投稿日:2025年9月30日

会議で暴走する上司を陰で実況して笑う部下たち

はじめに:会議で“暴走”する上司はなぜ生まれるのか

製造業の現場では、日々の会議が業務改善や品質向上の重要な場となっています。

しかし、その会議の現場でよく見受けられる現象があります。

それは、上司が自分の考えに固執しすぎて話が脱線し、議論が暴走してしまうことです。

そんなとき、部下たちは真剣な顔をしつつ、内心では“実況中継”のように上司の言動をツッコミながら観察し、時には後で笑いものにしているケースもあるのです。

このような会議は、なぜ起こるのでしょうか。

そして、現場の活性化や合理化という観点では、どんな問題や課題が潜んでいるのでしょうか。

昭和から令和へと時代が変わっても、なかなか抜けきれないアナログ体質な製造業の会議文化を、現場目線で深く掘り下げます。

なぜ“暴走”上司は会議で生まれるのか

トップダウン文化の残存が背景に

日本の製造業、とりわけ歴史ある企業では、いまだにトップダウン体質が根強く残っています。

上司は経験年数がモノを言い、現場よりも“数値”や“方針”へのこだわりが強い傾向があります。

例えば、「自分が工場長の頃はこうだった」「今の若手は俺たちの若い頃より……」といった“昭和的自慢話”が長く続き、結局議題から逸れてしまう。

バイヤーや調達担当の打ち合わせでも、「以前のサプライヤーはここまでやってくれた」と過去の成功談や無茶振りが飛び交います。

こうした状況で、現場目線の議論や若い意見が消されていくのです。

「無意識の正解主義」と「決定事項の押し付け」

上司世代は“正解が一つ”という教育や訓練を受けてきました。

そのため、自分の結論や進め方がベストだという前提で発言しがちです。

部下の現場目線の意見が会議で出ても、「いや、それは違う」と即座に切り捨ててしまうことが多い。

また、「この方向で決まったから、あとは頼む」と投げっぱなしにすることも珍しくありません。

アナログ体質ゆえの、根拠なき“思い込みドライブ”

会議資料やデータを重視するより、“長年の勘”や“見栄”を優先してしまう「言ったもん勝ち」な雰囲気があります。

ITツールやデータ分析が普及しても、紙の帳票やホワイトボードを使いたがる。

そうした環境で、「自分のアイデアが最強」だと信じて走り出し、周囲がついていけなくなるのです。

現場の部下から見た“暴走上司”の実況中継

会議中の「心の実況」と“裏LINE”の正体

現場の若手や中堅社員は、上司の暴走を真に受けていません。

会議中には、「出た出た、その話……」「また話が昭和に戻ってる!」と心の中でツッコミを入れています。

近年では、裏でこっそりグループLINEで実況中継されていたり、Teamsのチャットで「すみません、今どこまで進みましたっけ」と“オフレコ実況”が行われています。

これが、会議後の飲み会や休憩中に「今日の●●部長、マジで航路逸脱してた」といった自虐ネタ(=エンタメ化)にも発展します。

現場の“冷めたまなざし”と納得感のなさ

上司が暴走しても、“表面上は静かに”受け流すことが多くあります。

日本的な「和」を重んじる文化も影響し、面と向かって反論せず議論が深化しません。

結果として会議の内容が実行フェーズまで降りてこず、「結局、何を決めたんだっけ?」「また同じ議題を次回やるんだよね」と現場の納得感が乏しくなるのです。

製造業独自の会議文化とその弊害

議事録は“読まれない”前提で書かれる

現場目線で言えば、多くの会議議事録は“会議の証拠”でしかありません。

精密に記録しても、現場のPDCAサイクルには活用されないことが多い。

上司の長い持論を議事録からどう“和らげて書くか”を重視し、現場の本音や課題の本質まで到達する前に議論が打ち切られてしまう。

“失敗できない”カルチャーが横行

多くの企業では「失敗=責任追及」「改善案=減点対象」という雰囲気が消えません。

思い切った現場改善よりも、“ダメ出しされない資料づくり”や“上司の顔を立てたプレゼン”に時間を使う。

サプライヤーとの会議や調達協議でも「問題を挙げると取引が縮小されるのでは?」という不安が先立ち、本音で話し合えなくなるのです。

“実況”を止めて建設的な会議へ転換するには?

ラテラルシンキングで会議を変える

これからの製造業の会議は、垂直的(トップダウン)から水平的(ラテラル)な発想へとシフトしていくべきです。

異なる部門や立場を横断したブレインストーミング、意思決定のフラット化、そして「失敗・異論も大歓迎」という雰囲気が、時代に合ったものづくりには不可欠です。

会議冒頭に「今日は上下関係を一切脇に置いてアイデア出ししよう」と宣言するだけでも、空気が変わります。

例えば、現場のバイヤーやサプライヤーに匿名で意見を書いてもらい、無記名で読み上げる「付箋方式」なども有効です。

“暴走”を共有知に変える仕組みづくり

上司がどんなに脱線しそうになっても、「立ち止まって考え直す」ルールを設けましょう。

タイムキーパー役やファシリテーターを置き、「今の話題を別紙にまとめて、議論を本筋に戻します」と笑顔で進行する工夫がポイントです。

暴走エピソードをそのまま“実況ネタ”に終わらせず、会議後の振り返りとして「ここで脱線しやすい傾向がある」「こんな意見が埋もれがち」というメタ認知を共有し、次回の改善に役立てるのです。

工場現場・調達バイヤー・サプライヤー、それぞれの立場からのヒント

現場リーダー・ライン担当者へ

上司の暴走を実況で笑う前に、さり気なく「事前に今日のゴールを共有しておく」ことが大切です。

会議中に一言、「今の話、現場にどう落とし込めますか?」と現実的な視点で問い返してみましょう。

小さな勇気が現場の進化を生みます。

バイヤーを目指す方へ

会議での“お飾り議論”や“根拠なき成功談”から一歩踏み出し、データで反論する力をつけましょう。

「なぜこれをこうするのか」「調達リスクやコストダウンのエビデンスは?」と論理的・客観的に情報収集と主張をする力が、現場もサプライヤーも納得する新時代のバイヤーの資質です。

サプライヤー側の立場から

バイヤー側の会議や議論観を知ることで、「上司の顔色」ではなく「ロジックと成果で勝負」する提案が実ります。

面前では言いにくい現場課題やリスクも、データやミニレポートにまとめて“会議資料”の形で投げると、形式重視の日本的会議でも受け入れられやすくなります。

これからの製造業は“実況”を超えた「共創」が必須

会議で暴走する上司を陰で実況して笑う状態は、まだまだ多くの製造業で続いています。

しかし、それを“裏ネタ”に留めず、現場が本当の意味で発言しやすく、課題を隠さず議論できる文化への転換が求められています。

今や、製造現場・バイヤー・サプライヤーが「モノづくり」から「コトづくり」へ進化する時代です。

上司の暴走も“恥ずかしい過去”ではなく、「気づき」の宝庫として捉え直しましょう。

社内外の壁を越えて、全員で知恵を持ち寄ることで、昭和的アナログ体質に新しい風が吹くはずです。

一歩踏み出せば、次の会議は「実況ネタ」ではなく、「全員が笑顔で前進」できる場へと変わることでしょう。

You cannot copy content of this page