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ドライヤーカン表面状態が紙品質に与える影響

目次
はじめに:ドライヤーカン表面と紙品質の密接な関係
紙製造現場で長年働く私が感じてきたことの一つに、「ドライヤーカン表面状態の管理こそが紙品質を左右する」という現実があります。
紙という製品の品質は、原材料や抄紙機の制御だけでなく、製造プロセスにおけるさまざまな要素が複雑に絡み合って決まります。
その中でも、ドライヤーカン表面(ドラム缶型の乾燥シリンダー)のコンディションは非常に重要であり、見過ごされがちなアナログ的要素でもあります。
この記事では、なぜドライヤーカン表面状態が紙品質に影響を与えるのか、現場の実例や時代背景を織り交ぜながら、業界の動向や実践的な管理手法も解説します。
バイヤーやサプライヤーの方、これから購買を目指す方々の視点も意識し、現場とサプライチェーン双方へのヒントとなる情報をお届けします。
ドライヤーカンの基本構造と役割
抄紙機におけるドライヤーカンの位置付け
抄紙機は、原料となるパルプを紙へと変換する大型装置で、多数のローラーやシリンダーで構成されています。
そのうち、ドライヤーカンはウェット部で形成された紙を、熱エネルギーを用いて効率よく乾燥させるための重要な機器です。
多くの製紙工場では、20基以上のドライヤーカンが直列に並んで紙を短時間で連続乾燥し、必要な水分率まで下げます。
この過程で蒸気を使った熱が紙へ均一に伝わるかどうかが、製品品質を大きく左右します。
ドライヤーカン表面の機能
ドライヤーカン表面は、紙と直に接触します。
このため、表面の滑らかさや、微細な凹凸、スクリーン(表面パターン)加工の状態が、乾燥効率や紙表面の仕上がりに直接影響を及ぼします。
また、保守管理や清掃が行き届かないと、汚れやスケール(堆積物)が付着し、熱伝導率の低下や「紙むら」「光沢不良」「しわ」など、紙品質に悪影響が生じやすくなります。
ドライヤーカン表面が紙品質へ与える5つの主な影響
1. 乾燥ムラによる厚み・強度のばらつき
ドライヤーカン表面に汚れや段差、損傷などがあると、紙との接触部分で熱が均一に伝わらず、「部分的な乾燥不足」や「過乾燥」が発生します。
その結果、厚みや密度、強度にばらつきが生じ、規格外品やクレームの原因となりやすくなります。
2. 表面光沢と平滑性への影響
表面が綺麗で均一なスクリーンパターンを保っていると、紙に高い光沢や平滑性が生まれます。
一方、表面傷やコーティング剥がれがあると、紙の見た目や触感が劣化し、高級印刷用紙や情報用紙では致命的な品質不良となることも少なくありません。
3. 紙むら・斑点といった外観不良
ドライヤーカン表面に付着した異物やサビ、パルプの地肌残りは、そのまま紙面上の斑点や筋、ムラとなって顕在化します。
とくに印刷工程で拡大されることで、顧客からの指摘や返品に繋がりやすくなります。
4. しわ・くせなど機械的変形
カン表面の平滑性が低下すると、紙の搬送時に「引っ掛かり」が生まれやすくなり、しわや変形が発生します。
これはオフセット印刷用紙やコピー用紙など多数の用途でトラブル要因となり、加工や納品後のクレーム率を高めます。
5. ランニングコストと歩留まりへの影響
表面状態が悪化していると、乾燥効率が落ちて必要以上に長い乾燥時間や高い温度が必要になります。
これにより蒸気コストやエネルギーロスが増加し、最終的に歩留まり(合格品率)も悪化します。
現場のムダやコスト増大に直結する重要な管理ポイントです。
昭和から続くアナログ現場の現状と、その限界
属人的なメンテナンス管理の問題
ドライヤーカン表面のメンテナンスは、いまだ多くの現場で「経験則」や「職人の勘」に依存しています。
たとえば、「このカンは調子が悪いからもう少し磨こう」「湿った雑巾で拭けば大丈夫だろう」といった口頭の指示や現場対応に頼っている工場も少なくありません。
しかし属人化した保守体制では、転勤や退職によりノウハウが継承されにくく、設備トラブルの初期発見や、計画的な予防保全も困難です。
設備老朽化と人手不足のダブルパンチ
古い抄紙機を使用している地方工場では、ドライヤーカン自体が数十年前から交換されておらず、表面サビや肉厚減少などが顕著です。
また、熟練作業員の高齢化や若手人材の不足から、メンテナンス技術の伝承や仕組み化が大きな課題となっています。
品質意識のバラツキとバイヤーの不信感
ベテラン作業者の中には「多少のむらや筋は仕方ない」「納品先が気にしなければ問題ない」という意識がまだ根強く存在します。
しかし、取引先(バイヤー)は品質に対して年々厳しくなっており、些細な不良でもサプライヤー選定や価格交渉に影響が出る時代になりました。
最新動向:アナログからデジタル管理へのシフト
AI・IoTによる表面状態の可視化
現在、多くの大手製紙メーカーでは、AIカメラや赤外線センサー、サーモグラフィーを利用したドライヤーカン表面の連続監視システムを導入し始めています。
これにより、目視では判断できない微細な損傷や熱ムラもリアルタイムで検出可能となり、異常発生時には自動的にアラームが上がる仕組みです。
従来の職人任せから、標準化・仕組み化への大転換期を迎えています。
ドライヤーカン表面のコーティング技術革新
近年は耐摩耗性・耐錆性に優れた特殊コーティングやナノ層被膜を応用した高機能ドライヤーカンも登場し、メンテナンス周期を大幅に延長できるようになりました。
初期投資は高めですが、トータルコスト削減と安定稼働につながる選択肢として大手バイヤーの間で注目されています。
外部専門業者によるトータルメンテナンスの活用
メーカー内技術者だけでは補いきれない場合、ドライヤーカン専門の外部メンテナンス会社を活用し、定期点検や各種測定、オーバーホール作業をアウトソースする動きも加速しています。
こうした専門会社の利用は、「品質保証」「リスク管理」「ベストプラクティス導入」が目的で、バイヤーとの信頼関係を高める観点からも有効です。
現場で今すぐできる!ドライヤーカン表面管理の実践ポイント
日常清掃・点検の標準化
表面清掃チェックリストを作成し、「いつ」「誰が」「どこを」「どんな道具で」清掃したかを明記する標準書を整備することが肝要です。
日々の汚れ取り、スケールやオイルの付着確認、不具合の予兆把握を形式知化するだけでもトラブル未然防止につながります。
定量測定で客観的に管理
表面温度・粗さ・光沢などの指標を、定期的かつ同一手法で測定し、数値で管理します。
「良否判定基準」の明確化や、異常発見時の即時対応フローの整備も、昭和的な勘と経験から脱却するために不可欠です。
異常個所の早期報告・迅速対策
些細な異変でも管理職や保全担当へ早期報告する仕組みを徹底します。
また、臨時補修(応急パテ処理や部分研磨)と、抜本的な修理や更新(カンの一部交換や再コーティング)の境界を明確にしておくことが、現場と経営双方の納得感を高めます。
他社事例・失敗談の積極共有
業界団体の巡回見学や他社工場との情報交換を通して、ドライヤーカン表面管理に関するベストプラクティスや失敗事例を現場全体にフィードバックすることも重要です。
「自分の工場だけの問題」と矮小化せず、横の連携で知識を高めあう姿勢が強い現場を作ります。
バイヤー・サプライヤー目線での管理強化と成果
バイヤーが重視する評価項目とは
バイヤー目線では、「紙表面の均一性・平滑性」、「安定供給能力(ランニングコスト低減、安定生産)」、「クレーム未然防止のための予防保全体制」の3点が最重要評価項目です。
ドライヤーカン表面の適切な管理は、これらすべてに直結するため、サプライヤー側の現場管理体制そのものが、単なるコストではなく強い競争優位性となります。
サプライヤー差別化のポイント
積極的に「ドライヤーカン表面管理に注力している」点を開示し、現場での取り組みや導入設備、具体的なデータをバイヤーへ提示することは、信頼度向上や受注拡大の武器となります。
クレーム発生時にも「予防措置」「再発防止策」をすぐ報告できる体制は、ビジネスの継続条件になるでしょう。
持続的改善による全体最適化の重要性
現場だけでなく、購買(バイヤー)・仕入れ(サプライヤー)・品質保証・設備保全部門が分断せず、「紙品質」という共通目標で連携することが、結果として企業価値の向上と市場信頼度向上につながります。
まとめ:これからの紙品質はドライヤーカン表面管理から始まる
ドライヤーカン表面状態の管理は、見過ごしてはいけない紙づくりの根幹要素です。
アナログ的な現場でも、ちょっとした気付きや工程標準化、最新技術の活用で劇的に品質・歩留まり・コストが改善されます。
バイヤーは安定調達・高品位保証の視点で、サプライヤーはノウハウ構築と差別化で、そして現場作業者は当事者意識で。
紙品質の原点は、今も昔も「見えないところをどう管理するか」にかかっています。
より高い次元の紙づくり、工場経営、持続的な業界発展のために、今日も現場で汗を流す皆さんの挑戦に、私も力を尽くしたいと思います。
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