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投稿日:2025年5月29日

ダイカストの基礎技術とトラブル対策に活かすためのポイント

はじめに:ダイカストの魅力と現場主導の課題意識

ダイカストは、アルミニウムや亜鉛などの金属を高圧で金型に射出し、寸法精度の高い製品を大量に製造できる画期的な鋳造法です。

自動車部品、家電部品、情報機器など、我々の生活や産業を支える製品の多くは、ダイカスト技術によって生み出されています。

しかし、現場目線で実際にラインを動かした経験がある方なら、ダイカストのトラブルや、工程改善の難しさを痛感していることでしょう。

アナログな作業慣習が残る工場現場や、昭和から続く属人的なノウハウにも頭を悩ませてきた人も多いはずです。

この記事では『ダイカストの基礎技術』と、実践現場における『トラブル対策』を深く掘り下げ、さらには今風のデジタル技術やグローバル調達時代の観点も絡めて「ラテラルシンキング」で新しい解決策を提示します。

バイヤー職を目指す方や、サプライヤーとして品質・コスト提案力を伸ばしたい方にとっても、参考になる内容を目指します。

ダイカストの基礎技術:今更聞けない現場のツボ

ダイカストの主要プロセス

ダイカスト工程は、大きく分けて「溶解」「注入」「固化」「離型」「仕上げ」に分類されます。

1. 溶解:インゴット(主にアルミや亜鉛合金)を炉で溶かす工程です。
2. 注入:溶けた金属を、ピストンで高圧かつ高速に金型へ射出します。
3. 固化:金型の中で瞬間的に金属が凝固し、精密な形状となります。
4. 離型:形成物を金型からスムーズに取り出します。
5. 仕上げ:ゲートやバリなど不要部分を除去します。

特に注入と固化速度が早いため、複雑形状・薄肉・大量生産品に最適なのが特徴です。

金型の重要性と工具管理

金型はダイカストの品質とコストを左右する最大要素です。

設計段階で湯流れや空気抜きの経路、冷却ラインの配置が悪いと各種欠陥(ヒケ、巣、不完全充填etc.)が多発します。

また、現場保全では金型摩耗・熱割れの早期発見が品質安定のカギとなります。

昭和世代の現場では「職人の経験」がものを言いましたが、今ではセンサーによる金型温度監視や定期的な寸法点検など、デジタル管理への移行が進みつつあります。

現場に多いダイカスト不良とその対策

代表的なトラブル例

1. ピンホール・巣:内部に小さい空洞やガス残留が発生する
2. ヒケ:冷却速度の違いによる収縮痕
3. 焼き付き:離型時に部品がこびり付き、表面が荒れる
4. バリ・フラッシュ:金型合わせ面から金属がはみ出る
5. 寸法不良:反りや膨張による規格外品の発生

これらは、材料や機械の違い、金型メンテ頻度、生産条件のちょっとしたズレから発生します。

根本原因を探るラテラルな視点

これまで現場の多くは「焦らず静かに様子を見ろ」「ベテランしか手を出すな」という属人的な改善に頼りがちでした。

しかし現代の製造現場では、横断的・本質的な問題抽出ができる体制が不可欠です。

例えば「巣」の発生。
従来なら溶解温度か注入速度の調整、という視点が中心でしたが、実際には合金組成のわずかな変化や、冬場の作業環境による金型温度低下、鋳造サイクル長の変動など、複合的な因子が絡み合うことも多いのです。

問題を『溶解温度の上げ下げ』だけに狭く考えず、運搬方法、材料ロット、操業シフト、機械の油圧条件、型保全履歴……全方位から「なぜ?なぜ?」を掘り下げてください。

これこそがラテラルシンキング。
前例や自社の通例に囚われず、業界全体・異業種の知見も踏まえて考えていく姿勢が、昭和アナログから抜け出す最短ルートです。

デジタル技術と現場力の融合

昨今、ダイカストの世界にもIoTやAI活用の動きが広がっています。

射出圧力や型内温度、金型冷却水の流量などのデータを24時間自動監視し、不良の予兆をAIで警告する仕組みを導入する企業も増えています。

しかし、現場視点の「気付き」や「小さな異変を見逃さない改善提案」が無くなるわけではありません。

デジタル記録と現場勘の両方を体系化することで、属人化から解放された『再現性の高い現場ノウハウ』を作り上げることができます。

業界動向:グローバル時代のバイヤー・サプライヤーが知るべきポイント

コスト競争・グローバル供給網との戦い

かつて日系メーカーのダイカストは品質一辺倒でした。
しかし今や、アジアや新興国のローカル企業が価格破壊を進め、世界の調達現場が激しくなっています。

バイヤー職や、そのサプライヤーを目指す皆さんは、技術力・品質力と同じぐらい「QCD(品質・コスト・納期)」の最適化を深く理解しておく必要があります。

例えば、日本ローカルでしか調達できない合金材の使用を見直し、グローバル標準材への置き換え提案ができれば、バイヤーとしてもサプライヤーとしても交渉力が大きく上がります。

サプライヤー現場の“汗と知恵”にバイヤーは目を向けよ

最近、購買職の中には「品質はただでついてくる」という認識がちらほら見受けられます。
しかし高い品質は、現場の職人が寸法管理・金型保全・工程改善でどれほど苦労を積み重ねてきたかの上に成り立っています。

バイヤーを志す方こそ、生産ラインの現状、現場のカイゼン力・問題解決力を肌で感じ取っておくことが、良い提案力・選択力へとつながるでしょう。
また、サプライヤーサイドの方も「御社のコスト構造・改善活動はどうか」「工場見学で問題点を見つけて欲しい」といった、対話型・現場重視の購買の目線を意識しておくと強いです。

ダイカスト現場のQCD強化:昭和型ノウハウ+現代テクノロジーの融合

自動化・デジタル技術導入の進め方

・ショット数、温度、圧力などのデジタル監視システムで“見えない変動”を可視化する
・データベース化したトラブル履歴で「同じ間違いを二度繰り返さない」仕組みを作る
・設備メンテや金型交換ポイントをIoTで“予防保全”にシフトする

これらは導入コストや現場教育の壁もありますが、属人的カン・コツから脱却するには、現場スタッフの巻き込み・小さな改善提案の拾い上げが鍵です。

現場力を武器にするバイヤー・サプライヤーの新提案術

バイヤー職もサプライヤー職も、これからは「名刺交換だけの関係」では勝ち抜けません。

例えば「現場でこんな小さな不良が増えていますが、最近何か変えたことは?」と直接対話したり、「他社ではこのようなIoT事例が不良削減につながった」という情報発信を積極的に行ったり。

また、現場の困りごとやヒヤリ・ハットを積極的にリストアップし、調達や品質マネジメントの会議体で共有。
必要に応じて他社工場や異業種のノウハウから解決策をブレストする文化づくりも、真のQCD向上には欠かせません。

まとめ:昭和型アナログ工場から、新しい時代の現場革新へ

ダイカストは、戦後日本の高度成長を支えた「昭和型ものづくり」の象徴的存在でした。

しかし今、グローバル供給競争や人材不足、品質競争の深化を背景に、業界全体が変革期を迎えています。

・現場の汗と工夫で培われた職人技
・IoTやデータ分析などの最新技術
・バイヤー&サプライヤーとしての業界理解とコミュニケーション力

これら全てを“ラテラルに繋ぐ”発想が、これからの時代のダイカスト現場、ひいては製造業全体の成長に直結します。

ぜひ、現場で感じた疑問、お客様の声、市場の潮流を自分なりの「新しい問題意識」として捉え、日々の業務に活かしてみてください。

皆さんの現場が、次の世代にとって誇れる場所となることを願っています。

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