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タイ市場向けジャパニーズスイーツ調達における効率的なアプローチ

目次
はじめに:タイ市場におけるジャパニーズスイーツの可能性
タイは経済成長著しい東南アジアの中核国の一つであり、富裕層・中間層の拡大に伴う消費市場の拡大が続いています。
なかでも日本のスイーツは高い品質や独自性が評価され、富裕層や若年層を中心に人気が高まっています。
製造業出身の私から見ると、日系菓子メーカーやスイーツ専門のOEM・ODM企業などがタイ現地で活発に事業展開しているのは必然とも言えます。
しかし「ジャパニーズスイーツ」をタイ市場で定着させるには、調達・購買や生産管理、現地ニーズの迅速なキャッチアップという観点で、他分野とは異なる注意点や改善ポイントが存在します。
この記事では、長年の調達購買と現場マネジメント、そしてアナログ文化が根強く残る日本の製造業視点から「タイ市場向けジャパニーズスイーツ調達における効率的なアプローチ」を徹底解説します。
昭和のやり方から一歩踏み出し、グローバルサプライチェーンの現場でまだ根付かない“本質的な視点”をもとに、実践的ノウハウを共有します。
タイ市場の消費動向とジャパニーズスイーツへの関心
富裕層と若年層に広がる「日本品質」への信頼
タイにおける日本食品やスイーツの需要は、単なる流行を超えた定着傾向にあります。
富裕層を中心に「クリーンで安心」「見た目が美しい」「ヤワラカイ(柔らかい)」「ユニーク」といった日本ブランドならではのベネフィットへの理解が進んでいます。
また都市部の若年層はSNSで日本のカフェ文化やスイーツをこまめにチェックし、トレンドを取り入れる意識が高いです。
この動きは小規模カフェや個人オーナー店にも派生し、現地アレンジされた日本スイーツも急増しています。
消費者の購買判断基準の変化
価格重視の時代から、「見た目の楽しさ」「インスタ映え」「新しさ」「ヘルシー志向」へ消費者の価値観が変化しています。
さらに輸入スイーツやチョコレート、ベーカリー業界でも同様の現象が見られています。
このため、ジャパニーズスイーツ調達においても「価格競争」「大量供給」だけでは通用しない局面が必然的に増加しています。
消費者の“選ばれる”要素を理解した商品開発と付加価値のある調達体制づくりが肝と言えます。
タイ市場で直面する調達・購買の課題
物流・温度管理の壁
日本国内のスイーツ生産現場と比べ、タイへの輸送・流通段階では「高温多湿」「流通リードタイムの長さ」「温度逸脱による品質劣化」のリスクが大きいです。
商品によっては賞味期限の短縮や輸送管理コストが大幅に増加します。
工場とサプライヤーの“阿吽の呼吸”で成り立つ日本の現場とは根本的なロジックが異なります。
現地サプライヤーとの信頼構築の難しさ
タイではサプライヤーごとに文化や品質管理手法が異なるケースが多く、契約時の“言った/言わない”でトラブルが起きやすいです。
サプライヤー選定基準やチェック体制を明確にしないと、日本の商習慣を持ち込むだけでは通用しません。
また、現地工場での品質管理レベルのバラツキ(ISOやHACCP取得に差があるなど)も留意点です。
コスト管理と価格転嫁のジレンマ
タイは人件費や原材料費の変動が大きいため、短期間で原価構造が変わることも珍しくありません。
日本式の「長期固定契約」モデルはリスクが高く、サプライヤー側からも再交渉が多いです。
価格を上げるのも下げるのも“交渉力”と“代替策提案力”にかかっています。
効率的なジャパニーズスイーツ調達のアプローチ
ラテラルシンキングによるサプライチェーン設計
従来の調達・購買活動では「サプライヤー1社=依存型」のモデルが主流でしたが、タイ市場では発想の転換が必要です。
複数のサプライヤーを用途ごと/工程ごとに使い分ける“マルチソーシング”の導入、そのための情報共有基盤構築が第一歩です。
さらに、タイのローカルサプライヤーとのコラボレーションによる“現地主導生産”も有効です。
日本からすべての資材・半製品を持ち込むよりも、現地で調達可能な素材を見極め、品質基準のみ「日本式」に合わせて教育する方がコスト競争面・量産安定性ともに有利です。
購買スキルと交渉力の再定義
日本式の「丁寧な相見積り」や「複数サプライヤーとの契約比較」も重要ですが、タイでは時に「前払いが必要」「契約書よりも現地慣習が絶対」といったイレギュラーが生まれます。
現場を何度も歩き、サプライヤーと信頼関係の階段を一歩ずつ上がる“フィールド型交渉力”が、日本以上に評価されるのです。
バイヤーを目指す方は「現場観察力」「現地語(タイ語)の基本的なコミュニケーション力」、そして工場の技術スタッフと同じレベルで製造現場を会話できる“現場対応力”を身につけましょう。
デジタル活用による購買効率化
誤解されがちですが、アナログな現場こそデジタルの力を使うべきです。
各種調達履歴や品質クレーム、納期遅延の情報をエクセルよりもクラウド型ツールで一元管理し、サプライヤーごとのKPIや進捗を見える化しましょう。
タイではLINEやWhatsAppが商談インフラになっているため、突然の変更にもスピーディーに反応できる工夫が必要となります。
ジャパニーズスイーツの品質管理と現地対応の極意
日本基準とタイ基準の橋渡し
日本の厳格なFSSC22000やISO22000、HACCP管理のレベルをそのまま現地に持ち込むと、現場の反発や運用コストの増大を招きます。
現実的には「1~2割下げて始めて段階的に引き上げる」ステップ式で運用する方が効果的です。
またサンプル調査や突発監査よりも、現地スタッフ主導の“自主管理体制づくり”が長期定着に繋がります。
トレーサビリティ管理のコツ
原材料や半製品、完成品のロット管理を徹底することは必須です。
タイはアナログ管理が残る業界なので、最初にロット記録記入のルールを繰り返し教育し、現場担当者と一緒に記録ノートを作るくらいの気合いが求められます。
また、クレーム時は「すぐに現場確認」「関連ロット抽出」「原因仮説の早期提出」が信頼獲得の近道です。
現地版5S・カイゼンの進め方
形式的な5Sやカイゼン研修では浸透しません。
風通しの良い現場リーダーを“社内伝道師”に任命し、小さな成功体験(例:冷蔵ショーケース内の「整列・定量・廃棄管理」)を着実に積み上げるサイクルが大切です。
この際は日本人駐在員や管理職の“押しつけ”ではなく、現地スタッフとともに現場改善のアイデアを出し合う「共創」の場を設けることが重要です。
サプライヤーの立場で考えるバイヤー心理
バイヤーが重視している「3つの視点」
1つめは「コスト」。タイ現地の事情や為替変動も加味した適正価格かどうか。
2つめは「安定供給力」。納期順守や急な追加注文へのフレキシブルな対応。
3つめは「信用・トラブル対応力」。問題が起きたとき迅速かつ誠実な対応ができるか―です。
バイヤーは、取引先サプライヤーを「競争力のあるパートナー」に育てながら、常に“次善手(リスクヘッジ)”として他社との比較も行なっているのが現実です。
日本流の「品質要求」と「現地現実」の擦り合わせ
サプライヤー側は「言われた通りやります」だけでは信頼を得られません。
むしろ「ここまでは日本品質に合わせられる、ここからは現地事情として難しい」という“正直なフィードバック”を惜しまず提供することが選定ポイントとなります。
また、納品時に品質・量目等の自主チェック表や納品トレーサビリティリストを添付することで、バイヤーの安心感と信頼が格段に高まります。
まとめ:昭和的調達慣行からの脱却と、未来志向の調達戦略
タイ市場でジャパニーズスイーツを安定的かつ効率的に調達するには、「現地主導」と「日本品質」のバランス感覚が不可欠です。
昭和型の“親分・子分”商取引や、“言ったもん勝ち”的な交渉術だけでは長期的な成長は望めません。
ラテラルシンキングで新たな選択肢を模索し、地に足の着いた現地対応力とデジタルスキル、そして日本の現場で培った妥協なき品質への執着心。
これらを組み合わせて、時代に合わせた購買・調達のあり方を実践することが、ジャパニーズスイーツのタイ市場進出を成功に導くカギです。
製造業に勤める方、バイヤー志望の方、サプライヤーの皆さまのお役に立てることを願っています。
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