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投稿日:2025年7月6日

難削材加工を最適化する切削力測定と工具摩耗抑制技術

はじめに:難削材加工の壁を乗り越えるために

製造業界において「難削材加工」は、依然として避けては通れない課題です。
ニッケル合金、チタン合金、硬質ステンレス、難燃鋼など、加工が困難な材料は、次世代自動車や航空宇宙部品、エネルギー分野の最先端技術で大きく活用されています。
この分野で世界的な競争力を獲得するには、切削力測定によるプロセス最適化と、工具摩耗の抑制が鍵となっています。

本記事では、20年以上の現場経験と管理職としての視点を織り交ぜ、実践的な切削力測定の活用法と、アナログ文化が強く残る現場でどう業界動向が変化しているのかを深掘します。
これからバイヤーを目指す方、現場の調達担当者、サプライヤーの皆様が「バイヤー視点」を掴む一助になるよう、具体的かつ現実的なポイントを解説します。

なぜ難削材加工は難しいのか?

難削材の特徴と現場の悩み

難削材とは、「高温でも強度の低下が少なく延性が高い」「硬度が高い」「耐摩耗性や耐酸化性に優れる」など、過酷な環境下でも性能が落ちにくい特性を持った材料です。
しかし、同時に『切削時の発熱が大きい』『被削性が悪い』『チッピングやビビリが起こりやすい』『加工速度を上げると工具寿命が著しく短くなる』といった、現場泣かせの材料でもあります。

現場では、加工工程が長引くとコスト高、納期遅延、工具の頻繁な交換による作業効率の低下など、悪循環が生じます。
この負のスパイラルを断ち切るためには、”見える化”と”最適化”が不可欠です。

アナログから抜け出せない現場の実態

昭和時代から続く製造現場では、「職人の勘と経験」に基づいた加工条件決定がいまだ色濃く残っています。
加工異常が発生した際、「工具を変えてみる」「送りを落として様子をみる」程度で本質的な課題解決に踏み込めていないケースが少なくありません。
デジタル化・自動化の波は押し寄せていますが、「本当にその測定器やデータが現場で役に立つのか?」という疑問を持つ方も多いのが現実です。

切削力測定が変える“現場の闇雲さ”

切削力測定の基礎知識

切削力とは、工具が材料を削る際にかかる力です。
「主分力(切削方向)」「送り方向分力」「背分力(切り込み方向)」の3軸に分かれます。
測定には、主にダイナモメーター(力測定装置)や、工作機械組み込み型の力覚センサーが使われ、加工現象の“見える化”が可能です。

切削力測定のメリットとROI

切削力測定により
・加工中の異常(ビビり、チッピング、突発的破損)の早期検知
・最適工具選定、最適切削パラメータ決定
・加工データに基づいた標準化~熟練者のノウハウ継承
・工具寿命の予測・自動化(IoT/AI連携)の推進

これらが実現します。
切削力の変化から工具摩耗や破損のタイミングを捉えられれば、計画交換や適切なフィードバックが可能です。
特に難削材加工では1本数万円以上する専用工具が多く、工具トラブルによる材料ロスや再加工コスト、納期延長による機会損失も深刻です。
切削力測定の初期投資は数百万円かかることもありますが、実際の現場では年単位で数千万円の工数削減や品質不良の削減に繋がる実例が少なくありません。

難削材加工における工具摩耗と抑制の最前線

工具摩耗のメカニズム

難削材加工で生じやすい工具摩耗には、大きく分けて次の3つがあります。

1. 摩耗:切削温度上昇による工具材質の軟化
2. チッピング:加工負荷や振動により刃先が欠ける
3. アブレージョン:切削くず成分の付着による緩衝

いずれも、「切削温度」「切込み深さ」「送り速度」「クーラント」の影響を強く受けます。
従来「こうだったからこの条件で」という設定が、実は「過剰安全」または「リスク放置」だったことも珍しくありません。
ここに切削力測定を組み合わせることで、加工現象に最適な“攻めた条件”と“守った条件”の線引きが初めて理論的に可能となります。

最新工具の進化と使い方の本質

難削材向けの最新超硬工具、コーティング工具、スローアウェイチップはいずれもめざましい進化を遂げています。
例えば「ナノコーティング」や「特殊ダブルラップ構造」の採用により、工具の耐熱性・耐摩耗性は向上していますが、「良い工具を使ったから大丈夫」ではありません。

本当に効果を引き出すには、「最新工具×適切加工条件×プロセス制御(切削力測定)」の掛け算が重要です。

1. 加工条件(回転数、送り、切込み深さ)を微調整して、無駄な発熱や突発的な負荷増加を避ける
2. インターバル毎に切削力データを分析し、摩耗の進展を数値で把握
3. 工具メーカーとタイアップし、試作段階からデータフィードバックし最適化

現場で「データ→改善→標準化」を繰り返すことで、「毎回違う」「やってみないとわからない」を脱却できます。

昭和アナログ現場における業界動向と変化

自動化・DX化の適用現場事例

IoTやDXの導入で生産工程を最適化する動きは加速しています。
例えば、自動車業界大手では、切削力測定データをクラウドに蓄積し、AIが故障予兆や工具寿命をピンポイントでアラート化。
突発的な段取り替えや調整レスで、月あたり数百万円の工数損失が削減されます。

一方、中小工場や属人的な現場では、「デジタル化=管理コスト増」「ややこしくなるだけ」と敬遠されがちです。
しかし経験則とデータを組み合わせた“ハイブリッド現場”の導入が進みつつあります。
例えば「現場リーダーが摩耗予兆を切削力データで分析し、交換時期を図る」「測定データをサプライヤーと共有し、専用工具化/条件設定までチームで最適化」など、仕組み化と人の勘を効果的に共存させています。

バイヤー・サプライヤー双方から見た切削力測定と工具摩耗抑制

バイヤーが切削力測定を重視する理由

調達バイヤーは、コスト、納期、品質の三拍子を常に秤にかけています。
難削材加工では「不良」「破損」「納期遅延」が慢性的な課題となりやすいため、切削力測定と工具摩耗抑制のデータが与える安心感は大きいです。
バイヤー視点で評価される工場・サプライヤーは、単なる価格競争ではなく
・不良削減実績(データ提示)
・工具寿命の合理的な延伸提案
・段取り替え・トラブル時の迅速対応力(測定データ運用の実績)

これら具体的な”見える化”活動を積み重ねています。

サプライヤーがバイヤーの期待に応えるには

サプライヤー視点で重要なのは、「バイヤーが本当に困っている現場課題」を先回りして提案することです。
たとえば、「当社の切削力測定導入実例では、不良率3%減、工具寿命2倍まで延伸できました」「納期遵守率は99.2%を記録しています」など、数字に裏付けされた提案は非常に信頼されます。

また、切削力測定データの開示や、共同現場改善の仕組みが導入されれば、信頼関係が格段に強化されます。
ただし、「測定したいが人手や知見がない…」「費用負担が気になる…」といった悩みも理解し、初期のスモールスタートや測定サービス支援も有効です。

まとめ:ラテラルシンキングで難削材加工の未来を切り開く

難削材加工は、その難しさゆえに従来の枠組み・先入観が根強く残っています。
しかし、切削力測定による“現場の見える化”と、最新工具・データ運用の融合は、従来の限界を突破し、コスト・品質・生産性の新たな地平を切り開く土台です。

昭和の勘・経験を核にしつつ、データと新技術の導入で「挑戦と標準化」を回転させる。この“ハイブリッド現場力”こそが、今後の難削材加工現場の、そして日本全体の製造業競争力の源泉となります。

本記事が、難削材加工で悩む現場担当の方、バイヤーを志す若手、さらにサプライヤーの提案力を高めたい皆様に、実践的な気付きと新たな一歩を後押しできれば幸いです。

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