俺様上司の矛盾を突きながら裏で楽しむ社員たちの実態

序章：俺様上司はなぜ生まれるのか

現場の製造業に20年以上身を置いていると、必ずと言っていいほど「俺様上司」に出会います。
このタイプのリーダーは、「昔からこれでやってきた」「現場のことはすべて俺が一番分かっている」と豪語し、自分のやり方を押し通します。
特に、昭和時代から抜けきれないアナログな企業風土では、こうした俺様上司の存在感が色濃く残っています。

なぜこうした上司が誕生し、今なお彼らの矛盾と対峙しなければならないのでしょうか。
背景には、長期的な年功序列や、「現場を支配することが責任」といった過去の価値観が影響しています。
しかし、時代は変わりつつあり、現場社員たちは変化を恐れない世代に移りつつあります。

俺様上司の典型的な矛盾

俺様上司には幾つかの“矛盾”が共通して見られます。

1. 現場の安全・品質には最大限気を使うが、自分の指示には従わせる

安全の重要性を毎日唱えるのに、現場社員が「このやり方は危険」と声を上げても、「俺がやれと言ったから大丈夫だ」と譲らない。
安全会議の議事録と現場の実行内容に乖離が生じることもしばしばです。

2. IT推進と属人化の両立を図りたがる

「ペーパーレス」「自動化」「IoTの導入」と叫びながら、実際には自分のやり方や判断材料は紙のメモや長年の勘頼り。
新システム導入時には「昔のやり方なら問題ない」と抵抗し、現場混乱の火種となることも。

3. 部下の育成を口にするが、決裁権は一切降ろさない

業務改善や業績アップのため「若手を育てろ」と指示を出しますが、いざ具体的判断が必要になると「これは俺がやる」と権限を手放さない。
“育成”が掛け声倒れになり、次世代登用が進まない組織も多いのが現実です。

矛盾への対処法：現場社員たちの裏の楽しみ方

このような俺様上司に対し、現場の社員たちはどのように対応しているのでしょうか。
ただ屈しているわけではありません。
現場には、独自の“楽しみ方”と“処世術”が存在します。

1. 裏コミュニケーションの発展

社員同士のクローズドなLINEグループやSlackの非公式チャンネルでは、上司の矛盾言動がユーモアを交えながら共有されます。
「また課長の伝家の宝刀『俺の若い頃は～』が出た！」と実況中継されることもあり、ストレス発散や連帯感の強化につながっています。

2. “言われたことだけやる”の高度化

矛盾した指示や理不尽な命令に対して、社員は完全なる受動モードを取ることがあります。
「上司の指示通り」実行し、仮に問題が発生しても「現場判断ではなく、課長の命令」という記録を残す。
これは組織に波風を立てず、自己防衛を図る意味合いも強いです。

3. 裏で小さな改善活動を回す

公式には「上司の指示通り」を守りつつ、現場の本音を知るメンバー同士で小さな改善活動を回し続けます。
例えば、非公式なマニュアルや手順書を現場ホワイトボードに貼り出し、「いつでも元に戻せる」運用とすることで、合理化や安全性を現場起点で守り続けています。

製造業の変革期に必要なマインドチェンジ

今、製造業の大きな課題は、アナログ文化に根付いた上下関係や矛盾をいかに解消し、真のデジタル・DX化を実現するかです。

現場力と現場知を活かす発想

現場社員の声は、実は非常に理論的かつ本質的な意見に溢れています。
「なぜこのやり方でなければならないのか」「他社のベストプラクティスを取り入れてみよう」など、自ら学び自ら変化を試みる風土が根付きつつあります。

ポイントは、単なる上意下達ではなく、現場からのボトムアップ型で議論する環境を整えることです。
特に若手や中堅社員の「小さな異議申し立て」を、上位者が面白がる・真剣に取り上げる姿勢が重要です。

サプライチェーンの新潮流とバイヤーの視点

調達・購買分野では、これまでの「言われたまま仕入れる」から、サステナビリティ・環境配慮・グローバルコスト意識といった“新しい観点”が求められています。
バイヤー自身も「俺様的調達」から、「共創型調達センス」へと進化しなければ信用を失います。

一方、サプライヤーの側も、ただ従うだけの納入姿勢から、バイヤーの本音や社内事情を先読みし、自発的に提案・改善案を持ち込むパートナーシップが重視され始めています。

未来を拓くために：現場社員ができること

昭和の俺様上司を一朝一夕で変えることは難しいですが、現場社員が自発的に“新しい働き方”を楽しめる工夫は可能です。

1. ユーモアと挑戦心を持つ

矛盾を「愚痴」や「無駄な抵抗」ではなく、ちょっとした笑い話や勉強材料として消化する意識に切り替えてみましょう。
新しい仕組みや提案を、仲間内で「ダメ元チャレンジ」する姿勢は、現場に小さな勇気と活力を与えます。

2. 社外情報・デジタル技術を“現場ナレッジ”に昇華する

現場社員がIoTやAI技術を学び、現場改善に活かす動きも広がりつつあります。
実体験に裏打ちされたデジタル活用は、俺様上司にも「これなら俺にも分かる」と納得されやすい効果的なアプローチです。

3. 自分自身の将来像を具体的に描く

目先の上司や現場環境ではなく、「5年後、10年後、どんな働き方をしたいか」「どんなバイヤー・マネージャーになりたいか」を明確に持ちましょう。
“自分なりの楽しみ”を仕事に織り交ぜることで、組織しがらみの呪縛も少しずつ解けていきます。

まとめ：俺様上司の矛盾と上手に付き合い、現場主導の未来へ

昭和時代から続くアナログ的な“俺様上司”の矛盾は、令和の今も製造業現場に根強く残っています。
しかし、矛盾に対して不平不満で立ち止まるのではなく、それを笑い飛ばしつつ、したたかにしたたかに現場改善と自分自身のスキルアップの“裏の楽しみ”を大切にしましょう。

読者の皆さんが、次に出会う“俺様上司”の矛盾を観察しながら、「もっと面白い工場・現場・バイヤー像」を一緒に作り上げていくことを、現場経験者の一人として心から応援しています。