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設計者が製造現場の実態を知らないまま判断してしまう構造的問題

目次
はじめに
日本の製造業が世界をリードしていたのは、決して遠い昔の話ではありません。
しかし、生産現場の変化や顧客ニーズの多様化、グローバル調達の進展により、現場とそれ以外の部門の間には見えない「壁」が生まれています。
特に設計者と現場(生産、調達、品質など)とのギャップは、今なお多くの製造業で深刻な問題を引き起こしています。
今回は「設計者が製造現場の実態を知らないまま判断してしまう構造的問題」に焦点を当て、現場経験者の目線からその背景、弊害、そして解決策を考察していきます。
設計と現場の“分断”はなぜ生まれるのか
分業の歴史と日本型ものづくり
戦後の高度成長期、日本のものづくりは現場主導で発展してきました。
現場の職人や技能工が設計者と膝を突き合わせて製品をカタチにする、いわゆる“三現主義”(現地・現物・現実)に根差したスタイルが強みでした。
しかし、バブル崩壊以降、分業化と効率化が進行した影響で、設計者が現場に足を運ぶ機会は徐々に減少したのです。
組織構造が生む“距離感”
多くの大手メーカーでは、設計部門と製造部門が物理的にも組織的にも分断されています。
設計は都市部の本社、製造は地方の工場に配置されることも多く、両者の交流の機会は限られます。
近年はテレワークやデジタルツールが普及したことで、余計に現場と設計の距離は開いてしまいました。
アナログな業界慣習の残存
まだ根強く残る「現場は現場、設計は設計」という縦割り思考が、情報共有や相互理解の障壁となっています。
古い体質の企業ほど、この傾向は顕著です。
たとえ品質トラブルや歩留まりの悪化が起きても「仕様通り作れ、現場が合わせろ」といった昔ながらの考え方が根強く残る場面も散見されます。
現場を知らない設計がもたらす弊害
量産性やコスト意識の希薄化
現場フローを意識せずに単純に設計してしまうと、量産時に工程が複雑化し、歩留まり悪化やコスト増につながります。
例えば、微妙な曲面・微細な加工公差など、現場の加工技術や工具の制約を考慮しない設計案が現実離れした要求条件となり、作業者や設備への負担を増大させます。
結果、現場は「手間をかけて何とか作れ」と求められ、プロセス効率の低下や不良率増大に直結します。
品質トラブル・手戻りの発生
現場のノウハウや実際の生産条件を無視した設計は、不具合・クレームの温床となります。
例えば、過去事例で多いのは「量産後の部品強度不足」「現場組立の困難」「調達先での加工不可」などです。
このような問題が起こるたびに、現場は設計変更や部品再設計を迫られ、大幅な手戻りコストがかかることになります。
調達購買の視点不足
設計者が調達現場の実情に無知な場合、調達先の選定やサプライチェーン構築にも悪影響を及ぼします。
大量生産が難しいユニークな部品設計や、入手困難な特殊材料を指定する事例も後を絶ちません。
その結果、納期遅延やコスト高騰といったリスクが増します。
購買実務者は「なぜもっと市場性や量産性まで考えて設計できないのか」と嘆くこともしばしばです。
モチベーション低下・職場風土の悪化
現場が“設計部門から上から目線で指示されるだけ”という状態が続くと、モチベーションの著しい低下につながります。
また、現場の改善提案や現実的な意見が“設計都合”によって一方的に退けられると、職場文化そのものが硬直化します。
人材の離職や技術伝承の停滞といった深刻な二次被害へ発展してしまいます。
業界に根付く構造的問題の背景
設計と現場、それぞれの「常識」のズレ
設計部門は「カタログやCADで描いた通りに現場が作るもの」と思いがちですが、現場は「図面データだけでは伝わらない“作りやすさ”や“現実的な調節”」を常識としています。
この両者の“常識”のズレが、トラブルの根源になります。
組織評価・キャリアパスの歪み
大手メーカーでは、「現物よりもデスクワーク」が評価されやすい傾向も根強く残っています。
設計者が「現場知識を持つ=出世から遠ざかる」と感じてしまう企業文化が、現場軽視を助長しています。
IT導入が“現場理解”を逆に阻害
生産管理システムやPLM(製品ライフサイクル管理)などの導入で設計~生産工程の効率化は進みましたが、かえって現場の“肌感覚”や暗黙知が排除され、本質的な現場理解が希薄になっている側面もあります。
ラテラルシンキングで突破するヒント
従来の延長線上だけでは、現場と設計部門の壁を乗り越えることはできません。
ここでは、現場目線・バイヤー目線・サプライヤー目線も組み合わせた“横断思考”で、いくつか解決のヒントを提案します。
現場体験を設計者の評価指標に
設計者が3ヶ月に1度は現場に“武者修行”に入り、加工・組立・検査まで携わる制度を仕組み化します。
現場体験の有無を人事評価や昇進要件に加え、「現場を知る設計者」の市場価値を可視化することで、現場軽視の土壌を変えていきましょう。
設計レビューにバイヤーと現場作業者を巻き込む
従来の設計部門だけによる図面レビューではなく、設計段階から生産、購買、サプライヤー(外注先)まで参加する横断的なレビューを仕組み化します。
あえて敢闘的な意見交換を促し、現場からの「それは無理」「コストが合わない」といった生々しいフィードバックを設計に反映できる場とします。
現場“なぜなぜ”の蓄積をDXで活用
現場が日常的に感じている違和感や疑問、いわゆる“なぜなぜ分析”をデータベース化し、設計に役立てる取り組みです。
製造現場を可視化するIoT・DXを活用し、“アナログな現場の知恵”を形式知に変換して設計フローに活用しましょう。
バイヤー視点のコスト分析を設計者に教育
部品サプライヤーやバイヤーが実務で行っているVE(価値工学)・原価計算のロジックを設計研修に組み込みます。
設計者が「この要求仕様だとコストや納期にどう跳ね返るか」を“購買目線”で体感できる仕組みを作ります。
サプライヤーこそ設計部門のメンターに
協力工場や部品サプライヤーほど現場力に長けています。
設計部門の設計者が定期的にサプライヤーを訪問し、「もっとこう設計してもらえれば加工性が上がる」といった建設的な意見を吸い上げる“相互メンタリング”を推進します。
多品種少量やカスタマイズ案件が増えている昨今では、サプライヤーのアイデアや最新加工技術を設計に取り入れることで現場力そのものが高まります。
おわりに
設計者が現場の実態を知らずに判断する構造的な問題は、一朝一夕には解決できません。
しかし、現場体験の仕組み化や横断的なレビュー体制、そして現場・バイヤー・サプライヤーとの情報共有こそ、“昭和のやり方”からの脱却の第一歩です。
古い業界慣習にとらわれず“ラテラルシンキング”で新たな地平線を切り開く。
それが現場を知る者の使命であり、製造業の未来を変える力となるはずです。
今こそ、設計と現場をつなぐ一体感あるものづくりに、皆さんの現場力を活かしていきましょう。
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