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社内システムとのデータフォーマット不一致で手戻りが増える課題

目次
はじめに〜データフォーマット不一致はなぜ発生するのか?
製造業の現場では、取引先やサプライヤー、そして社内のさまざまな部門との情報共有やデータ処理が日常的に求められます。
その過程で必ずと言って良いほど直面するのが、「社内システムとのデータフォーマット不一致」による手戻りです。
この課題は、ExcelやCSVなどのデータ形式や、項目名・データ型の違い、桁数や文字コードの相違といった技術的な問題だけでなく、業務フローや組織文化の違い、さらには「昭和から令和に移行しきれないアナログ体質」が根底に根付いている場合も珍しくありません。
本記事では、なぜデータフォーマットの不一致が発生するのか、何が現場にどのような影響を与えているのか、そしてその抜本的な解決策について、調達・生産・品質管理・工場自動化の現場経験を踏まえて深掘りします。
現場で多発するデータフォーマット不一致の実例
1. サプライヤーとバイヤーのフォーマットの違い
製造業では部品や原材料の発注・納品時に、注文書や納品書、検査成績書などのやり取りが数多く発生します。
バイヤー側(発注元)の基幹システムでは、製品コードや数量・ロット番号・納期が決められた形式で管理されています。
一方、サプライヤー側(供給元)は、独自の管理ルールや会計ソフト、そして時に手書き書類を併用して管理していることもあります。
例えば「20240619」と「2024/06/19」のように納期の日付表記一つにしても、受領後に現場で修正や確認作業が発生し、データ連携時にエラーが頻発します。
“製品コードの前ゼロあり・なし”や、“検査項目の並び順が異なる”といった些細な違いが、業務フローに大きな手戻りを生み出しているのです。
2. Excel依存による伝言ゲーム
工場や事務部門では、現場に強く根付いたExcel文化があります。
本来であれば、システムに直接入力し一元記録するのが理想ですが、「現場Aで出た記録をExcel化→B部門で別のExcelにコピペ→最終的にシステムへ手入力」というような伝言ゲームが横行しています。
この過程で、列のズレや誤変換、データ欠損が起きやすく、最終的に手戻りや確認作業が発生してしまいます。
ここには、「システムに直接アクセスできない」「現場用の入力フォーマットとシステム用のフォーマットが異なる」といった、昭和から令和にかけて残る超アナログ文化が根強く影響しています。
3. グループ会社間・部門間の非互換性
大手メーカーでは、複数のグループ会社や国内外拠点があります。
ERPや生産管理システムの導入状況、運用ルール、カスタマイズの度合いが異なるため、同じ「完成品納入リスト」と名が付いていても、データ項目や桁区切り・出力形式が全く異なります。
これにより、会議資料や報告書作成時に「A社フォーマット→B社フォーマットへの変換マクロの作成」といった手間が常態化しています。
場合によってはVBAやRPAツールで“お化粧マクロ”が乱立し、現場のメンテナンス負荷を高くしています。
データフォーマット不一致がもたらす現場のロス
1. 手戻り作業の増加と本質作業の圧迫
フォーマット不一致があると、現場オペレーターや事務担当者は、データを規定の形に「直す」作業に多くの時間を割かれます。
本来は付加価値の高い問題解決や改善活動に注力できる人材が、「数字の並び替え」「セルの整形」といった単純作業に忙殺されるのは企業全体にとって大きな損失です。
2. 品質不良や納期遅延の誘発
手修正によるコピペミスや、項目ズレによる伝達漏れが原因で、発注数量や納期、仕様に誤りが生じることは珍しくありません。
このような情報伝達ミスによって、製品不良や納期遅延、顧客満足度の低下といった二次的なトラブルに発展することも大いにあります。
3. 監査・トレーサビリティ対策の難航
品質保証や監査の観点では、情報がデジタル化され一元的に管理されていることが不可欠です。
しかし、フォーマット不一致やExcel乱立により「どのデータが正なのか分からない」「過去データが追いきれない」といった事態に発展しています。
工場のカイゼン文化や、最近強まるSDGs・ESG経営推進の流れにも逆行するロスと言えます。
昭和体質を抜け出すためのラテラルシンキング
1. 「フォーマットは現場に寄り添う」の発想転換
従来は、社内システムの都合に応じて「サプライヤーや関連部門に合わせてもらう」という発想が支配的でした。
しかし、これでは手間や納期の遅延など間接的なコストが増すばかりです。
現場に根付いたアナログ文化やExcel運用の“良さ”も活かし、「現場の入力しやすさ」「サプライヤーの負担軽減」の視点で、双方向に歩み寄るアプローチ—たとえば、バイヤーとサプライヤーが合同で使いやすい共通テンプレートを作成する、現場ヒアリングから新フォーマットの仕様を決める—が、かえって全体最適となるケースも多いです。
2. デジタル化と業務フロー標準化のハイブリッド
完全なデジタル化やERP連携は理想ですが、現場の運用実態や人員リテラシーを無視したシステム導入は、高い定着率を得られません。
まずは「ミスが多発している伝票のみ」など、業務インパクトの大きい部分から標準フォーマット化・連携化を推進し、現場に小さな成功体験を積ませていくことが“令和型現場改革”の鍵となります。
また、業務フロー自体も「誰が・いつ・どのデータを使うのか」を可視化し、フォーマット標準化の前提となる業務設計図を作ることが重要です。
3. サプライチェーン全体のフォーマット連携を見据える
トヨタ生産方式の「ジャストインタイム」や「かんばん方式」も、情報の一貫性があってこそ成立します。
サプライヤーのシステム仕様やデータ管理運用を理解し、バイヤー側と協力して情報連携の仕様を統一する。
場合によっては、中間的な“受け皿”としてRPAやEDIサービスを導入し、「自動で変換&取り込み」ができる橋渡し役を作ることで、現場の負担を最小化できます。
現場のプロが実践する5つの即効対策
1. バイヤー・サプライヤー合同のフォーマット分科会設置
現場と現場をつなぐキーパーソン同志で、“手戻り作業がどこで生じているか”を洗い出し合い、両者が無理なく使えるテンプレート案を協議します。
管理部門やIT部門も巻き込むことで、現場要望とシステム要件のギャップを最小化しやすくなります。
2. データ受け皿テーブルの整備と自動マッピングツールの活用
サプライヤーフォーマットをそのまま受け入れる“緩衝エリア”としての受け皿テーブルを設け、そこから自社用フォーマットに自動変換するマッピングツールや、業務用RPAの導入を検討します。
IT部門の工数確保や、自動変換ルールのメンテナンス体制構築もポイントです。
3. 主要フォーマットの標準化(マスタ化)
伝票やリスト、出荷明細といった頻出書類については、標準フォーマット化・マスタ登録を推進します。
また、バージョン管理や変更履歴もしっかり残すことで、現場の混乱を最小限に留めます。
4. データ品質向上研修・eラーニングの実施
現場担当者のITリテラシー向上が長期的な解決には不可欠です。
「手入力は避けてコピペや参照で済ます」「不一致時にエスカレーションする」など、現場レベルでミス防止を意識した教育を行いましょう。
5. 小さな現場改善(カイゼン)活動の積み重ね
大きなシステム改革だけでなく、日常業務のなかで「この手戻りはなぜ起きているか」を現場目線で地道に抽出し、カイゼン提案につなげることが最も効果的です。
「気づき→提案→試行→定着」のPDCAサイクルを通じて、現場自体を強くしていきます。
まとめ〜“つながる工場”への第一歩
社内システムとのデータフォーマット不一致による手戻りは、多くの製造業現場で根深く残る“時代遅れ”の象徴とも言えます。
しかし、昭和のアナログ文化にも理由があり、現場最適と全体最適のバランスが必要です。
内部だけで変えていこうとするのではなく、サプライヤーや関連部門の実態・悩みに寄り添い、現場発の改善とデジタル化を組み合わせて推進する。
小さな綻びの見落としにこそ、大きな競争力・顧客信頼の礎があることを、ベテラン現場の知見として強調します。
”つながる工場“、“ストレスの少ない現場”の実現へ、一歩一歩、主体的に取り組んでいきましょう。
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