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品質表と設計FMEAを活かす効果的デザインレビュー運営術

目次
はじめに~製造業現場におけるデザインレビューの重要性~
デザインレビュー(DR)は、製造業において新製品開発や既存品の改良プロセスで欠かすことのできない工程です。
その目的は、製品設計段階での不具合やリスクを未然に摘出・防止し、高品質な製品をスムーズに市場へ送り出すことにあります。
近年、グローバル化やサプライチェーンの複雑化により、DRの実施内容や運営方法は多様化しています。
一方で、昭和時代からの「形式的なやり取り」や「書類主義」がいまだに根強く残っている会社も少なくありません。
今回は、実践現場の肌感覚を交え「品質表」と「設計FMEA」を活用した効果的なデザインレビュー運営術を詳しく解説します。
メーカー勤務20年以上の経験から導き出した、現場で本当に使えるノウハウをお伝えします。
品質表と設計FMEAの基礎知識
品質表とは何か?
品質表とは、製品やユニットごとに「どの機能・性能を、どの工程・流れで、どのような管理指標で守るか」を体系的にまとめた表です。
設計部門と品質保証部門、そして現場部門の共通言語となるため、意思疎通と情報共有の基盤となります。
主要項目は以下の通りです。
・要求事項(顧客仕様、法規制など)
・設計仕様、材料、寸法、公差
・検査項目と判定基準
・管理方法(例:全数検査、抜取検査、プロセス管理指標)
設計FMEAとは何か?
設計FMEA(Failure Mode and Effects Analysis)とは、設計段階で発生しうる故障モードや製品不具合を洗い出し、その影響・発生頻度・検出性を評価してリスクを定量化、多重防止策を設計に盛り込むための手法です。
・リスクの数値化(RPN:リスク優先数)
・設計起因の不良・市場不具合の低減
・ロバスト設計へのフィードバック
業界の成熟度が高い欧米系列や国内大手では、設計FMEAの運用が顧客要求事項に明記されています。
品質表と設計FMEAを活かすデザインレビューの運営ポイント
1. 事前準備は「現場の声」から始める
DRの本質は「現場発」でなければ意味がありません。
品質表・設計FMEAの準備段階で営業・調達・生産・品質保証など部門横断型で「使える・守れる・作れる」を吟味します。
具体的には、過去の市場クレーム、部品調達難、冶具の使い勝手、生産負荷など“本音”や“実態”に踏み込んで整理することが重要です。
単なる設計者による机上のリスク抽出だけでなく、現場実行担当者や調達担当者の気付きや問題意識を反映した一覧表を作成しましょう。
2. デザインレビュー会議体の構築
DRは「設計の品質」を経営の責任で保証するための公式会議です。
昔からの悪しき慣習に流され、「形だけ」の承認会議になっていませんか?
ここで大切なのは、参加メンバーに“サプライチェーン全体”のキープレーヤーを加えることです。
例えば以下のような視点が重要です。
・バイヤー…仕様変更に伴うコスト増リスク、調達リードタイムの妥当性
・現場オペレーター…実際の工程改善や省力化実現性
・品質保証…今後のクレーム傾向の把握
・情報システム担当…図面データや情報連携の課題化
筆者の経験では、単一部署だけでDRを進めると「根本的なリスク」や「形骸化した基準」が温存され続けるケースがほとんどです。
3. 品質表を「単なる記入作業」にしない
品質表がExcelや手書きで管理されている現場も多く、情報が分断・属人化しがちです。
ここで重要なのが、「現場目線で絞り込んだ管理項目に集中する」ことです。
形式的に全ての仕様や寸法を並列評価しても、肝心なリスクが埋もれてしまいます。
ロット全数管理が困難な項目、過去の異物混入や寸法不良などの“トラウマ案件”は、ピックアップして重点管理対象とします。
また、AI・IoTの進展によって検査工程や不良予測も可視化が進んでいます。
時代遅れの帳票文化から一歩抜け出し、「リアルタイムで使える品質表」を目指しましょう。
4. 設計FMEAの「運用定着」が価値を決める
FMEAは「作成すること自体」が目的化されがちですが、本来は「PDCAサイクル」で繰り返し見直すものです。
DRの場では、直近の市場不具合・工程変動・仕様変更などを踏まえ、FMEAのリスク評価を柔軟にアップデートしましょう。
最近のトレンドでは、AI解析やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用し、FMEAの自動化・定量化も進みつつあります。
「実績からフィードバック」「未然防止へのシナリオ分岐」などを追求すると、FMEAは本当の意味で現場の武器になります。
調達購買・バイヤーから見たデザインレビューの着眼点
バイヤーのリスクマネジメント視点
広い目でみれば、設計方針や製品仕様が仕入先選定、ロット調達、コスト条件などに直結します。
調達バイヤーがDRの場でチェックすべきポイントは、
・主要部材や副資材の入手難易度
・サプライヤー再編や海外調達リスク
・標準品流用の可否
・部品共通化メリット(調達一元化、在庫削減)
などです。
設計者と調達が同席し「もしも」のシナリオを共有することで、安定したものづくりが実現します。
サプライヤーの視点:バイヤーとの距離を埋める
サプライヤー側から見ると、「設計者やバイヤーが何を重視しているのか?」を知ることは商機を大きく左右します。
納期遵守や価格面だけでなく、
・新材料の提案力
・工程省力化、品質向上に寄与するアイデア
・QCDS(品質・コスト・納期・サービス)全体最適への提案
といった「バイヤーに刺さるポイント」を、DR資料の中に戦略的に盛り込むことが非常に有効です。
アナログ現場を変革する、これからのデザインレビュー像
ペーパーレス化・クラウド活用による情報共有
ここ数年、多くの製造業現場で帳票・紙ベースの会議運営から脱皮する動きが加速しています。
クラウド型の設計情報共有システムや、議事録・DR資料のリアルタイム更新など、一人一人がその場で参加・修正できる環境が整備されつつあります。
情報ロスや会議短縮、過去案件データの資産化など多くのメリットが期待できます。
ラテラルシンキング:他業種からの学びを導入する
製造業のデザインレビューは、もともと「品質保証」のお家芸として自前主義的に走りやすい傾向がありました。
しかし今後は、自動車業界のV字開発や、IT業界のアジャイル開発など「異業種のしくみ」を積極的に取り入れることで競争力が大きく変化します。
例えば、短期間でPDCAをカジュアルに回す「デザインスプリント」や、オンライン・オフライン混在の「ハイブリッド型会議運営」なども製造業の現場にフィットする可能性が高いです。
まとめ〜実践現場だからわかる、今やるべき改革ポイント
品質表・設計FMEAを活用したデザインレビューは、「単なる承認会議」から「品質経営の司令塔」へ進化する必要があります。
改めて要点を整理します。
・品質表と設計FMEAは「現場のリアルな課題」反映が第一
・会議体は部門横断、バイヤーやサプライヤーも主役級に
・DRをペーパーレス・クラウド型運用で”今”の情報に
・FMEAは作成より「運用と定期アップデート」が効果のカギ
・他業種の知恵も積極的に持ち込み、ラテラルシンキングで革新を
これらの実践で、昭和アナログからの進化を遂げ、真の価値を持つ製造業のデザインレビュー運営が実現できます。
製造業の全員が「現場目線での改善活動」に参加し続けることで、日本のものづくりはさらに世界に誇れる未来へ向かうことができるはずです。
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