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エコTシャツ印刷で環境負荷を下げるための水性インク洗浄と乾燥工程改善

目次
はじめに:製造業の現場から見えるエコTシャツ印刷の潮流
近年、サステナビリティが社会全体で叫ばれる中、製造業でも環境負荷の低減が喫緊の課題となっています。
特にアパレルやプリント産業におけるTシャツ印刷は、消費者のニーズの多様化に伴い、小ロット・多品種化が加速しています。
その中で、環境への配慮と生産効率の両立が求められる場面が増えてきました。
私自身、長年シャツや衣料の印刷ラインに携わりながら「昭和的な大量生産」から「少量・高付加価値・環境配慮」へ現場が大きく舵を切る様子を見てきました。
この記事では、「エコTシャツ印刷」に焦点を当て、特に水性インク使用時の洗浄や乾燥の工程をいかに改善するかについて、現場の実情と最新動向、そして今後目指すべき方向性も踏まえてわかりやすく解説します。
エコTシャツ印刷とは何か?求められる背景と今後の展望
エコTシャツ印刷の定義と主な技術
エコTシャツ印刷とは、環境への負荷が少ない素材、インク、工程を用いたTシャツプリント手法を指します。
ここで重要なポイントは「水性インク」の採用です。
従来のプラスチゾルインク(油性樹脂系インク)は発色や耐久性に優れる一方で、揮発性有機化合物(VOC)の発生や廃液処理の環境負荷が課題でした。
一方、水性インクは有害成分や特有の臭いが少なく、作業環境の改善にも寄与します。
ESG経営とグリーン調達の文脈
グローバル大手バイヤーは、サプライチェーン全体での環境配慮を提案・要求する「グリーン調達」を推し進めています。
また、投資家や消費者も持続可能な製品や企業に高い関心を寄せています。
水性インク印刷の積極導入は、ESG評価の観点からもサプライヤーにとって大きな武器となるでしょう。
ユーザー要求から紐解く水性インク工程の現場課題
「水性インクは環境に良い」は本当か?
確かに水性インクの多くはVOCフリーで環境負荷は低減されます。
ただし、発色・堅牢度・印刷スピードで課題を持つものも多く、現場では油性との「ダブルトラック運用」、新旧混合のアンバランスな現象も散見されます。
特に、水性インクは印刷後の設備洗浄、乾燥工程で多くの水やエネルギーを必要とするため、別のリスクが潜んでいます。
現場に根付く「昭和的なやり方」からの脱却
印刷現場では「昔からやっている方法」が根強く残っています。
たとえば、版や器具の洗浄を大量の水と溶剤で一度に済ませる方法、ごく一般的な熱風乾燥装置を高温設定で使い続ける例などです。
こうしたやり方は、結果的に廃水量やエネルギーロスの主要な要因となっています。
水性インク洗浄工程の環境負荷と最新改善策
洗浄工程のリスク分析
版・道具の洗浄工程で懸念されるのは、以下の点です。
– 洗い水の多さ
– 洗浄用ケミカルの使用
– 洗い流し後の排水処理
特に中小・零細プリンターでは、処理済み廃液がそのまま公共下水に流れるリスクが高いのが現状です。
水の循環再利用システムの導入
近年、大手工場では「循環式水洗浄装置」の導入が進んでいます。
この装置は、専用フィルターなどでインク成分を取り除き、一部排水を繰り返して再利用する仕組みです。
これによって最大で使用水量を70%以上削減できた例もあります。
再利用できない汚水は分別して産業廃棄物として管理することで、法令遵守も徹底できます。
超音波洗浄・エコ洗浄液の検討
従来のゴシゴシ洗浄から、微細な泡で落とす「超音波洗浄装置」、さらには生分解性の専用エコ洗浄液(アルコール系など)の活用も進んでいます。
これらは時短・人件費削減にも繋がるため、投資対効果は高めです。
水性インク乾燥工程のエネルギーとコスト改善
乾燥工程が持つ環境負荷
水性インクは乾燥にコツがいります。
高温のトンネル乾燥機や熱風装置に大量の電力を使いがちです。
一部では設定温度が200度を超える非効率的な運用も見られます。
これがCO2排出や電気代コスト上昇の要因となります。
省エネ型乾燥機・UV乾燥の活用
近年は低温(100~140度)でも高効率乾燥できる最新式乾燥機が登場しています。
さらに、一部水性インクでは紫外線硬化(UV乾燥)対応インクの登場により、瞬間乾燥が可能です。
これにより、短時間・省スペース・消費電力30~50%削減も実現できます。
導入時のコストは決して低くはありませんが、補助金や省エネ支援策の活用で投資回収も十分可能です。
シートヒーターや外気取り入れシステム
乾燥機全体を温める従来方式から、Tシャツの下部や特定ポイントだけをピンポイント加熱する「シートヒーター」方式も開発されています。
これにより焼ムラや素材へのダメージも抑えられ、繊細な仕上がりにも貢献します。
さらに、外気温を賢く取り入れた「熱交換換気システム」の併用で、暑い時期の経費削減も進みます。
現場目線で考える「一歩先の現実的エコ対策」
設備投資が難しい小規模現場の選択肢
「こうした改善策は大手専用では?」と思う方もいるでしょう。
実際、膨大な投資や大掛かりな設備増設が容易なのは大手工場だけです。
中小・個人加工場が意識すべきは、「小さく始めてコツコツ継続する方針」です。
たとえば、
– 洗浄水の規定量管理
– 廃液計測・個別管理
– 乾燥温度と時間をこまめに見直す
– サーモグラフィーで熱分布を簡易チェックする
こうした“地味だけれど明日から始められる”工夫が、最終的に大きな効果につながります。
アナログ業界でもできるデジタル活用
昭和的な勘や経験の積み重ねも大事ですが、近年は「簡易IoT計測器」「タブレットを用いた現場データ可視化」などハードルの低いデジタルツールも増えています。
使用水量・消費電力が見える化されれば、現場スタッフのエコ意識も向上し、ムダ削減に拍車がかかります。
サプライヤー・バイヤー双方の視点で考える今後のエコ印刷
バイヤーがサプライヤーに求めること
今やバイヤーは「品質・価格」だけでなく、「環境情報の開示・認証取得」もサプライヤー選定の重要条件にしています。
洗浄・乾燥の改善実績やCO2削減データ、第三者認証(OEKO-TEX, ZDHCなど)の取得は、バイヤーへの提案力強化に直結します。
現場主体の「見える化」から始めよう
ISOや環境認証は難しそうに聞こえますが、まずは現場スタッフ同士で「今日の洗浄水は何リットル使ったか」「排水はちゃんと処理しているか」「乾燥温度は適正か」を日々共有し、ボトルネックを発見することがスタートになります。
バイヤーとのミーティングの際に、そうした“地道な現場改善の記録”が、説得力あるデータとなり、差別化材料にもなります。
まとめ:本質的なエコ化は現場の積み重ねから
エコTシャツ印刷の本質的進化には、
– 水性インクの正しい採用
– 洗浄・乾燥工程でのムダ削減
– データで現場を見える化する意識
この積み重ねが重要です。
アナログ業界ならではの“経験の知恵”と、省エネ・省資源のデジタル技術や新装置を上手く組み合わせることが、令和時代のサプライヤー競争で生き残る力となります。
現場主義の“小さな一歩”が、業界全体の流れをも変えていける――その担い手として誇りを持って、一つひとつの改善に取り組んでいきましょう。