投稿日:2025年10月12日

おにぎり海苔のパリパリ感を守る乾燥剤封入と湿度管理工程

はじめに:おにぎり海苔の“パリパリ感”はこうして守られる

日本人にとって馴染み深いおにぎり。
その味わいを大きく左右するのが、海苔の“パリパリ感”です。
製造現場では、口に入れた瞬間の食感を保つために、微細かつ高度な工夫と技術が求められます。
今回は、製造現場のプロ目線で、乾燥剤の封入から工場の湿度管理まで、「おにぎり海苔のパリパリ感を守る」ための一連の工程と、アナログ業界ならではの現状や今後の展望について解説します。

おにぎり海苔の品質管理の重要性

おにぎり用の海苔は、その水分含有量や保管方法によって味や食感に大きな違いが生まれます。
特に大量生産現場では、湿気をいかにコントロールするかが海苔の品質に直結します。
工場としては、機械の導入や工程管理、包材の改良など、様々な観点で海苔の“パリパリ感”を維持する努力が続けられています。

基本工程:なぜ乾燥剤が必要なのか

海苔は非常に湿気やすい

海苔は薄くて多孔質な構造を持ち、空気中の水分をすぐに吸着してしまいます。
特に、炊きたてのご飯を包む場合、一気に湿気を吸い込みやすい環境となります。
市販されている「食べる直前に海苔を巻くおにぎり」は、そのパリパリ感を長時間保つため、乾燥剤の封入が不可欠です。

乾燥剤封入のメリット

乾燥剤は、包装内の湿気をすばやく吸収し、海苔のサクサク感を保ちます。
海苔だけでなく、ご飯や具材から発生する微かな水分もキャッチ。
これによって、製品輸送中や販売時にも高品質なおにぎりを消費者に届けることができます。

現場目線の乾燥剤封入プロセス

どこで乾燥剤を入れるのか?

乾燥剤の封入は、製造ラインの“最終工程直前”が基本です。
衛生面に配慮したクリーンルーム、または専用のパッケージングエリアで、オートメーション設備やセミオートの包装機によって行われます。
ここで封入漏れや混入ミスが起きると、製品全体の品質クレームにつながるため、徹底したチェック体勢が取られています。

人手による工程管理の現実

大手工場では自動化が進みつつあるものの、実は国内中小の多くの現場では“人手”による目視チェックや手作業が残存しています。
特に昭和から続く老舗メーカーや地域密着型の工場では、「この工程はベテランの職人しか任せられない」というアナログな文化が根付いています。
ヒューマンエラーを最小限に抑えるために作業標準書の徹底や、短時間ローテーション、ダブルチェック体制など、現場独自の工夫が積み重ねられています。

包材と工場内湿度のコントロールが決め手

包材選定の進化

一昔前の包材は、ポリエチレン単層構造が主流でしたが、最近では防湿・防酸化性能を持つ多層フィルムが一般化しています。
透湿度(水分を通す度合い)やガスバリア性を高めつつ、フィルムの厚さや柔軟性、印刷適性を両立させることが求められます。
高度な性能を持つパッケージはそれだけコストも上がるため、バイヤーや購買担当者は「コスト」と「品質目標」の最適バランスを見極める必要があります。

湿度コントロールの具体的方法

工場内には、製造エリアごとに最適湿度の設定がされています。
一般的に、海苔のパリパリ感を守るには湿度40%以下が理想です。
しかし、季節や天候変動によって工場内湿度はすぐに影響を受けます。
そのため最新の空調機器やデシカント(除湿)機、さらには湿度センサーによるリアルタイムモニタリングシステムを導入し、常時監視・自動制御しています。

昭和時代は、窓の開け閉めや床の水撒き、あるいは局所的な除湿剤置きといった“現場の勘”に頼る方法でしたが、今やIoTの力やデータ分析による高度管理が主流となりつつあります。
ただし、未だアナログな湿度計や現場リーダーの目視によるチェックが現役の現場も少なくありません。

バイヤー目線で考える「パリパリ」保持への投資と要求

バイヤー(購買担当者)は、包材・乾燥剤のコスト、供給安定性、納期、環境対応(リサイクル性など)、包材ベンダーの信頼性を多角的に評価・選定します。
加えて、消費者目線での品質表記や包装の開けやすさ、安全性(誤飲防止の乾燥剤デザイン)も見逃せません。

一方、サプライヤー(包材・乾燥剤メーカー)は、バイヤーの品質要求レベルを正確に理解し、その期待を上回る提案(包材改良、新素材開発、コストダウン提案など)を打ち出す努力が不可欠です。
現場の「ユーザーの声」や「クレーム内容」を積極的にヒアリングし、モノづくり現場とバイヤーの橋渡しとなることが、差別化に直結します。

アナログ業界の課題と、これからのパリパリ感維持テクノロジー

昭和のやり方が根強く残る理由

古くから続く製造現場では、“勘と経験”という暗黙知が深く根付いています。
これが強みとなって現場力を支えてきましたが、属人化やリスク管理の観点からは課題も多いです。

・標準化が遅れる

・ITシステム導入への抵抗

・ベテラン退職による技術伝承の断絶

こうした課題の下、IoTセンサーでの湿度データ蓄積や、AIによる乾燥剤封入タイミングの最適化、フィルム自動選定など、“工場自動化”の波が徐々に押し寄せてきています。

未来への期待‐進化するパリパリ技術

現在、パリパリ感をさらに長時間維持できる「機能性包材」や、環境負荷を下げた生分解性乾燥剤の開発が進んでいます。
センサー連動型ラインでは、包装直前ごとのコンディション変化に応じて瞬時に包材種別や乾燥剤量を切り替えるシステムも登場しています。
また、消費者が家庭で海苔のパリパリ復元体験ができるミニ除湿パックの開発など、これまでの常識を超えたアイデアが次々と形になりつつあります。

まとめ:現場知と最新技術融合で、“最高のおにぎり体験”を支える

おにぎりの海苔をパリパリに保つ乾燥剤封入と湿度管理は、アナログな現場力とデジタル技術、両方の融合によって支えられています。
工場ごとの「こだわり」や「守るべき工程」、一方で常に進化する技術や新素材の導入による効率・品質アップの追求。
製造業に携わる皆さんも、これからバイヤーやサプライヤーを目指す方も、「パリパリ感」の裏側にある現場知と進化し続ける業界動向にぜひ目を向けてみてください。

情熱と探究心をもって、最高のおにぎり体験を共に支えていきましょう。

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