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社員の離職が増えDXが進まなくなる問題

目次
社員の離職が増えDXが進まなくなる問題
はじめに:製造現場の喫緊の課題
昨今、製造業に携わる現場では、社員の離職が増加し、その結果DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が停滞するという大きな課題に直面しています。
特に、昭和時代のアナログな手法が今なお根強く残る中堅・中小製造業では、DX以前の課題、すなわち「人材の定着」「暗黙知の伝承」「部門間連携の未成熟」といった問題が内在しています。
この現状を打破できなければ、製造業の成長は頭打ちを迎え、国際競争力も低下してしまうでしょう。
ここでは、現場目線で社員の離職がなぜ起きているのか、その背景や業界特有の風土、そしてDX推進への影響を詳しく考察し、実践的な解決策を探ります。
離職増加の原因はどこにあるのか?
社員の離職には複合的な要因があります。
大前提として「人が辞める職場」では、組織に対する信頼が薄れ、現場の主体性や改善意欲も希薄化しがちです。
原因の主なポイントを整理します。
1.アナログな業務文化によるストレス
多くの工場では今も紙の伝票、手書き日報、電話や口頭での伝達など、膨大なムダ作業が日常化しています。
こうした業務は特に若手社員にとって
「なぜこの非効率を放置するのか?」
「世の中はスマホやWebアプリで便利になっているのに」
という強いフラストレーションを生みます。
改善提案が通りにくい体質の職場では、いくら言っても変わらない現状に対して若手社員のモチベーションが一気に下がり、転職が現実的な選択肢となってしまうのです。
2.典型的な縦割り組織と属人化
設計、調達、製造、品質など各部門が壁をつくり、部門内の仕事だけで完結させる風潮がまだまだ強い会社が多いです。
また「〇〇さんのやり方」が全社の標準になっていて、その人が辞めてしまうと業務が回らなくなるような属人的運用も目立ちます。
何か問題が起きた際も「担当者しか分からない」「上司への忖度が優先」といった不透明さが蔓延し、現場の若手・中堅のやる気を削ぐことがよくあります。
3.工場長や管理職の旧態依然としたマネジメント
「仕事は見て盗め」
「現場に来て苦労しないと分からない」
「パソコンや新しいソフトは、そのうちできる奴がやればいい」
こうした思考は、確かに昭和の日本製造業を支えてきました。
しかし今の時代、若手社員は自身の成長やワークライフバランスを重視します。
時代錯誤なマネジメントでは、将来ビジョンが描けず離職の一因となりがちです。
4.DX推進の「掛け声倒れ」問題
「うちもDXに取り組むぞ」と経営陣が勇ましく号令をかけても、現場に具体的な目的や恩恵が伝わらないケースが多発しています。
システム導入を現場巻き込み型で進めようとせず、現場の声をまとめずにトップダウンで強制導入だけする。
その結果、余計な作業が増え、「DX=面倒・やらされ感」といった認識だけが残る場合、小さな不満の積み重ねが離職予備軍を生み出す温床となります。
DX停滞の悪循環とその危険性
社員が定着せず、ノウハウや現場の声が継承されない状態では、DXの推進力は著しく低下します。
現場が回らない、もしくは属人化から抜け出せないまま無理やりITツールを導入しても、逆効果になりがちです。
1.「デジタル化の前に人がいなくなる」という皮肉
基幹業務や生産計画をデジタル化しようと思っても、最前線で運用・改善できる人材が不足し、「形だけのDX」になってしまう会社がたくさん存在します。
これでは単なる『電子化』で、競合優位にもなりません。
2.現場の知恵(暗黙知)の消失
長年通用してきた「職人の勘や経験」「現場でしか分からない微妙な差異」などの暗黙知が、離職とともに継承できなくなります。
こうした知恵をデジタルツールに反映させる前に人が辞めてしまえば、人とシステムの断絶が一層進み、現場力が著しく低下します。
3.プロジェクトリーダー不在による迷走
DXを推進すべき若手・中堅社員が離職予備軍となると、プロジェクトを牽引する人材が足りず、推進チームの結束も弱体化します。
ある会社では、「青田買い」で配属された新入社員がわずか1年で退職してしまったことで、DXプロジェクトそのものが頓挫した事例もあります。
現場目線で考える離職防止とDX成功の両輪戦略
では、どうすれば現場の人材が定着し、かつDX推進のエンジンとして機能してくれるのでしょうか。
管理職や現場リーダーとして実践してきた知見から、今こそ必要な「両輪戦略」を紹介します。
1.現場の見える化・コミュニケーション強化
DXの「D」=デジタル以前に、まずは現場のムダや困りごとをあぶり出し「見える化」するのが大前提です。
リーン生産方式や5S活動を土台に、社員が自由に提案できる場を設け、そこで課題抽出と改善アイデアを共有します。
経営層~中間管理職が「現場の声を本気で吸い上げる態度」を示すことが、何より重要です。
それによって社員の自発性が増し、小さな変化を自ら愉しむマインドが芽生えていきます。
2.知識と技術の標準化・ドキュメント化の徹底
一人の「達人」や「ベテラン」に依存した働き方から脱却するためには
・作業手順や品質基準を分かりやすく見える化(ワークインストラクションの整備)
・動画や写真で現場作業をマニュアル化
・トラブル時のチェックリストや履歴のデジタル管理
などが極めて有効です。
「自分にしか分からない」を「誰でも即戦力」に変える取組みが、結果的に若手の離職率低減につながります。
3.DXは小さく始め、大きく育てる
一気に大規模なシステム導入を目指すよりも、現場で評価の高い業務・プロセスから小さなDXをスタートしましょう。
例えば、調達部門の日常的な見積依頼や発注作業をExcelベースからオンラインツールに切り替える。
これだけでも現場の「働きやすさ」「効率化」「生産性向上」は実感できます。
現場の“ちょっとした困り事”を解決するところからデジタル化を始め、成功体験を蓄積しながら範囲を拡大していくことがDX定着の秘訣です。
4.DX推進リーダーのキャリア形成支援
若手後継者やプロジェクトリーダーが「この工場で成長できる」「ここにいれば自身のキャリアにプラスになる」という未来設計図を描けることが、長期定着の大きな要因となります。
具体的には、
・各領域のプロジェクトリーダーへの積極登用とインセンティブ付与
・DX推進の実務スキルや外部資格の取得支援
・失敗しても再挑戦できる心理的安全性のある職場づくり
など、人的投資を惜しまない風土醸成が不可欠です。
アナログ業界だからこそ“現場ドリブン”が命綱
最後に、昭和的なアナログ時代の文化が色濃く残る製造業こそ、現場主導での改善活動と人づくりがDX時代の成否を分けます。
派手なキーワードやITベンダー任せのシステム導入では、現場社員の離職を止めることはできません。
むしろ「現場で考え、現場で動かし、現場で育てる」ことこそが、これからの現場力強化とDX定着につながる最短ルートです。
まとめ
社員の離職が増えDXが進まなくなる問題は、決して一朝一夕の施策で解決できるものではありません。
大切なのは、現場力や人材育成、透明性の高いコミュニケーションといった「地に足の着いたマネジメント」が原点です。
管理職や現場リーダーが自ら既成概念に囚われず、「ラテラルシンキング=新たな視点」で現場課題を紐解き、社員一人ひとりの想いを尊重した改革を進めていくことが、結果的にDX推進と人材定着の両立につながります。
現場の声を聴き、共に明日の製造業をつくるために、今こそ一歩ずつ現実的な改革を始めてみてはいかがでしょうか。