投稿日:2025年7月1日

伝わる英語プレゼンを実現する構成スライド作成とデリバリー

はじめに:製造業現場に求められる「伝わる英語プレゼン」とは

グローバル化が加速する現代、製造業の現場では海外のサプライヤーや顧客、そして社内関係者とのやりとりも日常茶飯事となりました。

特に生産管理・調達購買・品質管理の現場では、英語でのプレゼンテーション能力が求められる機会が増えています。

しかし、「伝わる」英語プレゼンを作り上げることは、思いのほか難しいものです。

日本語では伝わっていたはずの熱意や論点も、英語となると、どうしても単に情報を並べるだけの「カタログ型」になりがちです。

また、デリバリー(発表の仕方)まで意識できている方も少ないのが実情です。

製造業に20年以上携わってきた私自身、欧米・アジア各国のバイヤーやエンジニアへの説明の場で数々の苦い経験と成功体験を積んできました。

今回は、実務の視点をふんだんに盛り込みつつ、「伝わる」スライド構成とプレゼンのコツを深掘りしていきます。

なぜ今、英語プレゼンが求められるのか? 業界動向と現場のリアル

昭和スタイルの “通じればOK” からの脱却

かつては、現場経験と商品知識があれば、多少たどたどしい英語でも「気合と根性」で何とかなった時代がありました。

しかし、世界的なサプライチェーンの再編やコスト競争力確保の局面において、「通じればOK」から「納得させ、共鳴させ、商談を勝ち取る」力へと進化が求められています。

取引先は、世界中のサプライヤー候補をリストアップし、冷静かつ論理的な目で選定します。

その「評価」は、最初に行われるプレゼンの質で大きく左右される時代です。

プレゼン資料が「貴社の実力」を証明するデジタル時代

オンライン会議、ウェブ商談の普及により、現場の臨場感や製品のリアルな触感を伝えることが難しくなっています。

それゆえ、「資料自体が貴社と商品力の評価材料」となることを常に意識する必要があります。

この現実を正しく捉え、「なぜこのスライド構成なのか」「なぜその順番なのか」まで設計することが、データで比較される今こそ重要です。

伝わる英語プレゼンに不可欠な“骨太”構成力

現場で使える!スライドの「基本」構成パターン

製造業の現場で英語プレゼンを行う場合、押さえるべき鉄板の構成パターンを下記の通りに整理します。

1. Problem / Opportunity(課題・市場機会)
2. Our Solution(提案・解決策)
3. Key Features & Strengths(主な特徴・強み)
4. Evidence(実績・データ・第三者評価)
5. Value to Customer(取引先に対する価値)
6. Next Step / Call to Action(次のアクション提案)

最初に「なぜこれが今必要なのか?」という“課題ドリブン”のアプローチを明快に示し、その解決策こそが自社の製品・サービスである、という流れです。

この「起承転結」を意識することで、聞き手が自然と納得・共感しやすくなり、反論の余地を先読みした説明へと昇華できます。

聞き手を分析するラテラルな視点

伝える側が、常に忘れてはいけないのが「聞き手は誰か?」というラテラル=多面的視点です。

バイヤーと技術者、経営層…それぞれに響く論点は違います。

たとえば
– バイヤーには、直接的なコストメリットやリスク低減策、納期管理への説明を明確に入れること
– 現場技術者には、御社の強みを“現場でどう発揮できるか”を事例で見せてあげること

聞き手分析と構成刷新を行うクセをつけるだけで、英語プレゼンの効果は飛躍的に変わります。

実践的スライド作成のポイント:即使える現場ノウハウ

スライドは「情報の棚卸し」から始める

1スライド1メッセージが基本、という理屈は知ってはいても、ついつい情報を詰め込んでしまいがちです。

私の現場経験から、まず手書きで「伝えたい主張」「根拠となるデータや事例」「想定質問と先回り答え」をメモにまとめることをおすすめします。

この段階で、「本当に必要な情報だけ」に絞り込む意識を持つことが、説得力あるスライドへの第1歩です。

英語のロジカルフローを意識する:PREP法+追記

英語で展開する場合、日本語的な「状況説明や前提が長すぎる」プレゼンは好まれません。

PREP法(Point, Reason, Example, Point)という骨組みを念頭に置きましょう。

1. 結論(Point)…“This solution will reduce your procurement lead time by 30%.”
2. 理由(Reason)…“Because it utilizes AI-based automatic order allocation.”
3. 具体例(Example)…“For example, customer X saw a 35% decrease…”
4. まとめ&再提示(Point)…“Therefore, this solution will greatly benefit your operation.”

Point-Reason-Example-Pointの順序に加え、「数字・グラフ・比較表」を積極的に盛り込むことで、世界共通語である“事実”に訴えかける構成が出来上がります。

データビジュアライズは“直感重視”が鉄則

製造業の現場では、納期遅延件数・不良率・コストダウン効果…といった定量指標で交渉するシーンが多いです。

グラフやチャートは、PowerPoint標準書式ではなく、
– 色分けを2色(ポジ・ネガ)で対比
– 数字を“ビックリするほど大きく”表記
– 凡例やタイトルで「結論を言い切る」

細部にこだわることで、英語が得意でなくても、視覚情報だけで価値を伝える強力な資料となります。

デリバリー(発表)の極意:現場流ラテラル・テクニック

「話す」ことへの苦手意識を消す思考転換

多くの方が、「英語を話す」ということだけで緊張しがちです。

しかし製造業の現場では、「自社が現場で培った成果=他社にない強み」で勝負できます。

拙い言い回しでも、「カタコトでも、伝えよう・納得させよう」という“突破力”こそが、グローバル現場で評価されます。

完璧な英語よりも、「情熱」「相手目線」「長所の自己開示」で信頼を勝ち取る、これこそが現場流のラテラル・テクニックです。

デリバリーで威力を発揮する3つのポイント

1.「間(ま)」を味方につける
早口でまくしたてず、一文ごとに意図的な“間”を置き、スライドを指し示しながら進行しましょう。

聞き手の思考整理を助け、英語力の不安も相手に悟られづらくなります。

2.「質問ウェルカム」の姿勢を冒頭で見せる
“Feel free to interrupt if you have any questions.” を冒頭で明言すると、心理的ハードルが下がり、一方的な発表ではなく「対話」へと場の空気が変わります。

3.「最後のまとめ」はアクションを呼びかける
“Our proposal will… What is your next action or concern?” とクロージングし、「行動への橋渡し」ができると理想です。

よくある失敗と成功への転換術

失敗例から学ぶ:内容の独りよがりを避けるには

・「自慢ばかり」の社内事情アピール
・「古き良き工程紹介ばかり」で、今後の提案や顧客ベネフィットが見えない

こうしたスライドにありがちなミスは、「相手目線でなかった」「問題解決アプローチが弱い」ことに起因します。

失敗談を活かし、「相手のビジネス課題をどれだけ“自分ごと”化できるか」を反復練習することが、成功への秘訣です。

現場流・成功事例のスパイス

調達バイヤーの提案説明で、「実際の現場動画」を組み込むことで、無機質なスペック比較から、リアルな活用イメージへ落とし込めた事例があります。

また、自社工場の女性オペレーターに英語で「現場コメント」動画を依頼し、海外バイヤーから「日本の現場力の高さ」を直感的に評価されたこともあります。

“現場の臨場感”、“等身大の人材紹介”は、とくにアナログ業界に強いインパクトを与えます。

まとめ:現場目線×ラテラルシンキングで世界を動かす

英語プレゼンと言うと、まだまだ“ハードルが高い”印象を持つ方が多いかもしれません。

しかし、製造現場で培った「泥臭い発想」「現場を知る者だけが語れるこだわり」「職人魂」は、世界のバイヤー・エンジニアにこそ強烈に響きます。

大切なのは、ロジカルな構成と現場の熱量、その両輪からスライドとデリバリーを組み立てることです。

デジタル化が進んでも、“現場の本気”を伝える英語プレゼンは、必ずグローバルビジネスの扉を開いてくれます。

この記事が、次世代の製造業を担う皆さんの一歩を後押しできることを心より願っています。

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