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投稿日:2025年6月11日

簡潔に伝えるためのロジカルな説明・報告の実践演習講座

はじめに:なぜロジカルシンキングが製造業で重要なのか

製造業の現場では、日々さまざまな情報を伝達し、迅速な判断を下す必要があります。
しかし、伝えたいことがうまく相手に伝わらず、すれ違いや誤解が生まれることも少なくありません。
特に昭和から続くアナログな業界では、長年の慣習や言語化されていない「空気」に頼った伝達が根強く残っています。
こうした中で成果をあげるには、「簡潔かつロジカル」な説明・報告力が必須です。

数多くの調達バイヤーや工場現場で実績を積んできた私の経験からも、論理的なコミュニケーションは、トラブルを未然に防ぎ、業務効率を飛躍的に高める武器となります。
本記事では、その極意と実践演習法を、現場目線で具体的に解説します。

ロジカルな説明・報告とは何か

ロジカル=「筋道が通っていて、相手が納得できる」説明

ロジカル(論理的)な説明とは、「なぜ」「どうして」「だからこうなる」という因果関係が明快に示され、聞く人が納得・理解できる話し方です。
主観や感情ではなく、事実や根拠に裏付けられた説明が基盤となります。

簡潔=「冗長な説明や無駄な情報を省く」説明

単に情報を詰め込むのではなく、必要最小限の言葉でポイントを押さえて伝えるのが「簡潔」な説明のコツです。
なぜなら、忙しい現場では冗長な説明は時間のムダになり、相手の注意を引き留めておくことが難しいからです。

製造現場や調達購買の現実:なぜロジカルな説明が求められるのか

1. 多層的な意思決定プロセス

製造業、とくに上場企業や老舗メーカーでは、一つの決定を下すまでに複数の階層・関係部門を通す必要があります。
一度の説明で意思疎通が図れなければ、手戻りや伝言ゲームが発生し、大きなタイムロスにつながります。
ロジカルな報告があれば、誰が読んでも経緯と内容を把握でき、迅速な判断が促されます。

2. グローバル化・多文化環境への対応

近年、海外サプライヤーとのやりとりが増えています。
共通の言語やバックグラウンドがない中では、曖昧な説明は通用しません。
論理構成が明快で、簡潔な説明だけが相互理解の架け橋になります。

3. トラブル発生時のリカバリーに不可欠

設備トラブル、納期遅延、不具合流出など、工場では予期せぬ事態が頻繁に発生します。
こうした際には、現状・原因・対策を端的かつ論理的に説明するスキルが、組織の対応力を大きく左右します。

ロジカルな説明の基本フレームワーク

1. PREP法

Point(結論)、Reason(理由)、Example(具体例)、Point(再結論)の順に説明する手法です。
これを軸にすれば、要点をぶらさず簡潔に伝えられます。

2. FABE(機能・利点・メリット・証拠)

Fact(事実)/Feature(特徴)、Advantage(優位性)、Benefit(利点・価値)、Evidence(証拠)の頭文字をとったフレームワークです。
特に調達購買の世界では、単なる事実やカタログスペックだけでなく、「なぜそれが有用なのか」まで論理的に説明することが求められます。

3. 5W1Hで抜け漏れなく構成する

When(いつ)、Where(どこで)、Who(誰が)、What(何を)、Why(なぜ)、How(どのように)の観点で整理します。
特に報告書・レポート作成時の漏れ防止に有効です。

現場で成果を出すための「実践演習」

演習1:「部品納入遅延」の報告と対策説明

<シチュエーション>
サプライヤーからの部品納入が予定より2週間遅れそうです。
現場責任者として、調達購買部や生産管理部門へ報告し、今後の対策を示す必要があります。

<悪い例>
「A社で部品が遅れるようです。遅延理由は不明ですが、状況が分かり次第連絡します。」

<良い例(PREP法&5W1H活用)>
「A社の部品Xが、当初予定の5月10日から5月24日へ2週間納入遅延します。
理由は、A社工場の主要設備が5月2日に故障し、復旧に10日を要するためです。
現在代替品の調達と、工程の見直しによるリカバリー策をA社と協議中です。
進捗は5月15日に再度報告します。
納期遅延による組立工程への影響を最小化するため、生産スケジュール変更のご協力をお願いします。」

ポイントは、結論からはじめて理由と現状(What, Why, When, How)を明確にし、対策・今後の対応について端的に伝えることです。

演習2:工場改善提案の社内プレゼン

現場で「アナログ」な作業が多く、デジタル化するアイデアを提案したい場合を考えます。

<NG例>
「ペーパーレス推進したいです。紙だとめんどくさいから困ります。」

<GOOD例(FABE活用)>
「現場の検査記録を紙からタブレット入力に切り替える提案です(Fact)。
従来の手書き記録に比べ、データ転記ミス・保管の手間が削減でき、記録の即時共有も可能です(Advantage)。
実際、A部門ではタブレット導入後、作業時間が1日あたり30分短縮されています(Benefit & Evidence)。
今回の導入により、全体で月20時間相当の工数が削減可能と見込まれます。」

ここでも、事実や根拠(数字・実績)を最初に示し、どんなメリットがあるのかを論理的に説明しています。

昭和型アナログ文化をどう乗り越えるか

属人的伝達や「読めばわかる」からの脱却

長年同じメンバーだけで仕事を回している現場では、説明があいまいでも「察してくれる」「分かるだろう」で済んできました。
しかし、世代交代や人材流動性が高い今、その方法では品質や生産性が維持できません。
定量的・論理的に説明・記録する文化が必要です。

「空気を読む」日本的コミュニケーションの弱点

あいまいな説明や根拠なき「なんとなく」がトラブルや誤解の温床になってきました。
ロジカル説明は、「空気」ではなく「論拠」と「筋道」にもとづき全員の共通理解をつくる武器になります。
とりわけ、多拠点・多国籍・多世代が絡むサプライチェーンでは、最重要です。

バイヤー・サプライヤー双方の視点を持つことが必須

バイヤー視点:正確な情報が商談・意思決定の要

調達バイヤーは、価格交渉だけでなく、納期・品質・リスク管理まで担います。
情報の「鮮度」と「正確性」、「過去データとの比較」こそが意思決定の源泉です。
現場やサプライヤーからの報告・提案が論理的でなければ、交渉やリスクヘッジで致命的な判断ミスを招きます。

サプライヤー視点:バイヤーの頭の中を読み説く

サプライヤーもまた、「自分の説明は現場目線・数値根拠に基づいているか」「なぜこの提案がバイヤーの課題解決につながるのか」を日頃から自問すべきです。
相手のKPIや困りごとに響く「成果」「根拠付きの提案」こそ、選ばれ続ける取引先の条件です。

すぐできる!ロジカル説明トレーニング法

毎日の業務日報や会議報告でフレームワーク活用

PREP法や5W1Hなど、最初は意識的に型にはめてみることです。
慣れるまでは、チェックリストをつくって、説明や報告書に「理由」「根拠」「具体策」などが漏れていないか確認しましょう。

仮説思考と「So-What?」「Why?」の自問習慣

自分の説明や提案に対し、「それが何を意味するのか(So-What?)」「なぜそうなのか?(Why?)」を繰り返すことで深みが出てきます。
特に数字や過去実績を必ず併せて盛り込む癖をつけると、説得力が格段に増します。

第三者に説明してみる「相手目線」演習

同僚や他部門のメンバーに自分の説明をテストしてもらい、「分かりやすかったか」「余計な部分、足りない情報がないか」をフィードバックしてもらいましょう。

まとめ:製造業の未来を切り拓く「ロジカル説明力」とは

昭和時代から続く慣習や属人的な情報伝達は、変革期の今、見直しの必要に迫られています。
簡潔で筋道の通った説明・報告力こそが、多様な現場・人・企業をつなぎ、ミスやトラブルを最小化し、価値創造を生み出します。

調達バイヤー、現場管理職、サプライヤー担当者、それぞれの立場で「相手目線」「数値・根拠付き」のロジカルコミュニケーションを実践することが、安定した事業運営の土台となります。

今日からぜひ、PREP法や5W1Hを取り入れた説明・報告の練習を始めてみてください。
変化の激しい時代にこそ、「伝える力=現場力」です。
あなたの現場の説得力と信頼性が高まり、製造業界全体の進化につながることを心から願っています。

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