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投稿日:2025年6月10日

壊れないねじ締結体設計とゆるみ防止対策

はじめに:壊れないねじ締結体設計と現場の課題

製造業の現場では、ねじの締結体が「緩む」「壊れる」というトラブルは非常に多く発生しています。
私が20年以上現場で経験してきた中でも、製品の不具合の根本原因のひとつが、ねじ締結部の設計や運用ミスによるものだったことは数えきれません。
ねじ一本のトラブルが、工場全体の生産効率や品質、そして顧客信頼を大きく損なうこともあるのです。

この記事では、現場目線で、壊れないねじ締結体のための具体的設計手法と、昭和から続くアナログな業界風土でも導入しやすい実践的ゆるみ防止対策について徹底解説します。
「なぜねじが緩むのか?」、「最新の設計思想と実践ポイント」、「バイヤーやサプライヤー双方に知ってほしい購買・設計段階の配慮」についても深掘りします。

ねじ締結体トラブルの現実:よくある失敗例と背景

ねじ締結体のトラブルには、実に多くのケースがあります。
たとえば、

– 機械の振動でボルトが緩み、部材が脱落・破損
– 温度変化で締結力が失われ、隙間やガタツキ発生
– トルク管理ミスで締めすぎてボルトが破断
– 再使用したねじが緩んで事故につながる

こうした現象は、現場の工夫や「勘所」だけでは防ぎ切れません。
設計ミス・締結手順の徹底不備・素材や製品選定ミスが複合的に絡み合うため、再発防止が難しいのです。

さらに、日本の製造業は今も「現場の熟練工の経験と勘」「昭和の手順書のまま」運用している会社が多く、体系的にねじ締結体を見直す文化が根付きにくいという背景があります。

なぜねじが緩むのか?理論と現場のズレ

そもそも、なぜねじが緩むのでしょうか。
理論的には、以下4つが代表的な緩み発生メカニズムです。

1. 振動・衝撃による摩擦力の低下

ねじ山と座面の摩擦に頼りきった従来設計では、微小な振動や衝撃が幾度となく作用すると、摩耗や「微動摩擦」現象が起き、次第に初期の締結力を失います。

2. 繰り返し荷重・熱膨張収縮による緩み

自動車のエンジンルーム、産業機械、家電…すべて熱による膨張収縮、そのたびにねじには繰り返し荷重が発生します。
この際、金属材料自体の「クリープ現象」(時間経過による変形)や応力緩和が進み、初期の締結力を徐々に喪失します。

3. 不適切なトルク管理

設計図通りのトルク値で締付けされていない、あるいはトルクが締付け力にきちんと変換されていないと、そもそもの締結体強度が得られません。
現場では「手の感覚」に頼って締めているケースも多々あります。

4. 材料の表面粗さや塗装・潤滑剤の影響

塗装や潤滑剤、表面処理間違いなどによる「滑りやすさの違い」で規定の摩擦力が得られず、締結力にばらつきが出る現象も頻発しています。

こうした理論は設計段階でも学びますが、実際に現場でどこまで意識できているかが問題です。

壊れないねじ締結体設計のポイント

壊れないねじ締結体をつくるためには、単なる部品選定やトルク設定だけでは不十分です。現場と設計、調達、品質が一体となって、以下の観点を押さえた設計が重要です。

1. 初期締結力に「安全率」を持たせる

緩みやズレを想定し、設計段階で必要締結力に10~30%の余裕(安全率)を持たせることが基本です。
しかし、安全率を高めすぎるとねじが破断するリスクもあるため、現場での確認作業やCAE(数値解析)によるシミュレーションも取り入れましょう。

2. 摩擦係数のばらつきを理解・管理する

同じねじ部材でも、表面処理やロットによって摩擦係数が異なります。
調達段階で品質保証基準(JISなど)を徹底し、ロット間ばらつきやサプライヤーの管理の信頼度も確認しましょう。

3. 被締結材との相性(座面設計・座金選定)を考える

座面(フランジや座金)の形状・材質・厚みは、実は大きな影響を与えます。
座面の歪みや変形、異材接触によるガルバニ腐食も、長期的な緩みやトラブルの原因になりがちです。

4. ねじ種類や寸法、公差の選定

「六角ボルト/キャップボルト」「小ねじ/タッピンねじ」など、現場の使い勝手やトルク管理性に合った種類のねじを選択し、公差設定も工場の加工・組立能力に即して見直します。

5. メンテナンス性も設計段階で考慮

壊れにくく緩みにくい設計であっても、設計変更や追加工事、現場での再調整が発生する場合に「ねじを外せない」「狭すぎて工具が入らない」という問題が起きがちです。
メンテ性と堅牢性の両立が重要です。

実践的!壊れない・緩まないためのゆるみ防止対策一覧

壊れないねじ締結体には、こうした机上の理論だけでなく、現場の実情に即した対策が必要です。
以下は、現場で有効性が高かった実践的対策のまとめです。

1. 二重ナット・ばね座金・平座金の活用

最も手軽かつ安価な方法です。
適切な座金選定や、二重ナット(ジャムナット)を正しい順序で使用することが前提です。
ただし過信は禁物で、強い振動や繰り返しで「慣れて緩む」こともあるため、点検のルーチン化も必要です。

2. 締結用ロック剤

中強度または高強度のねじロック剤(ロックタイト等)は、着脱性や分解性とのバランスを見極めれば非常に強力な防緩策です。
現場で塗布の手間が増えるので、油脂・ホコリ等の管理も徹底することが大切です。

3. 「ねじのゆるみ止め部品」導入(スプリングワッシャー・ノルトロックワッシャー等)

特殊なワッシャーは高価ですが、確実な締結力を維持できます。
サプライヤーとの価格交渉・大量購入によるコストダウンも組み合わせると良いでしょう。

4. 図面・作業標準書で明確な仕様化

「この部位は二重ナット必須」「ロック剤指定」等、曖昧な指定を避け、誰が見ても理解できる書き方・写真付きの標準化文書を整備します。
特にグローバル調達が広がる中で、こうした「言葉の壁」を越える図面・仕様共有が重要です。

5. トルクレンチ・トルク管理ツールの徹底活用

現場での「締め過ぎ」「締め不足」をなくし、作業者のばらつきを減らすには、トルクレンチの導入・維持管理、校正を怠らないことが必須です。

6. SMART工場化によるデジタル監視の導入

最新の工場では、ねじ締結時のトルク値や角度をセンサーで自動記録する仕組みが増えつつあります。
ねじ締結体にもIoT導入の波が来ている今、より堅牢で再現性の高い管理が可能です。

バイヤー・サプライヤーが知っておくべき「設計・購買時の注意点」

調達・購買の立場で見るねじ部品選定のコツ

バイヤーはコストダウンやQCD向上(品質・コスト・納期)の観点からねじなどの部品調達に重きを置きがちですが、「あとで現場が泣く」選定をしてしまう危険もあります。

具体的ポイントは以下です。

– サプライヤーの技術力や現場ヒアリング能力、品質保証体制までチェック
– (JISやISO規格適合はもちろん)自社現場での再現テストやサンプル品受入で確認
– 「特殊ねじ」や「新部材」導入時は経年変化やメンテ性も視野に入れる
– 必要な数以上のスペックや性能を追い求めた “過剰品質” はコストと生産性低下の原因となる

サプライヤーから見たバイヤーの着眼点やニーズ

サプライヤー側も、単に「見積り合戦」や「スペックの丸投げ」だけでなく、バイヤーと共通言語で考えることが重要です。
現場での困りごと、製品の使用環境、所要のトルク管理やメンテ周期などの「なぜ?」を自ら引き出し、積極的に提案型で情報共有を進めましょう。

また、不良発生時のトラブル分析やフィードバックを密に行うことで、より高付加価値なサプライヤーになることが可能です。

まとめ:昭和からの脱却と製造業現場の進化のために

壊れないねじ締結体設計とゆるみ防止対策は、単なる技術知識にとどまらず、設計・調達・現場・サプライヤーそれぞれの「現場目線」での緻密な連携と知恵の集積が不可欠です。

昭和からの慣習やアナログ文化に根ざしつつも、新たなIoTやSMART工場化の波も上手に活用すれば、ねじ一本の不良でラインが止まる時代から卒業できます。

製造現場で日々奮闘する方々、バイヤーを目指す方、サプライヤーの皆さんも、今一度“ねじ締結体”の現場的再点検から、現場力・競争力強化に挑戦してみてはいかがでしょうか。

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