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耐熱マグOEMで電子レンジ対応と保温性を両立させる二重構造開発

目次
はじめに:耐熱マグOEMの新時代
製造業の現場では、顧客要望の多様化と生活スタイルの変化に対応するため、製品の機能進化が常に求められています。
中でも耐熱マグのOEM分野は、電子レンジ対応や高い保温性という一見矛盾する機能を両立させることが、大きな技術的チャレンジになりつつあります。
昭和の時代から蓄積された知見やアナログな現場力を武器にしつつ、新しい開発手法として二重構造を活用したマグカップのOEM開発が業界全体の注目を集めています。
本記事では、耐熱マグのOEMにおける電子レンジ対応と保温性を両立させるための二重構造技術の開発過程や現場での工夫、そしてこれからの時代に求められるモノづくりの視点について実践事例を交えながら解説します。
なぜ「電子レンジ対応×高保温性」の両立が難しいのか
電子レンジ対応の技術的要件
電子レンジで使える耐熱マグには、プラスチックやセラミック、ガラスなど様々な素材が用いられてきました。
加熱時の熱膨張率や素材の均質性、耐熱温度、加熱ムラの少なさなどクリアすべき要素は多岐にわたります。
特にバイヤーの立場で重要なのは、「電子レンジ加熱時に持ち手や本体が極端に熱くなりすぎないこと」「表面や接合部に有害物質や経年劣化によるクラックが発生しないこと」です。
高保温性が持つメリットと難しさ
一方、高保温性という点では、温かい飲料を長時間楽しめることが重要視されます。
これは断熱構造や真空構造によって実現されますが、一般的に「断熱=熱を逃がさない」ため、電子レンジ加熱時の熱の通しやすさとは真逆の構造要求となります。
例えば真空二重構造のマグは保温性に優れていますが、金属を使用した場合電子レンジには対応できません。
ここがOEM開発でもっとも苦労する技術的課題です。
二重構造マグの基本と最新トレンド
二重構造の仕組みと素材の進化
二重構造とは、マグ本体部分が2層構造になっており、その間に空気や真空層、あるいは中空のスペースが設けられています。
従来は主にステンレス素材のマグでこの構造が採用され、保温・保冷性の高さがアピールされてきました。
しかし、ここ数年OEM市場で増えてきたのが電子レンジ対応を目指したマグの開発です。
電子レンジ対応を考慮してガラス×ガラス、あるいはセラミック×セラミックの二重構造マグや、特殊な樹脂素材を使った商品も登場しています。
このような素材選定は、従来のアナログな現場知識と、分子レベルでの熱伝導分析といった最先端知見を融合させる必要があります。
現場での課題と試行錯誤
工場の実際の現場では、2層構造の内外層をどのように成形・接合するかが最大の課題となります。
素材を変えると、接着剤の選定や焼成温度も調整が必要です。
とくにOEM生産では「ロットによるバラツキ」や「サプライヤーごとの微妙なノウハウの違い」が品質安定の障害になります。
職人技だけでは解決できないため、現場では3Dスキャナーや熱画像カメラを用いた品質管理や、樹脂・セラミックの混合比率の微調整など、デジタル技術の導入も進んでいます。
OEM開発におけるバイヤーの視点
バイヤーが重要視するスペックとは
製造業バイヤーとしてOEM開発を進める際、求めるスペックは極めて具体的です。
– 実使用時の表面温度(例:コーヒーを入れて電子レンジで1分加熱後、本体と持ち手が何度まで上昇するか)
– 保温性能の数値化(飲み物の温度降下カーブを測定し、30分後・60分後で何度残るか)
– 外観上の美観やデザイン性だけでなく、加熱・冷却の繰り返し耐久性
– 全数検査・抜き取り検査の仕組みと、その工程の標準化
– 長期供給の安定性(サプライヤートラブル時のバックアップ体制)
バイヤーとサプライヤーの信頼関係構築には、「技術的な裏付け」と「安定した生産体制」の両方が不可欠です。
サプライヤーとしては、単に「できます」と答えるのではなく、なぜできるのか、その証拠と成長計画を提示できることが大切になります。
逆転の発想:OEM開発で差別化するには
現代のOEM市場では、単なる生産ラインの切り替えや、コスト競争だけでは選ばれづらくなっています。
どうすれば競合と差別化できるのか。
一例として、昭和から続く町工場レベルの職人気質と、令和のデジタル管理技術の融合があります。
たとえば、二重構造の生産過程で職人の「音」「感触」「温度勘」をデジタルデータ化し、品質異常の自動検知システムを導入するなど、両者を組み合わせることで顧客満足度の高い製品を生み出せます。
また物流視点として「各国電子レンジ規格への適合」「パッケージのエコ化」など、OEM顧客の立場で一歩先を読む提案力も不可欠です。
現場体験からの成功事例
実践・二重構造ガラスマグのOEM開発プロジェクト
筆者が実際に携わったOEM開発のプロジェクトでは、大手カフェチェーン向けの二重構造ガラスマグを手掛けました。
当初設計では、内外ガラスの接合部でピンホールが発生しやすく、なかなか真空層を作ることができませんでした。
現場では従来アナログに頼るだけでなく、「ガラスの膨張率・厚み・焼成温度」の関係を実験データで可視化しました。
また物流時の割れリスクを減らすために、梱包工程にも衝撃センサーを設け、不良発生箇所を即座に追跡可能に。
このホワイトボックス化により、トラブル発生でも最短で復旧対応ができ、OEMバイヤーから高い信頼を得ることができました。
OEMパートナーシップに必要な姿勢
どのプロジェクトでも変わらないのは、「自分のものづくりが顧客のブランド価値を背負っている」という覚悟です。
また問題が起きた場合の柔軟な現場対応力、昭和流の「なんとかする精神」が今なお強みとして生きる場面が多々あります。
一方で、データとエビデンスに裏打ちされた改善提案は、現場主義だけでは通用しない令和のものづくりでますます重要性を増しています。
「経験」と「新技術」の両輪を回せるサプライヤーは、OEMビジネスで必ず評価され、信頼関係が長期的なリピートにつながります。
今後の耐熱マグOEM開発の展望
業界動向とSDGs対応
近年の動向として、耐熱マグにもSDGs(持続可能な開発目標)への配慮が求められるようになっています。
再生樹脂やバイオマス素材の活用、洗浄しやすい構造設計、LCA(ライフサイクルアセスメント)評価など、単なる「機能」だけではなく「地球環境」も差別化ポイントとなっています。
また、規格や安全基準は日本だけでなく、欧米やアジアそれぞれで異なるため、グローバル市場を視野に入れた設計力が求められる時代です。
バイヤー目線では「現地法規制対応」「多国語対応ドキュメント」「各国物流への最適化」も、OEMパートナー選定で重視されています。
ラテラルシンキングで未来の価値を発掘する
既存の技術や製品ラインナップだけにとらわれず、まったく異なる分野の技術や発想を取り込むラテラルシンキング(水平思考)は、今後益々重要です。
たとえば医療分野で用いられる真空封止技術や、デジタル家電でのヒートコントロール技術を耐熱マグ開発に応用すると、従来とは一線を画す製品が生まれます。
「飲み物の温度が自動で管理できるスマートマグ」「自己修復型の表面塗装」「廃棄後も分解されやすいスマート素材」など、20年現場にいた筆者から見てもワクワクする潮流が始まっています。
まとめ:技術と現場力の掛け合わせが生きる時代へ
耐熱マグのOEM開発において、電子レンジ対応と高保温性の両立は決して簡単ではありません。
しかし、現場経験に裏打ちされた技術力と、時代を読むラテラルシンキングを掛け合わせることで、新しい地平を切り拓くことは十分可能です。
サプライヤーは、バイヤーの本質的なニーズと悩みを知ること。
バイヤーは、サプライヤーの技術力と現場知見を深く理解し尊重すること。
OEM開発の現場に深く根ざしたノウハウを共有しあい、日本のものづくりが次の時代も世界をリードするための一助となれば幸いです。
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