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xEV向け小型・低損RC-IGBT の開発及び製造の効率化

目次
xEV向け小型・低損RC-IGBTとは何か
xEV(EV/HEV/PHVなどの電動車)において欠かせないコンポーネントの一つが、インバータに搭載されるパワー半導体です。
さらに、そのパワー半導体の中核を担う「RC-IGBT(Reverse Conducting Insulated Gate Bipolar Transistor)」は、小型化と低損失化が強く求められています。
RC-IGBTは、IGBTとダイオードの機能をワンチップ化したデバイスで、従来のIGBT+ダイオードの組み合わせに比べ、占有面積の削減とスイッチング損失、導通損失低減が期待できます。
実際、日本の多くの自動車メーカーやティア1(一次サプライヤー)が、厳しい燃費・効率・信頼性基準をクリアするべくRC-IGBTの導入を加速させています。
従来のアナログ業界では、半導体デバイスの選定・認定も時間がかかっていましたが、xEV普及の速度に呼応し、要求性能も年々高度化・多様化しています。
小型・低損RC-IGBT開発の現場で直面する課題
従来設計とのパラダイムシフト
「小型化」と「低損失」は、高周波動作と発熱管理、耐圧・定格の最適設計という多面的な課題を生みます。
たとえば、従来は単にIGBTとダイオードをパッケージングしていた仕様から、1チップ化によりレイアウトやワイヤボンディングなどの製造プロセスにも大きな影響が及びます。
これまでの半導体設計手法では、熱分布の最適化やインバータ基板上の実装性など、新たな要素が加わり、設計部門・生産技術部門・品質保証部門の横断的な連携が不可欠となりました。
材料とプロセスの最適化
小型・低損失デバイスを実現するには、新材料の導入や製造プロセスの革新が欠かせません。
例えば薄ウエハ化や、最新の絶縁材料、高導電ボンディング材の採用による熱抵抗低減などが進められています。
しかし、新材料の採用においては量産安定性、コスト、調達リスクなどバイヤー・サプライヤー間の情報開示や連携がこれまで以上に重要です。
QCDバランスの最適解探し
RC-IGBTの市場投入は、開発スピード・コスト・競争力・歩留まり、つまりQCD(Quality, Cost, Delivery)すべてのバランスが試されます。
品質については、EV用途時の耐久保証や車載信頼性規格(AEC-Q101など)認定が前提となり、設計→検証→評価→量産立上げの各プロセスで膨大な検証項目が発生します。
コスト面ではサブストレートやパッケージ工程の歩留まり向上が鍵を握ります。
現場で進む製造の自動化・高効率化の取り組み
SMT(表面実装技術)工程の省人化・自動化
工場の現場ではアナログ作業が色濃く残っていますが、xEV向けの半導体組立工程はすでに次世代へ舵を切っています。
具体的には、基板搭載やワイヤボンディング自動機、インライン検査装置導入により、作業者の属人的な熟練ノウハウからAIや画像解析によるエラー発見へと軸足を移しつつあります。
これにより人的ミスを削減しつつ、24時間稼働も可能になります。
一方で、「これまで経験則で見分けていた微細な不良」を自動化に落とし込むのは容易ではありません。
現場と開発、品質保証が密にフィードバックを繰り返し、現物合わせでノウハウを蓄積していく柔軟性も依然重要です。
トレーサビリティと見える化の強化
自動車の電動化、安全基準の強化により、デバイス単位でのトレーサビリティ確保が求められます。
各工程ごとにバーコードやRFIDを使った実績管理はもはや常識ですが、不具合発生時には秒単位、ロット単位で遡る解析力が必要です。
デジタルデータの蓄積とAI分析(ビッグデータ解析)の導入により、歩留まり悪化や予防保全の観点からもダイナミックな工程改善が進められています。
サプライチェーン連携による調達力の強化
RC-IGBTの小型・低損タイプは技術的ブレイクスルーが競争力そのものですが、同時に部材調達や外注先との連携強化も競争を分けます。
調達購買の現場は、従来の価格優先から一歩進んで、品質・納期リスク・サプライヤーの生産能力や経営状況、カーボンフットプリントまで考える“サステナブル調達力”が求められています。
調達担当者と技術部門の連携なしに、この変化に耐えるサプライチェーンの構築は不可能です。
バイヤー・サプライヤーの新たな協働モデル
「共創」の時代へ:サプライヤーの技術提案型姿勢
調達購買が「ベンダーセレクト」と呼ばれた時代は終わり、いまや「ソリューション・提案型調達」が一般化しています。
バイヤー側は単純なコスト比較ではなく、サプライヤーの設計・ものづくり現場の技術力、改善提案、リスクコントロール能力までを総合評価します。
サプライヤー側も、価格競争だけではなく自社の保有技術、工程改善、納期短縮、小回りやラピッドプロトタイピングの柔軟性などを前面に押し出し、共に市場変化を切り拓く“共創パートナー”としての存在感を増しています。
製造現場発 信の改善サイクル
昭和の大量生産時代は“トップダウン”での指示管理が主流でしたが、現在のモノづくり現場では“現場・現物・現実(3現主義)”がより重視されます。
最前線の現場で発見された“ちょっとした気づき”が、工程全体の品質やコスト競争力に大きな影響を与えます。
見逃されがちな失敗事例やトラブルの芽、各ライン作業者の「ここがやりにくい」「ここに歩留まりの穴がある」という気づきを吸い上げ、早期改善につなげるPDCAサイクルが不可欠です。
その意味で、「サプライヤーにのしかかる不条理な値下げ要求」から、「一緒にQCDを上げていこう」という協調型・共創型の“現場力”へ意識転換が求められています。
求められる人材像・キャリアパス
バイヤーが身に着けたい技術知見・交渉力
RC-IGBTに代表される最新デバイス調達では、表面上の仕様や価格だけでなく、その裏に潜む材料開発力、工程能力、将来の発展性や供給リスクまで広範囲な知見が求められます。
バイヤーとしてキャリアを積む上で、技術部門との密な関係構築、または自身が現場実務の経験を積むことは代えがたい強みになります。
また世界的な材料ひっ迫や地政学リスク増大を想定し、複数ソース化や、異常時のバックアッププラン策定など“リスク管理型バイヤー”への進化も求められています。
サプライヤー視点でのバイヤー理解
サプライヤーの営業・技術担当は、顧客バイヤーの視点・思考をよく理解することが受注獲得の鍵です。
「なぜコストダウンが求められているのか」「なぜこの仕様変更が急務なのか」「調達部門が直面している社内事情や納期ルールとは何か」など、バイヤーの“内側”を知ることで一歩先の提案が可能となります。
また、品質異常発生時の即応力や、各種協働開発プロジェクトへの柔軟な技術提案力も信頼構築に直結します。
昭和のアナログから抜け出すために現場ができること
xEVという新しい市場潮流の中で、昭和時代から脈々と続いた“現場勘”や“職人技”は依然として強みです。
しかし、それだけに依存していてはデジタル化・自動化の波に飲み込まれ、世界標準の競争力には届きません。
「現場カイゼン」と「デジタルツール・新技術導入」を二軸で回し、小さな取り組みから成功体験を積み上げることが、変革を定着させる近道です。
失敗やトラブルを積極的に共有し、オープンな問題解決文化を醸成すること。
そして、デジタル可視化やAIアシスト・シミュレーション技術などを“現場の道具”と位置づけ、使いこなしていく意識改革が求められます。
まとめ:新たな地平線を切り拓く製造業現場の挑戦
xEV向け小型・低損RC-IGBT開発から製造の効率化へ――。
この一連の流れは、省エネ社会の実現だけではなく、日本の製造業が真価を問われる新たなステージへの挑戦です。
現場目線でQCDを徹底追求し、高効率・高品質なものづくりを進化させると同時に、デジタル変革やサプライヤーとの共創モデルを推し進める姿勢が不可欠です。
バイヤーを志す方、サプライヤーとの関係を深めたい全ての製造業関係者にとって、「現場が持つ知恵」と「変革へのチャレンジ精神」こそが、競争優位を生み出すエンジンとなることでしょう。
令和の製造現場は、昭和の伝統を受け継ぎつつも“進化”の道を歩み続けています。
皆さんの知恵と行動で、未来を切り拓きましょう。
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