投稿日:2025年9月7日

OEMで作るオリジナルペットケージの設計と差別化ポイント

はじめに:OEMによるオリジナルペットケージ開発の現状

近年、ペットの市場は拡大し続け、個性的で機能的なペットケージへのニーズは高まりを見せています。

特にオリジナルブランドでペットケージを販売したいと考える企業や個人にとって、OEM(Original Equipment Manufacturer)による製造は大きなチャンスとなります。

しかし、ただ既存の型を流用するだけでは激化する市場で埋もれやすく、差別化が極めて重要な要素となるのです。

この記事では、製造業の現場で20年以上培った経験をもとに、OEMによるペットケージの設計プロセスや差別化のためのポイントを現場目線で解説します。

OEMとは?―ペットケージ業界での活用と本質

OEMの基本概念

OEMとは、委託側(ブランド主)が設計や仕様を決め、その製品を供給側(メーカー)が製造するビジネスモデルです。

製造設備やノウハウがない企業でも、短期間で独自商品を市場に投入できる利点があります。

ペットケージ業界でも、国内外の多くの工場がOEM受託体制を整えています。

なぜOEMが選ばれるのか

ペットケージの分野では、消費者の嗜好が多様化し、従来の画一的な製品では対応しきれなくなりました。

OEMを活用すれば、小ロットからニーズに合ったオリジナル仕様を実現しやすく、ブランドの個性を強く打ち出すことが可能です。

また、OEMメーカーは豊富な実績と専門知識を持つため、自社だけでは得られない設計上の提案やコストダウンのアドバイスも受けられます。

OEMペットケージの設計プロセス:現場視点での実践的な流れ

1. 要件定義(目的とターゲットの明確化)

OEM製品の成功の是非は、「どんな顧客に、どんな価値を提供したいか」を明確にすることが起点となります。

例えば、単身世帯向けの省スペースモデル、大型犬向けの高耐久型、多頭飼い対応型、インテリア調和型など、ペットオーナーのライフスタイルに細かく合わせる必要があるのです。

ターゲットを絞り込み、解決したい課題(掃除のしやすさ、安全性、組立の手軽さ、価格帯など)を具体化することが重要です。

2. 構造設計と素材の選定

ケージの構造と素材は、差別化の核となるポイントです。

現場では、コストと加工性、安全性、強度、軽量性などを天秤にかけて意思決定がなされます。

例えば、
– スチールワイヤーと樹脂のハイブリッド構造
– 家具調の天然木や竹の使用
– 日々のメンテナンス性を高める着脱式パネル

こうした工夫は、工場側の加工機能や材料調達力に左右されるため、OEMメーカーと密なコミュニケーションを図りながら詰めていきます。

3. 安全基準と品質管理

ペットケージは、一時的な収容だけでなく、ペットの安心・安全な空間を守る役割も担います。

日本国内の場合、PL法(製造物責任法)やJIS規格などが指標となります。

子供やペットが怪我しないよう角の形状や部品の取り付け強度、誤飲を防ぐためのパーツ選定など、現場のノウハウとOEMメーカーの品質管理体制が不可欠です。

工場によっては、部品ごとの受入検査や、組立後の振動・耐圧テストなど、第三者機関を用いた評価を提案される場合もあります。

4. 試作・テストマーケティング

設計がまとまったら、試作品を作り実際の使用感を確認します。

私が現場で重視していたのは、動物病院やペットショップなど外部のプロの声を聞くことです。

多頭飼いの飼い主さんや高齢者の使い勝手、掃除や耐久性へのリアルな評価をもとに、どこまで量産前に手直しするかが勝負の分かれ目となります。

また、社内に実装するだけでなく、インフルエンサーを通じたテスト使用など新しいアプローチも有効です。

アナログから抜け出せない業界の“今”と差別化の着眼点

昭和型の商習慣が根付く業界動向

製造業界の多くは、いまだにFAXでの受発注、現地チェック、根回しといった古い商習慣が色濃く残っています。

ペットケージをOEMで作る場合も、口頭説明や現物合わせが主流で、設計図や仕様書をきちんと電子化している工場は多くありません。

このような現場だからこそ、以下のようなポイントが差別化につながります。

1. デジタル化の積極導入

いち早く設計から受発注、出荷管理までのデジタルツールを導入することで、製品ごとのトレーサビリティ、短納期ニーズへの柔軟な対応、現場作業者への情報共有を実現できます。

IoTやバーコードによる在庫・品質管理も、製品の信頼性を高める武器になります。

2. ユーザー体験重視の設計提案

業界の多くは“メーカー起点の設計”に偏りがちです。

「この工場ならここまでできる」と頭打ちにならず、ペットオーナーの現実の困りごとから逆算した設計が鍵です。

例えば、
– ペットの成長に応じて広げられるケージ
– インテリアとして置けるデザイン性
– 掃除を革命的に楽にするギミック
– 工具不要の簡単組立て
など、生活者目線での新しさが、ベテラン職人の「いつもの作り方」に変化をもたらします。

3. SDGs・エコへの視点

近年、特に重要視されているのが環境配慮とサステナビリティです。

竹素材やリサイクルプラスチック、分解しやすい構造を設計段階から盛り込み、環境配慮型製品として打ち出すことが新たな市場を開拓します。

現場としては、原材料調達や廃材処理のプロセスも見直しを迫られるため、OEMメーカーと一体になって挑戦することが増えてきました。

OEMバイヤーの“本音”と、優れたサプライヤーとは

現場管理職の視点:バイヤーが重視すること

20年以上OEM製品の仕入れや開発に関わってきて痛感するのは、バイヤーが求めているのは「製品だけでなく課題解決力」です。

価格競争は当然ですが、それ以上に
– 急な変更リクエストへの柔軟性
– 品質異常時のトラブル対応力
– 量産立ち上げや納品までの段取り力
– 工場都合ではなく顧客都合への最適化
といった、現場での“痒いところに手が届く対応”が評価点になります。

サプライヤーが意識すべき現場の情報共有

優れたサプライヤーは、バイヤーが本当に困っていることを察知する力があります。

例えば、設計変更の情報が工場の現場まで素早く伝わる体制づくりや、納品直前の細やかなチェックリストの共有、製品や材料のトレーサビリティ資料の即時提出など、細条的な対応が信頼獲得に直結します。

また、見積り段階での“隠れたコスト要因”を正直に出し合い、結果的に納期遅延や品質問題を未然に防ぐことが、パートナーシップを強くします。

現地工場の視察や、現場オペレーターとの意見交換

現場のリアルな声は、紙や画面上の資料だけでは読み取れません。

実際に工場を訪れて、作業員の手順や使っている工具、環境の安全性や衛生状態を観察することで、多くの改善点やリスクが具体的に見えてきます。

OEM製品は、こうした“泥臭い現場コミュニケーション”が安心と信頼の礎になるのです。

まとめ:これからのOEMペットケージ開発への提言

世界的なペットブームの波に乗り、OEMによるオリジナルケージ開発はますます多様化しています。

差別化のためには、設計段階からユーザー視点を徹底することはもちろん、デジタル技術やSDGsの観点も積極的に取り入れる必要があります。

また、バイヤーとサプライヤーが“パートナー”として互いの現場を理解し、本音ベースで情報を共有することが、急激に変わる市場での成功を呼ぶのです。

製造業ならではの職人気質と、現場改善への飽くなき情熱を糧に、ぜひ他にはないオリジナルペットケージ開発へ挑戦していただきたいと思います。

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