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OEMトレーナーでのプリント耐久性を高める乾燥工程の管理術

目次
はじめに:OEMトレーナー生産の現場から見た乾燥工程の重要性
ファッション業界においてOEM(Original Equipment Manufacturer、受託製造)で作られるトレーナーは、各ブランドのデザインや品質への期待に応えることが求められます。
とりわけプリント加工は、製品の価値を大きく左右する工程です。
プリントの剥がれや色落ちは、OEMメーカーの信頼を損ない、クレームやリピート受注減に直結します。
その根本的な品質を決める最重要ポイント、それが乾燥工程です。
本記事では、20年以上の工場現場・管理職の経験をもとに、伝統的なアナログ工場の”昭和的やり方”の限界も織り交ぜながら、プリント耐久性を最大化するための乾燥工程管理の実践的方法をお伝えします。
乾燥工程がプリント品質に与える影響
プリントの「定着」は温度・時間・湿度に左右される
プリントインクの品質、前処理、生地の種類などもプリント耐久性に影響しますが、乾燥の善し悪しが最もカギを握っています。
インクは、加熱乾燥によってポリマー分子が繊維に絡み定着する仕組みです。
乾燥が不十分だと、着用や洗濯のたびにヒビや剥がれが発生します。
逆に、過乾燥や高温過ぎる処理は生地自体の変形や黄変、風合い悪化を招きます。
現場では「焼きが足りない」はもちろん「焼きすぎ」もNGなのです。
乾燥処理の不均一が生み出す不良
ガス乾燥炉や赤外線乾燥機を使用する場合、機械の設定通りに温度が出ていないことも多々あります。
庫内上部と下部、前後で温度差が数十度出ていることもしばしば発生します。
そのため一見機械任せでも、乾燥具合を「見て」「触って」「嗅いで」判断できる現場力が不可欠です。
こうした「昭和的五感頼り」も一理ありますが、今後グローバルサプライチェーンで戦うには科学的管理も求められます。
現場で起きやすいトラブルと“昭和型”の落とし穴
バラツキ要因:人の感覚・設備の経年劣化
昭和型工場ではベテラン作業者の経験や勘に頼る場面が多く見られます。
確かにこれで乗り切れた時代もありました。
しかし、多品種少量・短納期化の現代では、人により「OK範囲」がまちまちになることで、無用な再加工・納期遅延・コスト増のリスクを抱えることに繋がります。
乾燥器本体のメンテナンスが行き届かず、温度センサーの狂いや熱源劣化を見逃し、「正常なはず」の設定で実際は規定以下の温度という悲劇も日常茶飯事です。
不良再発を止められない理由
繰り返すプリント浮き・剥離の再発原因は、往々にして“正しい乾燥温度・時間の管理不徹底”です。
何度工程会議を重ねても、結局「ベテランの○○さんに聞いてやれ」と属人的に流れてしまう。
この構造を抜け出せないままでは品質の安定は望めません。
プリント耐久性向上のための乾燥工程管理術
1. 温度・時間・湿度の「見える化」と記録
最も基本かつ重要なのは温度・時間の徹底管理です。
例えばプリントインクメーカー推奨の温度(例:150℃、90秒)を必ず守るため、日時ごとに庫内温度データをエクセルや工程管理シートで記録しましょう。
「前と同じ設定」と漫然と流さず、開始前の実測記録を徹底。
温湿度計付きデータロガーで連続記録すれば、脱属人化と不良発生時の追跡が容易になります。
2. 設備の定期点検・校正
乾燥炉の温度センサー、タイマー、熱源スペックの定期的な校正を実施しましょう。
メーカー、第三者検査機関による年次点検を推奨します。
予兆保全の観点から、異音・異臭・温度ムラを毎日の点検リストに加えることも有効です。
3. 実際の生地・製品を「テストピース」で先出し検証
新素材や新型インクを使う際は、現行工程で本当に耐久性が出るかどうか事前にテストピース(小試験片)で試験します。
洗濯20回、摩擦、加圧など実際の使用環境を模して強度を確認。
結果を記録し、NG時は原因を設備・工程・素材ごとに分解して対策します。
4. 五感+データによる“ハイブリッド判断”
アナログ時代の現場力は、現代でも価値があります。
一方で「経験者頼み」だけでは限界も明白です。
そのため作業者には「インクの膨れや表面感、焦げ臭」など、五感での異常検知の教育を続けつつ、設備では温度カメラやセンサーによる自動計測を導入することで、両者の良さを活かしたハイブリッド品質管理体制を構築しましょう。
OEM現場の生産管理・バイヤー視点からの乾燥工程管理の勘所
バイヤーが求める“安定供給”のカギは工程管理レベルにあり
バイヤーや発注側が強く求めるのは「安定的な品質」「リードタイム厳守」「低コスト」の3点です。
乾燥管理次第で「納期が遅れる」「仕上がりにバラツキ」「クレーム対応コスト」が生じることを現場は強く認識すべきです。
逆に工程管理がしっかりしている工場は信頼され、長期取引や単価交渉でも優位に立てます。
バイヤーは“根拠ある記録管理”を評価する
「なぜ不良が出たのか」を明確に提出できる生産管理記録、トレーサビリティ文書はOEMサプライヤーが差別化できる最強の武器です。
「乾燥温度の実績」「プリント後テスト結果」「工程異常時の情報共有体制」などを見える化しておくことが、選ばれるサプライヤーへの近道となります。
今後の業界動向:省エネ・工程自動化と人材教育の両輪へ
省エネ・脱炭素化への対応
乾燥工程は大量のエネルギーを消費し、CO2排出源でもあります。
ガス式から電気式、赤外線式やヒートポンプ式など環境負荷の少ない乾燥機への刷新、熱回収・再利用などの省エネ対策は、今後の評価基準となります。
省エネルギーを追求することは、単なるコスト削減のみならず、SDGs/ESG投資の面でも不可欠です。
IoT活用と工程自動化
工場のIoT化が進み、クラウド上で温度・湿度・稼働データをリアルタイム監視・分析するシステムの導入が加速しています。
AI推論による品質異常の早期発見、無人化乾燥ラインの構築により、属人化の打破と効率化が両立できる時代が来ています。
アナログ×デジタル=現場力の再定義
急速なデジタル化に対して、“人の勘と経験”を上手に残すことが大切です。
現場のベテラン人材の経験則をマニュアルや教育動画、そのままAIへのナレッジデータとして残す取り組みも始まっています。
「人が育つ現場」と「データの力」を補完し合う姿勢が、メーカーの持続的競争力につながります。
まとめ:製造業現場の新しい地平線を切り拓くために
OEMトレーナーのプリント耐久性を左右する乾燥工程管理は、単なる生産現場の仕事にとどまりません。
温度・時間・湿度の科学的管理、記録に基づくトレーサビリティ、設備の進化と人材教育の融合、そして省エネ型ものづくりへ。
こうした現場からの“実践的な改善活動”が、OEMメーカーの未来、ひいては日本の製造業の新しい可能性を切り拓いていく道になります。
昭和的な勘と経験を活かしつつ、データと現代技術を融合させて――。
皆さんの現場が、これからも“選ばれるOEM”へと成長されることを心から願っています。
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