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寸法精度がプレスより優れているとは限らない現実

目次
はじめに
金属部品の加工現場では、「プレス加工よりも切削加工や研削加工の方が寸法精度が高い」という“常識”が根付いています。
しかし、現代の製造現場を俯瞰すると、この先入観は必ずしも当てはまらなくなってきています。
本記事では、「寸法精度がプレスより優れているとは限らない現実」というテーマで、現場目線の知見や、製造業のアナログ文化が背景にある誤解、最新技術動向などを交えて深掘りします。
プレス加工の「イメージ」と現実
プレス加工は荒い…それは過去の話?
昭和的なものづくり現場では、プレス加工は「大量生産に適している」「形は作れるが精度はそこそこ」というイメージを根強く持たれてきました。
多くの設計者や購買部門では、「精度が必要なら別工程」という判断が当たり前。
この背景には、40年前50年前に主流だった「手作業に近い型合わせ」や、単純一工程プレスの多用がありました。
しかし、現代のプレス加工は違います。
FA技術やCAD/CAMの進化、サーボプレスの導入、多工程化、自動化ライン設計による「ばらつき制御」など、技術は格段に進歩しています。
実際の寸法精度とは?
プレス加工の寸法公差は、JIS(日本工業規格)でもしっかり規定されています。
たとえば、普通級で±0.1mm程度ですが、精密プレスでは±0.01mm程度まで保証する事例があります。
板厚や素材、加工方法、金型精度、プレス機の種類(サーボプレスや送り装置の正確性)によっては、切削加工や研削加工に並ぶ、あるいは上回る精度も十分に実現可能です。
なぜ昔の“常識”が抜けにくいのか?
工程担当間のコミュニケーションギャップ
依然として製造現場では、設計部門・購買部門・現場(加工者)それぞれが工程の“壁”を越えたコミュニケーションに課題を抱えています。
見積段階では“過去のトラブル”や“伝聞”に基づいたリスクヘッジも働きやすく、プレス加工に対する不必要な下振れ評価が温存されがちです。
さらに、管理職やベテラン層が過去の成功体験を引きずる“昭和メンタル”が障壁となります。
新しいプレス技術が導入されても「十中八九危ない」「うちは昔これで失敗した」など、一歩を踏み出せない現場も少なくありません。
アナログな見積擁護 VS データ活用
製造業界は元来“暗黙知”の文化。
「うちの職人ならできる」「ここの金型メーカーは信頼できる」など、数値化が難しい感覚でのものづくりも強く根付いています。
一方で、IoTや生産データ可視化により、歩留まりや寸法公差の“実際”をエビデンスとして語れる時代です。
それでも、「なんとなくこっちの方が精度がいい」「社内基準が厳しいから…」といった理由でプレス精度が過小評価され、市場競争力を下げてしまっているケースが多くあります。
最新プレス加工の高度化と寸法精度
金型技術と精密加工の進化
最新の金型設計は、CAE解析による変形量のシミュレーションや、放電加工・高精度研削による金型部品精度の向上が実現しています。
これにより、従来の「ばらつき」や「テーパー」「バリ」といった嫌われる現象が激減。
自動ミクロ給油やセンサー活用も標準装備となり、長時間安定稼働も当たり前になっています。
サーボプレス・工程統合で何が変わるのか
サーボプレスによる可変モーション制御は、「抜き」「曲げ」など各加工で最適条件を細かく設定可能です。
たとえば、「ゆっくり押す」「下死点で保持する」などのモード選択で、従来では考えられなかった細かな寸法公差管理が可能になりました。
また、微細プレスやバリレス抜き、高張力鋼板の高速加工など、一昔前なら切削や研削にしか出せなかった精度も、プレス工程内で維持できる事例が増えています。
「精度が要求される=プレスでは不可」は思い込み
見積依頼や工程設計の“モッタイナイ”
実際、バイヤーや設計担当者の多くが、高精度を要する部品は「最初から切削や研削」に振り分けてしまっています。
ところが、もしプレス加工で試作していれば、材料費や工程コストも抑えられ、納期短縮やサプライチェーン全体の効率化が実現できていたかもしれません。
この「思い込み」による見積ミスは、工場の効率化・利益率向上の最大の敵とも言えます。
サプライヤー現場からの提案で変わる未来
一方、先進的なサプライヤー現場は、プリプロダクション会議などで「この精度ならプレスでも十分に対応可能です」と積極的に逆提案をしています。
金型改良や工程統合、組み立て一体化技術も合わせて提案することで、バイヤー側の「見積先入観」を打破し、新たなビジネスチャンスに繋げています。
購買・バイヤーは「攻めのプレス活用」でライバルに差をつける
コストダウンだけでは終わらない
プレス加工は数量が多いほどコストダウン効果が大きく、今こそDX時代に最適な加工法になる場面が増えています。
バイヤーが「できるか分からない」からと“保守的な工程選択”を繰り返していては、他社に先を越されてしまいます。
積極的に現場の技術動向をキャッチアップしよう
サプライヤーとしても、積極的に最新のプレス技術、金型進化、加工精度を可視化したデータを情報提供できれば、顧客との信頼関係が強化されます。
購買や開発部門も、“仮説”で工程選定するのではなく、現場の実データに基づいた判断、テストピースのトライ&エラーを推進すると良いでしょう。
まとめ:ものづくり現場に新たな地平線を
「プレスより切削の方が精度が高い」という先入観は、もはや過去のものになりつつあります。
設備・金型・プロセスすべてに技術革新が進み、現場での寸法誤差も“見える化”されました。
購買・バイヤー・サプライヤーが正しい技術知識を共有し、アナログな“思い込み”から脱却すれば、調達・製造プロセスに大きなイノベーションを起こす可能性があります。
今こそ、古い常識から解き放たれ、ものづくりの新たな地平線を一緒に開拓してみませんか。
製造業に勤める方、そしてものづくりを支える全ての方々と、現場発のイノベーションで未来を切り拓いていきましょう。