投稿日:2025年11月28日

OEMトレーナーに適した素材厚み(オンス)の選定基準と着心地設計

はじめに:製造業現場が見落としがちな「トレーナー素材厚み(オンス)」の重要性

製造業、特にアパレルOEM事業に携わる方にとって、トレーナーの素材厚み、すなわち「オンス」の選定は、最終製品の品質・着心地・耐久性といった付加価値に直結する要素です。

本記事では、OEMトレーナー開発に携わるバイヤーやエンジニアの方々へ、現場の豊富な経験をもとに「素材厚み(オンス)」の選定基準と、その着心地設計の考え方を徹底解説します。

また、昭和的なアナログ志向が根付く製造現場と、最先端デジタル化の融合という日本製造業ならではの事情も踏まえ、より実践的な内容となるようまとめています。

そもそもオンス(oz)とは? 製造現場視点で再点検

オンス(oz)は、1平方ヤードあたりの生地の重さを表す単位です。

トレーナー素材では、通常5oz程度(ライトウェイト)から14ozを超える(ヘビーウェイト)までがラインナップされます。

ただし、単純に“厚さ=品質が高い”でも、“薄さ=安価”とも言い切れないのがOEMの難しさです。

オンス値が高くなるほど、生地は厚く重くなるため、
・保温性や耐久性は高まる
・重厚感が増し高級感も演出できる
・製造原価や物流コストがやや上昇
・着用時のごわつきや通気性の低下に注意が必要
逆にオンスが低いと、
・軽量で柔らかく、動きやすさや涼しさは確保
・ミニマルなデザインやインナー用途に最適
・薄くてヨレやすい、耐久性が不十分なことも
という特性があります。

このバランスを、現場知見とターゲットユーザーの用途、商流まで総合的に考慮することが重要です。

着心地設計を左右する、「単なる厚み」以上の3大視点

トレーナーの“オンス選び”は、単なるスペック比較を越えた「着心地設計」がキモです。

現場で重視するべき3つの視点を以下に整理します。

①ターゲット・用途起点の最適値とは

代表的な着用シーンや利用者ごとに、求められる素材厚みは大きく異なります。

・作業着・ユニフォーム用途(倉庫作業・現場作業等)
 →10~13ozのヘビーウェイト。耐久性と防寒性に優れる。だだし夏場やインナー用途には不向き。

・カジュアルファッション用途(普段着・部屋着)
 →8~10oz程度の中厚手。季節を問わず汎用性が高い。重すぎず肌当たりもしなやか。

・トレーニングウェアやスポーツ用途
 →5~8ozの薄手タイプもしくはストレッチ素材混紡。動きやすさ重視。

・企業ノベルティやSP商品
 →比較的低コストな5~8oz。大量生産かつ配布用でイメージ優先。

このように、同じ「トレーナー」でもターゲットや用途により求めるオンスが異なる点にご注意ください。

②快適性×耐久性のベストバランス

オンス選びは“快適性(着やすさ)”と“耐久性(長期間品質維持)”のトレードオフになるケースも多いです。

特に、洗濯耐久や摩擦、ピリング(毛玉)の発生しやすさも「厚み」と密接に関連します。

例えば、
・ライトオンス(7oz程度)は、汗を吸いやすく夏向き。こまめな洗濯には適するが、ヘビーユース想定なら中厚以上を推奨。
・ヘビーオンス(13oz以上)は、反復着用の多い職場や、アウター要素の強い仕様向き。洗濯を繰り返してもヨレにくい。ただし、重く固くなりやすいのでフィット感やパターン設計に一工夫必要。
このバランスを最終用途にあわせて調整しましょう。

③昭和アナログ現場×最新トレンドの融合

今なお日本の製造業界では、ベテラン職人の“感覚値”に頼る現場が珍しくありません。

「昨年と同じでええやろ」
「分厚いほど高級」「重いものが偉い」
といった固定観念が根付いている事例も多く見受けられます。

しかし、現代市場では
・ジェンダーレス化、細身・オーバーサイズ、レイヤード志向
・インバウンドによる体格バリアンスの拡大
・サステナブル原料や環境負荷低減素材の需要増
・オンライン販売での“着用感訴求”の重要度UP
など、素材選定思想そのものにアップデートが求められています。

現場長・バイヤーには、新旧両方の利点を理解したハイブリッドな素材選定が求められるのです。

バイヤー・現場担当が判断に迷わない! プロが実践する「素材厚み(オンス)」選定フロー

長年のOEM開発実績から得た「オンス選定の必勝フロー」をご紹介します。

1. ターゲット・スペック要件の洗い出し

・販売チャネル(量販・セレクト・ノベルティ等)
・ユーザープロフィール(性別・年齢・職種・用途)
・予想洗濯回数や、着用季節・気温など
・商品企画側の希望(カラバリ・プリント・刺繍等)
こうした要素を製品企画時にしっかりヒアリングし、後々の仕様変更を防ぐことが重要です。

2. 比較サンプルによる実使用検証

実際に7oz/10oz/13oz等異なる厚みサンプルを作成し、社内テストやユーザーテストを行いましょう。
着心地・重さ・見た目・洗濯後のヨレ、プリントの乗り具合などをチェックします。

また、「繰り返し使用」「極端な温度」「寝巻き使い」「女子・体格差ある着用者」など、想定幅広いパターンのフィードバックを集約しましょう。

3. サプライヤーとの綿密なコミュニケーション

アナログ現場の特徴ですが、同じ「10oz」でもメーカーや工場によって縫製・仕上げ・混紡率・糸番手など微妙に異なる場合があります。

・本当に同一仕様か
・測定誤差や公差範囲はどうか
・現場の工程都合(糸の入手性、閑散期/繁忙期の柔軟性)
等をしっかり打ち合わせ、サンプル段階で齟齬のないよう進めましょう。

4. “ストーリー化”による価値訴求を意識

特にBtoC製品やD2C事業では、単なる厚みスペックではなく「なぜこの厚みにしたか」「どんな現場目線課題を解決したか」を伝えることが付加価値となります。
・現場で求められる“タフさ”を再現
・洗濯ネガ要因と快適性の両立
・季節や年齢・用途を問わないニュースタンダード
といった“背景ストーリー”を商品企画・マーケティング部隊とも共有し、通信販売や営業トークにも活かしていきます。

将来の業界動向:厚み選定は「デジタル×感性」融合の時代へ

AIやIoTが急速に現場へ浸透する今後、トレーナーの“適正厚み”は単なるベテラン職人の勘に頼らない、データドリブン&多様化社会対応が求められるでしょう。

・スマートウェアラブルで着用者の快適度を測定
・AIによる気候や洗濯履歴から最適素材を推奨
・バーチャルフィッティングで全体験を設計
など、試験や現場知見のDX化が加速しています。

一方で、実際に「肌で感じた」ユーザーやバイヤー、エンジニアの感性=現場目線の判断力も引き続き重要です。

オンス選びを「素材×用途×シーン×感性×データ」と、多角的にとらえることこそ、今後のOEMバイヤー・サプライヤーに求められる新しい地平線と言えます。

まとめ:現場×理論で差をつける、OEMトレーナー素材厚み選定

OEMトレーナーの素材厚み(オンス)選びは、
・ターゲット・用途に合ったスペック思考
・現場での着用・検証の徹底
・サプライヤーとの協調によるベストバランス
・新旧文化・感性・データの融合
という「現場主義+理論的判断」がカギになります。

昭和世代ベテランの経験値も、令和世代の新風も、どちらも取り込んだ新しいOEM開発の在り方として、今こそ“オンス選定の一工夫”が大きな差別化要素となるでしょう。

素材厚みの選定から、現場の声や時代のニーズに応える“真に価値あるOEMトレーナー”を生み出し、日本ものづくりの未来に貢献していきましょう。

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