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試験結果の解釈が部署で異なり合否判断が分裂する問題

目次
はじめに:製造業現場に根強く残る“解釈の壁”
製造業の現場では、日々多くの試験や検査が実施されています。
原材料から最終製品にいたるまで、各段階で求められる品質水準を担保するために、物性や寸法、外観、機能などを厳しくチェックします。
しかし、こうした試験結果の「合否」の判断が、部署ごとに食い違う事例は後を絶ちません。
設計、品質管理、生産技術、調達購買、さらには現場の作業員や営業に至るまで、それぞれの立場で数字や現象の「解釈」が揺れ動き、組織としての明確な合意形成に至らない…。
これは、真面目に現場を支えてきたベテラン達こそが直面する、昭和~令和の過渡期ならではの“アナログ業界の構造的課題”とも言えます。
この記事では、こうした「合否判断の分裂」がなぜ起こりやすいのか、どんな背景・要因があるのか、そしてベテラン現場目線ならではの実践的対策や将来の方向性について、ラテラルシンキングを交えて深掘りしていきます。
よくある「合否分裂」の実例:なぜ現場で食い違うのか?
特に自動車、電機、精密機器といった「厳格な品質要求」が求められる業界では、試験規格や検査基準書が整備されているはずなのに、こんなケースに心当たりがありませんか?
例1.設計・開発と品質管理で“境界値”の解釈が異なる
例えば、「引張試験で最低80N以上」と規格化されている場合、本当に80.1Nで合格なのか、81N程度の“余裕”を見て合格とするのか、部署によって微妙にスタンスが分かれることがあります。
品質保証部門は「規格に従って判断すべき」と主張しますが、開発部署は「お客様にトラブルが発生しないように余裕を持たせたい」と考える傾向が強いです。
例2.生産現場 vs 調達購買で検査結果の扱いが異なる
調達購買担当者は、サプライヤーから納入された部品の受入検査基準をベースに合否を判断しますが、生産現場では「実際に組み立ててみた現実的な組付け性」や「過去の工程での経験値」も考慮します。
結果、「カタログ値では合格。でも実作業には合わない」などの溝が生まれ、サプライヤーとの間でトラブルの火種となることも少なくありません。
例3.同じ試験データでも営業部が“使い方”を独自解釈
営業やカスタマーサポートの部署では、試験報告書の合否データを顧客にどのように見せるかで、現場サイドと方針が食い違うことが多々あります。
「ギリギリだが合格判定にして、出荷を優先したい」となる営業と、「リスクを避け慎重な合否判断を」と求める現場。
このギャップも社内で長期的な摩擦を生みがちです。
分裂を招く“構造的要因”とは?昭和の現場文化と「仕組みの未整備」
こうしたギャップがなぜ根深いのか。
背景には、製造業界独自の構造的な課題が複雑に絡み合っています。
現場に根強い“職人感覚主義”の継承
日本の製造業は、昭和の高度成長期から「現場の職人が最終判断」「経験とカンがものを言う」といった文化が根付いてきました。
このため、公式な検査基準はあっても「ウチの現場はこの程度でよかった」「昔からこれで大丈夫だった」と、暗黙知化した“ローカルルール”が幅を利かせやすいのです。
部署ごとに異なる「KPI」と“責任範囲”のジレンマ
設計開発、品質管理、生産技術、調達、営業など、各部署が求められるKPI(成果指標)や評価基準も異なります。
開発は革新的機能を目指す一方で、品質部は一切のリスク許容を嫌います。
生産現場は既存設備で「どれだけ歩留まりを上げるか」、調達はコストと納期重視。
責任範囲の違いが、試験結果の「見方」や合否判断に現れるのです。
デジタル化の遅れと“紙ベース運用”の影響
現場では、今もなお手書きやExcelベースのデータ共有が主流です。
リアルタイムでの「一元的な試験データ管理」や「判定アルゴリズムの自動化」までは進んでいません。
これが試験データ再現の難しさや、判定時のダブルスタンダード(例:検査室では合格。現場ラインでは再調整が必要)を助長しています。
合否分裂が招くリスク:中長期的な“経営ダメージ”も
品質トラブルの根本的リスク増大
合否判断がバラバラだと、まれに不適合品が出荷まで進むケースや、「お客様先で問題が再発」という重大トラブルにつながります。
特にサプライチェーン全体での拡大再生産リスクは、今日のグローバル調達体制下では致命的です。
無駄な検査コストや“バッファ在庫”の増大
各部署が合否の“余裕幅”を独自にもってしまうため、「ダブルチェック」「再検査」「追加検査」など、非効率なプロセスや在庫増加の元凶になります。
現場担当者の士気低下や、工程管理・生産性そのものの悪化も招きかねません。
サプライヤーや顧客からの信頼喪失
サプライヤーから見れば、同じ基準にもかかわらず検査官や担当者によって“受け取り方が変わる”のは理不尽そのもの。
一方でエンドユーザーや顧客も、「ある時は合格、ある時は不合格」では企業への信頼を揺るがします。
信頼性がブランド価値に直結する今、放置すれば大きな経営リスクに直結しかねません。
現場目線で考える「分裂」回避への実践策
では、こうした“合否分裂”の課題をどう乗り越えるべきか。
現場・マネジメントで実際に効いた対策、今後ますます重要になる対応策を挙げます。
1. 「合否基準の根拠」を明文化し、調整会議を定例化
試験基準の「なぜその値なのか」「どの程度のバラツキを許容するのか」を設計、品質、生産技術の“横断”でオープンに議論し、分かりやすく文書化します。
難易度の高い「境界値」案件は、必ず部門横断の定例会で合否判定方針をすり合わせ、決定責任も明確にしておきます。
現場では、単なる「数値」ではなく「市場でのトラブル実績」や「プロセスキャパビリティ」なども加味することが肝心です。
2. 標準作業書&判定フローチャートの定期見直し
ガチガチのルール主義もトラブルの元。
実際に「この判定フロー、本当に現場で使いやすいか?」という視点で現場担当と一緒に標準作業書を見直します。
“職人の経験値”も活かしつつ、月次や四半期ごとに「合否判定フローチャート」のレビュー会議を設けることがおすすめです。
3. 試験データの「デジタル一元管理」推進
紙やExcel管理から一歩踏み出し、検査データベースやクラウド型PLM(製品ライフサイクルマネジメント)システムで一元的に管理。
これにより、「誰が、どのロットで、どんな合否判定をしたか?」が即座に見える化され、現場・調達・営業もリアルタイムで“同じデータ”を参照できます。
4. サプライヤーとの「双方向技術会議」の実施
特に外部サプライヤーとの間では、「なぜこの合否基準なのか」「なぜ現場で追加検査が必要になったのか」を腹を割って討議できる定例フォーラムが有効です。
これにより、“理不尽な合否分裂”を避け、現実的な品質づくりに外部パートナーも巻き込むことができます。
5. 「価値観ギャップ」の可視化と教育プログラムの拡充
新入社員や異動社員向けには、部門ごとの「判断基準の違い」や「その背景」を事例ベースで教育。
ラテラルシンキング、つまり“異なる視点を意識的に取り入れる”ことで、柔軟で俯瞰的な合否判断力を育てます。
これからの製造業現場に求められる“新時代の合否判断”とは
今後の製造業現場では、「単なる合否判定」から「納得性のある品質保証体制」へ、より組織横断的な進化が求められます。
・デジタル活用による「判定ロジックの透明化」
・AIや機械学習を使った判定アルゴリズムの導入
・現場・設計・調達・サプライヤーの“共創”的な基準づくり
・最終的な合否判断に「リスクコミュニケーション」を組み込む
こうした動きを“昭和の現場力”と“令和のデジタル力”を融合しながら推進することが、今後躍進する企業の条件となります。
おわりに:合否分裂を「強み」に変えるために
今回ご紹介した「合否判断の分裂」は、単なる“足並みの乱れ”ではありません。
実は、それぞれの部門や現場が「違う価値観」で現実を見ているからこそ生じます。
この価値観の違いを責めるより、むしろ“事実と向き合い、現場起点で合意形成する力”こそが、これからの変化の時代を生き抜く大きな武器となりえます。
読者の皆さまには、ぜひこの課題を自職場での「現状分析」と「部門横断の対話」へのヒントとして、明日からの実践につなげていただければと思います。
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