- お役立ち記事
- 陶器マグ印刷で露光時に発生するピンホール防止のための脱気処理
陶器マグ印刷で露光時に発生するピンホール防止のための脱気処理

目次
はじめに:陶器マグ印刷におけるピンホール問題の現状
陶器マグへの印刷は、販促品やオリジナルグッズの需要増加を受け、多くの製造現場で一般的な工程となっています。
しかし、印刷工程のなかで意外と多く発生するのが「ピンホール」と呼ばれる小さな穴や抜けです。
これはとくに、感光性乳剤(スクリーン印刷の時に使う感光材)の露光時に入りやすい現象です。
ピンホールひとつで製品全体の印象を左右し、歩留まりの低下や再作業によるコスト増、納期遅延の主要因にもなります。
数値制御設備や検査装置の導入が進んだ今なお、こうしたトラブルが出るのは、陶器マグ印刷の現場が「人のわざ」や「経験による勘」に頼り続けてきた昭和的なアナログ工程も色濃く残っているためです。
本記事では、現場歴20年以上の視点から、根本的なピンホール発生原因と最新事例を整理し、なぜ一般的な対応策だけでは不十分なのか、そして“脱気処理”による本質的な対策方法について掘り下げます。
なぜピンホールが発生するのか:メカニズムの理解が第一歩
ピンホール発生のメカニズムは、単純に「ゴミが混入したから」だけではありません。
乳剤の物理的・化学的問題
印刷用の感光性乳剤は、ミクロン単位で微細な穴を生じやすい性質があります。
これは乳剤生成時に混入した微小なエアや、撹拌不足により混ざり切らなかった成分、または容器内壁から剥がれた微粒子など複数の要素が複雑に絡みます。
スクリーンの取り扱いと環境要因
さらに、乳剤を塗布する際にスクリーン(メッシュ)に残る静電気や油分、吸湿の影響、現場の温湿度バランスも、乳剤の密着や膜厚の均一性に影響します。
とくに日本のような四季のはっきりした地域では、空調管理がルーズな現場ほど乳剤の乾燥や硬化にムラが生まれやすいです。
脱気不足が及ぼす影響
多くの現場で見落とされがちなのが、「乳剤の脱気不足」です。
乳剤のなかに微細な気泡が含まれるまま感光・現像を行うと、気泡部分に光が届かずに露光ムラが起こり、ピンホールが生じます。
従来対策の落とし穴:清掃と検査だけでは根本解決しない
現場でよく取られる一般的な対策は、「クリーンな環境を整え、乳剤のろ過やスクリーンの拭き上げを徹底しましょう」というものです。
また、「湿気、油分、静電気を避けるようエアブローや専用クリーナーを使いましょう」とも指導されます。
これらが一定の効果を持つことは間違いありません。
ですが、それにもかかわらずピンホール不良がゼロにならないのはなぜでしょうか?
それは、現場管理がいまだアナログ的だからです。
作業者の力量や注意力、慣れに依存するため、「今日はたまたますべて上手くいった」という好運な日と、「なぜか不良が多発した」という日の再現性・安定性が低いのです。
しかも、あいまいな管理基準・記録不足の文化が根づいており、不具合の水平展開(対策の他ライン応用)や、計測データの蓄積が十分ではありません。
ラテラルシンキングで発想転換:脱気処理の導入を
ここで一歩進んだ考え方が必要です。
「そもそも乳剤に“気泡”や“溜まり”が入らなければ、ピンホール発生そのものを大きく抑制できるのでは?」
この発想に基づき、自動車部品・半導体工場などで浸透している“真空脱気”技術を、陶器マグ用の印刷乳剤工程に応用する動きが先進現場で出始めています。
脱気処理とは?
脱気処理とは、乳剤を専用の真空容器や減圧デシケーターなどで“減圧状態”に置き、内部の溶存気体や混入エアを除去する工程です。
これにより、塗布時の気泡混入や乾燥硬化後の空隙形成が大幅に減少します。
科学的な根拠に基づく仕組みで、ヒューマンファクター(作業者のバラツキ)に依存しない安定化が実現できます。
陶器マグ印刷現場への導入事例
たとえば、某メーカーでは乳剤調合から塗布までの間に必ず真空ポットを噛ませ、気泡抜きのシーケンスを組み込んでいます。
このシステム導入後、ピンホール起因の不良率が従来0.5%から0.02%に激減し、再作業工程や検査負荷も年間40%削減できたと報告されています。
導入のポイント
– 市販のラボ用真空脱気装置でも十分効果が出る
– 乳剤メーカーと調整の上、適正な脱気圧力・時間を実機検証する
– 日々の記録を標準作業手順(SOP)に組み込み、管理職が適切に点検・指導する
このように、少し発想と設備投資を変えるだけで、現場の改善・不良撲滅が現実的になるのです。
サプライヤー・バイヤーの視点:なぜ脱気処理が差別化要素になるのか
製造業の川下(バイヤー)担当者や購買部門は、現場で生じるムリ・ムダ・ムラを如何に削減し、安定品質かつコスト競争力のあるサプライヤーを選定するかに苦心します。
バイヤーが求める要素
– 不良品ゼロへの取り組みと、その再発防止のための“仕組み”があるか
– データ蓄積やトレーサビリティ管理の徹底
– 作業が属人化せず、標準化・自動化が進んでいる
この観点でいえば、脱気処理のような科学的・仕組み的アプローチを導入するサプライヤーは、「根本的な品質保証体制がある」とバイヤーから高く評価されます。
特に昨今は、単なる価格競争だけでなく、SDGsやリスクマネジメント観点からも「クレーム発生を未然防止できる現場」が競争力となります。
納入先への品質保証説明や監査時にも“差別化の武器”として説得力があります。
ピンホール防止のための脱気処理:実装へのアドバイスと業界動向
では、実際に貴社で脱気処理を導入したい場合、何から始めるのが最良でしょうか。
段階的な進め方例
1. 乳剤調合~塗布ラインの現状の問題点を点検。ピンホール発生パターンをデータで可視化
2. 小型真空脱気装置をトライアル導入。検証期間を設け、品質変化を分析
3. 効果が認められたら、SOP(標準作業手順書)改訂と作業者教育を徹底
4. 上位工程との連携(例えば乳剤の原材料管理、スクリーン前処理等)も見直し、不良要因の根絶を図る
今後の業界動向
最近では、AI画像検査装置と連動してピンホール不良をライン自動検出→原因工程まで“逆行追跡”できるスマート工場化も急速に進んでいます。
工場のIoT化が進むなか、「真空脱気→高精度検査→原因工程の特定とフィードバック」の自動ループが今後の主流になります。
ひと手間かけた脱気処理が、将来の「クレームゼロ体質」「自動化体質」の基盤技術なのです。
まとめ
陶器マグ印刷におけるピンホール不良は、「昭和の現場的な属人的ノウハウ」だけに頼っていては根絶が難しい現象です。
しかし、乳剤の脱気処理という少し先を行く技術・仕掛けを導入することで、現場力と“仕組み力”が融合し、安定した品質・管理性が手に入ります。
サプライヤーの立場では、脱気処理工程を明確にバイヤーへアピールすることで、自社の差別化・取引強化が可能です。
また、現場作業者・管理者としては、設備や工程を見直すことで「ムダな再作業・検査負荷が減り、本来業務に集中できる」ようになります。
昭和から続くアナログ現場と最新技術・考え方の融合が、製造現場に新たな地平線を拓く時代です。
ぜひ、脱気処理の導入でピンホールゼロの新時代を迎えてください。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)