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投稿日:2025年7月3日

塗膜付着性を高める乾燥応力管理と剥離防止技術

はじめに:製造業と塗膜付着性の重要性

製造業の現場では、製品の表面処理として塗装工程が欠かせません。
特に自動車部品や家電、建材など、長期間にわたり美しさと機能を維持するためには、塗膜の付着性が極めて重要です。
しかし、目に見えない微細な要因、例えば乾燥中に生じる応力が、塗膜剥離などの不良を引き起こします。
多くの現場では「なぜこの塗膜が剥がれるのか」と分析を繰り返しながら、根本的な対策に悩んできました。

この記事では、乾燥応力管理を中心に、剥離防止の具体的な技術と最新動向、そして、アナログな現場だからこそ活かせる知恵について解説します。
バイヤー目線でのリスク管理や、サプライヤーとしての提案力強化にも役立つ内容です。

塗膜付着性に影響を及ぼす乾燥応力とは何か

乾燥応力の正体を理解する

塗膜の付着性を阻害する最大の要因の一つが、塗装工程中の“乾燥応力”です。
塗料が塗布され、溶剤(もしくは水分)が揮発して乾燥収縮する過程で、塗膜内部には微細な歪みが発生します。
これが「乾燥応力」です。
この応力は、基材との間に微小な領域で局所的な剥離力を与え、結果として塗膜の浮きや剥がれ、ひび割れなどにつながります。

現場では、しばしば「乾燥が不十分」「急速乾燥をした」「塗膜が厚すぎる」といった指摘で不良が起きがちですが、その裏には“応力バランス”の乱れという根本課題が潜んでいるケースが多いのです。

現場で発生する“見逃しやすい”乾燥応力の原因

– 塗装厚みのムラ(オペレーターの技量差、機械設定ミス)
– 乾燥炉の温度分布(加熱ムラ、ダクトの劣化、レイアウト変更による影響)
– 塗料自体の組成問題(可塑剤や樹脂バランス不足、新材料導入時のノウハウ不足)
– 素地前処理不足(脱脂・清掃不足、表面粗さ不適正)

昭和から続く製造現場では、暗黙知に頼った“勘”や“経験”だけで済ましていることも多く、「目に見えない応力」を数値管理できていないケースが散見されます。

塗膜付着性検証と乾燥応力の数値管理

付着性評価の基礎:引っ張り試験とクロスカット試験

塗膜付着性は、一般的にJIS規格に基づくクロスカット試験や引張試験、剥離試験によって定量的に評価されます。
しかし、これらの評価は最終的な「結果」でしかありません。
実際の現場では、「どこの工程で応力が発生しやすいか」「なぜ乾燥工程で剥離に差がでるのか」を分析しなければ、根本的な改善にはつながりません。

乾燥応力の“見える化”技術の進展

2020年代以降、応力ひずみセンサーや赤外線サーモグラフィー、高分解能カメラを使った“乾燥挙動の可視化”が進んでいます。
最新のトレンドとしては、AI活用による画像解析で乾燥斑点や薄膜剥離傾向のリアルタイム検知も可能になりつつあります。
ベテラン作業員の“勘”をIoTセンサーデータと融合させて、過去の“名人技”を再現する動きが進んでいます。

実践!乾燥応力をコントロールする技術とポイント

基本は「段階乾燥」と「温湿度管理」

乾燥応力を低減し、塗膜剥離を防ぐには、以下が重要です。

1. 「急激な温度上昇を避ける」段階乾燥
 - 溶剤系塗料の場合、最初は40℃前後のプリヒート(仮乾燥)→本乾燥(60℃~80℃)→徐冷の工程を推奨します。
 - 炉のレイアウト設計や風量バランスの適正化も重要です。

2. 「湿度コントロール」
 - 水系塗料では室内湿度(50%~70%)を安定させておくことで、塗膜内部の水分蒸発速度が均一化し、内部応力の偏りを減らせます。

3. 「塗膜厚さの均一化」
 - ロボット塗装機の事前キャリブレーションや、ディップ法の場合はバイオレットランプによる即時厚み測定を導入します。

4. 「工程ごとの記録とトレーサビリティ」
 - IoTを活用した乾燥炉内温度・湿度ロギング、作業者ごとの記録を残すことで、もし剥離が起きた場合の原因追及が迅速化します。

“うちの現場にはまだ無理”を乗り越えるヒント

「アナログな工場では難しい」…そう考える責任者や現場作業者は少なくありませんが、最初の一歩は“記録を残すこと”です。
昭和時代の工場でも、温度計・湿度計・ストップウォッチ・マグネットゲージといったアナログツールで「ベテランの工程管理」を可視化しはじめることが、デジタル前進のきっかけになります。
また、現場で小さな改善(“このエリアは乾燥が遅い気がする”→記録して原因分析)を積み重ねることで、設備更新の際に「地に足のついた提案」を経営層に上げられることも大きな強みです。

協力会社・サプライヤーとの本当の“付き合い方”

バイヤーや調達側としては、価格の安さだけで決めるのではなく、サプライヤーから「どういう乾燥工程設計をしているか」「どんな記録を残しているか」などをヒアリングすることが肝要です。
逆にサプライヤー側も、自社の管理データや乾燥技術のノウハウを“攻めの情報”としてパートナーに提供することで、単なる仕入れ先から「技術を通じた信頼パートナー」への昇格を狙えます。

剥離防止のための最新技術と根本的な取り組み

新しい材料技術の活用

– ナノ粒子配合による微細な下地密着層(プライマー)の開発
– 可視化インジケーター(色変化で乾燥完了判定)
– 表面改質を行うプラズマ処理設備(塗膜の密着界面を強化)

こうした最先端技術と、現場に根付く「工程管理」をうまくバランスすることが、新時代の塗膜管理者に求められています。

“人”を育てる・マニュアル再構築のすすめ

どれだけ良い設備・材料を使っても、最終的には作業員の意識とスキルがものをいいます。
昭和の現場で培われたマニュアルを取捨選択し、「なぜこの工程が必要か」「どんなトラブルが起きやすいか」を“ストーリー”で説明できるマニュアルづくりが、剥離防止には欠かせません。
デジタル未導入工場こそ、若手・技能伝承層に「肌で感じるデータの重要性」をしっかり教えることが、数年後の技術力で大きな差を生みます。

まとめ:塗膜付着性向上のための現場リーダーの覚悟

乾燥応力管理と剥離防止は、単なる技術課題ではなく、「現場の文化」を作り変えるリーダーシップが必要です。
デジタル化・可視化の波と、昭和から続く実直な改善活動が融合する今、私たち製造業人には“過去の成功体験”と“新しい挑戦”を合わせ持った発想が求められています。

「なぜこの工程をやるのか」「数字でどう管理できるのか」「どうすれば現場全体でミスを減らせるか」。
その問いを繰り返し、現場の隅々まで意識を根付かせれば、どんな古い工場・最新工場でも、安定した高品質の塗膜付着性を長く実現できるはずです。
日々の積み重ねこそ製造業の底力。乾燥応力への“細やかな気配り”が、未来の差別化を生むポイントです。

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