
設計変更やコスト情報の共有は、紙や口頭中心の属人化運用が少なくありません。
現実的な打開策としては、設計・調達・現場チーム全員がアクセスできる「提案・変更内容の見える化」仕組み(グループウェア、Excel活用など)から始めるのが有効です。
最初から大規模システム化を目指さず、小さな改革で成果を出し関係者を巻き込むことが重要です。
バイヤーとサプライヤーの関係再構築
上からのコストダウン要求は逆効果
バイヤーがサプライヤーに対し「一律3%原価低減要求」といったトップダウン型施策は、短期的な効果はあっても中長期的には信頼関係悪化、隠れたリスク顕在化の原因となります。
持続可能なコスト競争力は「共創的な原価低減パートナーシップ」からしか生まれません。
共創的コストダウン実施のコツ
バイヤーは、設計・調達・現場の視点で「なぜ原価低減がしたいのか」「どこがコストのボトルネックか」をサプライヤーに開示し、率直な提案を募ることがポイントです。
サプライヤー側も、「自社の強みは何か」「相手設計部門は何に困っているのか」をヒアリングし、設計段階から能動的に関わることで、自社の存在価値を高めることができます。
中小製造業が今後打つべき一手
若手・異業種人材の知恵を取り入れる
属人化・慣習依存を脱却し、設計と現場との対話を加速するには、若手や異業種出身の人材の発想を積極的に活用することが重要です。
例えばデジタルに強い人材の配置、設計経験者を現場に出向させるジョブローテーションなど、小さなチャレンジがイノベーションの起爆剤となります。
業界全体で知恵を共有・蓄積する
昭和の現場感覚と令和のデジタル知見、その掛け合わせによって「設計段階での原価低減」は新たな可能性を拓ける分野です。
業界団体やサプライヤーカンファレンスを通じて「成功事例」を積極的に外部共有し、広く知識の輪を広げる取り組みも重要です。
まとめ~提案力こそ中小企業の勝ち筋~
中小製造業が設計段階で原価低減を実現するためには、「提案力」に磨きをかけ、現場と設計の壁を越えた能動的な働きかけが不可欠です。
昭和的な思考にとらわれない、フットワークの軽いコミュニケーションと、業界の知恵を掛け合わせる場づくりが、競争優位の鍵となります。
設計者・バイヤー・サプライヤーの垣根を超えて、現場知・提案知を武器とした日本のものづくりを未来へつなげていきましょう。
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